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行政のムダを斬る「事業仕分け」の本番はこれからだ!

~行政刷新会議事務局長が目指す本当の改革~

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更新日 : 2010年06月22日 (火)

第5章 1m3千円でできる道路を11万円で造る理由は「そういう決まりだから」!?

加藤秀樹氏

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加藤秀樹: 先ほど事業仕分けをすることで「事業、組織、制度のセットで問題が洗い出される」と申し上げました。地方の場合は国がコントロールしているために、県や市が自主的に事業内容や実施方法を決められないものがあるのです。

例えばですが、事業仕分けで道路や建物について県庁の人と議論すると「私たちも本当はもうちょっと安くやろうと思ったらできると思うのですが」という話がよく出てきます。なぜかと聞くと、「それは国が決めたこういうルールや基準があるからです。いろいろな規定でこう造ることになっているのです。我々としては、あそこに造るならもっと簡素な工事や施設でいいと思うのですが、そうはできないのです」という話が出てくるんです。

お配りした資料は新潟県のケースですが、「道路改築費244億円、道路関係工事費116億円」で、道路工事関係費が360億円ほどあります。そのように道路法、道路局所管補助事業採択基準、道路構造令などの規定を書いています。この規定が今述べた省庁の人がいう国が決めたルールなのです。

生活道路なら、この六本木でも田舎でも、幅が5mとか、厚みがどのぐらいとか同じで、全て道路構造令や補助基準で決まっています。その通り造ろうとすると、我々が試算したところでは、1m当たり11.1万円ぐらいかかるという数字が出ました。ところがそれを長野県の栄村はいろいろ工夫して1.9万円で造ったのです。

「幅は5mも要らない。でも豪雪地帯で除雪車が通れないといけないから3.5mにしよう。厚みもちょっと減らそう」など、いろいろ工夫したら規定の約6分の1の費用でできたのです。これはかなり極端な例かもしれませんが、5割、3割安く造ることは、全国どこでもおそらく可能です。

なのになぜしないかというと、「国の決まりがある。それに従ってやっておくのが無難だ」という、ある種の当事者意識のなさが原因です。実は生活道路に国の補助が出ることは少ないのですが、仮に補助が出ても11.1万円のうちの半分、5.5万円です。だから自治体は残りの5.5万円は自腹を切らなければいけません。栄村のような過疎地でお金がない地方にとって5.5万円は大金です。だからとことん工夫して1.9万円でやったわけです。

なんと長野県の下条村は3,000円で道路を造りました。どうやったかというと、村費で出したのはセメントなどの材料費だけで、あとは村民が自分でやったのです。そうして浮いたお金を子育て支援などに振り分けました。不便なところですが随分若い人が転居してきて、子どもが増えているという珍しい地方です。そういうことをやろうと思えばできるのです。

もう1つ問題なのは、国が決めたルール通りにやれば半分補助金が出る可能性があるけれど、栄村のように努力して6分の1の1.9万円でやったら補助金は出ないことです。これで半分補助金が出れば、栄村の出費は9,500円で済むし、補助金だって9,500円で済む。補助金も6分の1になるわけです。1.9万円なら全額補助しても、本来の補助金の3分の1で済むにもかかわらず、です。

国のルールを2割減らせば地方の自由度は2割増える、地方の自由度が2割増えれば財政支出も3割4割と減っていく可能性があるのです。こうしてルールを緩め、地方の工夫の余地を拡げると同時に、地方が工夫してコストを安くすればするほど補助率を高くすればいいのです。本来11.1万円かかるものを半分以下でやるときには補助率を10割にするとか、3割減でできたら補助率を7割にするなどすれば、地方が節約するインセンティブになります。しかし現実は逆です。

事業仕分けをすると、このように事業の後ろにある制度改革への提言ができるようになります。

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加藤秀樹 (構想日本代表/行政刷新会議事務局長/東京財団会長)

加藤 秀樹(行政刷新会議 事務局長/構想日本代表/東京財団会長)
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