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行政のムダを斬る「事業仕分け」の本番はこれからだ!
~行政刷新会議事務局長が目指す本当の改革~
注目のオピニオン
更新日 : 2010年06月14日
(月)
第4章 予算削減だけじゃない!仕分けの真の目的は「行政改革」
加藤秀樹: 事業仕分けの目的は、「行政の事業を抽象論ではなく『現場』の視点で洗い直すことによって、個々の事業の無駄にとどまらず、その事業の背後にある制度や国と地方の関係など、行財政全体の改革に結びつけていくこと」です。
事業には必ず背後に組織がついています。それは行政機関そのもののときもありますし、公益法人や独立行政法人のときもあります。さらにその後ろに制度があります。これは地方も同じです。
「この制度があるから、こういう事業をやることになっている」「こういう決まりがあるから、この事業はこうしかできない」というように、セットになっているのです。事業仕分けからその全体の関係が見えてくるのです。
本当は1,000万ぐらいでできる事業に、無駄に2,000万、3,000万を使っているじゃないかと見ていくことで、組織や制度の無駄も一緒に洗い出していくことができる。ここが一番大事なのです。
事業仕分けの原則についてもお話しましょう。まず1つは、予算項目ごとに1個1個の事業から見ていくということ。2つ目は、そもそも必要かどうかを見ること。これが意外と難しいのです。知的レベルの高い人ほど「どういう基準で仕分けるのか?」と聞く傾向があります。私は「基準はない」と答えています。基準を構想日本がつくったのでは、構想日本型中央集権になってしまいます。そうではなくて、「その事業をやることがその町や県の人にとって本当に役に立っているかどうか」ということを、一住民や一公務員として、「これはやった方がいいのかな。あまり役に立っていないよな」と本当に素直に必要かどうかを謙虚に考えて、要るか要らないかを判断するのでいいと私は思っています。判断の結果がAという町とBという町で違ってもいいんです。それが自治ということです。
それから原則の3つ目は、外部の視点を入れること。行政の現場のことをよく知っている外部の人間を中心にして仕分けチームをつくらなければいけません。内部の視点だけだと、どうしても甘くなるからです。今、国でも地方でも行政評価が盛んに行われていますが、中で評価していては本当の評価はできません。
4つ目は、公開の場で議論して結論を出すことです。従来の審議会が機能しなかった理由は、有識者による抽象的な議論に終始して、現場の視点が欠けていたこと。そして、非公開の議論をあとからまとめて“報告書”にしていたからです。議論を後から情報公開するのと、議論を生でみんなが見られるようにするのとでは、全く意味が違います。
実は、霞が関の官僚が一番抵抗していたのが公開の場でやるということです。行政改革推進法に「公開の場で外部の目を入れて、行政の評価をする」という言葉を入れようとしたら霞が関の猛烈な抵抗にあい、結局十分入れられませんでした。
みんなの前でやることによって、官僚も政治家も後に引けなくなるんです。「あのとき、ああ言ったじゃないか」と言われますから。これは何より大事なポイントです。
一方で、事業仕分けは、お手盛り仕分けをやろうと思ったら簡単にできてしまいます。「外部」とは言っても御用学者のような人たちを集めて、一部だけ公開して「うちは仕分けをやりました。もう全部ピカピカです」というようなことを言う自治体の首長や市長、官僚が必ず出てきます。そうならないためにも、これらの原則は必ず守らないといけません。。
皆さんがよく目を光らせて、本物か偽物かを見分けていただくことこそが大事だと思っています。
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http://www.academyhills.com/note/opinion/10051904Budgetscreening.html
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2010年05月19日 (水)
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2010年05月27日 (木)
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2010年06月04日 (金)
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第4章 予算削減だけじゃない!仕分けの真の目的は「行政改革」
2010年06月14日 (月)
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該当講座
行政のムダを斬る「事業仕分け」の本番はこれからだ!
~行政刷新会議事務局長が目指す本当の改革~
加藤秀樹 (構想日本代表/行政刷新会議事務局長/東京財団会長)
加藤 秀樹(行政刷新会議 事務局長/構想日本代表/東京財団会長)
2009年11月に全国民の注目を集めた国の「事業仕分け」。テレビや新聞などメディアで連日大きく報道されました。しかし、実際に事業仕分けについて理解している人は少ないのではないでしょうか。
本セミナーでは、事業仕分けの第一人者である加藤氏が、仕分けの本質と意義、今回の総括と課題について解説します。また、来年度の事業仕分けからが本番だと言われる中で、その方針についても伺います。税金の使われ方について、あなたも「当事者」として考えてみませんか。
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