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更新日 : 2010年06月17日 (木)

第5章 日本人には「世界市場を制覇する!」という意志がない

黒川清氏

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黒川清: 日本には素晴らしい技術や製品がたくさんあります。しかしビジネスとして弱いところも認識し、どうするか、誰と組むのかを考えるべきです。そのような人脈を世界に広く持っていなければなりません。グローバル化は世界中を巻き込んでものすごい勢いで進んでいるので、弱いところをゆっくり克服しようとしてもスピードに追い付きません。

一番いい例が携帯電話です。毎日、世界で約300万台が売れ、23億人が携帯電話にアクセスしています。毎日売れている300万台のうち、2009年11月現在、約37%がノキアです。2番目はサムソンで約20%。3位はLG、その次がモトローラです。日本企業はというと、5位にソニーエリクソンが入っていますがシェアは減少傾向です。日本の携帯電話メーカーのシェアは全社で合わせても4%ぐらいですが、個別の機能はなかなかハイテクでいいんです。

日本の弱さは、最初から世界のマーケットをとろうと思っていないことです。世界に出るためには、さまざまな障害を乗り越える発想を持たなければなりません。リスクもあります。しかしリスクのないビジネスなどありません。製造業のエンジニアはいいが、エンジニアが必ずしもいい経営者とは限らない。つまり、強さと弱さをしっかり認識することです。年功序列が基本など、変だと思いませんか。

もう1つ例を挙げます。「味千(あじせん)」という熊本のラーメン屋は、今や世界的なブランドになっていて、海外に約400店舗、日本に約100店舗あります。これほど成長する前のこと、中国のある女性経営者が味千のラーメンを気に入り、中国で出店するライセンス契約を結びました。彼女は香港証券取引所で上場して、中国で次々と店舗を広げていったのです。

彼女は中国で約200店舗出していて、味千の海外店400店舗のうち300店舗は彼女が広げた店です。一般に日本人は、よい味をさらに深めていこうと、どんどん深く掘っていきます。それは日本のいいところですが、一般に日本人が味に凝るのは強みですが、横に広げることを忘れているのです。

アントレプレナーシップは日本語で「進取の気性」です。ビジネスだけでなく、大学でも役所でも、進取の気性に溢れている人が少なくなったようです。みんな指示待ちで、上から言われたことに対して「それは違うんじゃないか」と言える人たち、雰囲気があまりにも欠けているのではないでしょうか?

竹中平蔵: 日本の携帯技術はよく「ガラパゴス」と言われます。地上デジタルテレビも実はガラパゴスでしたが、私が総務大臣のときにブラジルに働きかけて、ブラジルで採用されました。そうしたらチリ、アルゼンチン、ベネズエラに広がったのです。でも、ブラジルに実際に出ている企業は圧倒的に韓国なんです。日本の企業はどこか腰が引けています。

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