記事・レポート
世界経済を支える東アジア経済圏の成長
上海・東京グローバル・コンファレンス
注目のオピニオン
更新日 : 2010年07月13日
(火)
第8章 提言~世界のパラダイムシフトに対応するために~
竹中平蔵: 例えばビザの話も法務省に対して経済財政諮問会議でいくら言っても、「ごもっともです」で終わりなんです。つまり、何か問題が起こったら責任をとるのが嫌だから、「安全上の問題がある」とかなんとか理由をつけて拒む。
そこをどう突破するかは一人ひとりが議論しなければいけません。日本では一般的に権力が分散されているので、非常に我慢強くやらなければなりません。誤解を招くかもしれませんが、変人と思われるぐらい一所懸命執着しないと、1つのことすら達成できないのです。
周さん、日中両国の交流という観点に加えて、世界のパラダイムシフトに対応していくために、何か具体的な提言がありますか。
周牧之: 私は日本の教育のシステムや研究施設が、中国やアジアの皆さんになぜもっと利用されないのかが気になっています。少なくとも、東京はアジアの教育のハブになれます。ただ、言葉の問題があります。それから留学生に対して、これからは「日本で活躍してもらおう」との方針で環境を整えていかないといけません。 私は、アジアの将来は留学経験者たちの手でつくり出されるのではないかと思うのです。
さらに、日本社会も以心伝心のコミュニケーションから、外国人にも通じるコミュニケーションのスタイルに変えていかないといけない。それが確立された日に、東京は本当の意味での世界の都市になるでしょう。
会場からの質問: 東京がもっと魅力的な都市でなければ、外国の方々を受け入れるのも恥ずかしいし、海外へ出て行く日本人も信用されないと思います。この点について、ご意見をいただけますか。
黒川清: 大学では学部生をどんどん海外に行かせ、海外からは学生を来させています。交換留学です。また2年前から、沖縄で15、6歳のアジアと日本の学生に1カ月合同合宿をさせています。ここで培ったネットワークこそが、ナショナルセキュリティの根幹です。
多くの大学が学部学生を「毎年200人出て行かせ、200人海外から来てもらう」となれば、街もどんどん明るく魅力的になってくると思いますね。
大西隆: 私は今までに数十人の留学生を研究室で受け入れましたが、途中で、「日本は嫌だ、帰りたい」と言った人はいません。だから日本の魅力はあると思うのです。
ただ、非常に気になっていることは、例えば日本の学生が中国や韓国の学生と同じ数だけ行き来しているかというと、やっぱり偏っているわけです。そこは今欠けている大事なステップだと思っています。
周牧之: 街の魅力はますます大事になってきます。アメリカでは非常にいいプログラムを持っている大学でも、魅力ある都市に立地していない場合が多いです。そういう大学は、最近は奨学金を出しても、「ニューヨークがいい」などという中国の学生に逃げられてしまうのです。「魅力のある都市だからこそ、人が集められる」という視点が大事です。
会場からの質問: マスコミや、今、世の中を牛耳っている世代が「変化」の抵抗勢力になっている気がします。この人たちを変えるためには、何をしたらいいのでしょうか。
黒川清: 将来があるのは若い人だから、「抵抗勢力」にいくら言ったって理解しないし、反対する、できない理由ばかり言う。やはり若い人のネットワークを横に広げること。そうしないと5年10年先でも、日本は変わらない、変われない。私はそれが一番気になっているのです。
竹中平蔵: やや否定的なことを言うならば、10年前、「今の若手が育てば、10年後は変わる」と言われていました。その10年前も同じことを言っていたんです。つまり、歳をとるとみんな変わってしまい、保守的になってしまう。これはみなさんの組織でも、思い当たるでしょう?(笑)
結局、みんな中間管理職みたいないい子になってしまっているのです。保身のためだけにやっていて、そこが変わらないことが問題なのです。若い人の交流は必要ですが、それだけですべてが解決するとは思えません。一人ひとりが志の原点に帰ることがないと難しいのではないかと思います。
記事をシェアする
ブログに書く
この記事のURLはこちら。
http://www.academyhills.com/note/opinion/10051208ST_GlobalConference.html
世界経済を支える東アジア経済圏の成長 インデックス
-
第1章 日本と中国のパートナーシップのカギは“都市”
2010年05月12日 (水)
-
第2章 技術大国日本の問題は、海外に出て行かないこと
2010年05月21日 (金)
-
第3章 中国はエネルギーを制度改革、都市改革へむけよ
2010年05月31日 (月)
-
第4章 日本社会がアジアと伍していくには、言葉の問題解決が不可欠
2010年06月08日 (火)
-
第5章 日本人には「世界市場を制覇する!」という意志がない
2010年06月17日 (木)
-
第6章 東京と上海の間でスムーズに行き来できる環境を整えよ
2010年06月24日 (木)
-
第7章 世界における日本の“存在感のなさ”を解消するには?
2010年07月02日 (金)
-
第8章 提言~世界のパラダイムシフトに対応するために~
2010年07月13日 (火)
-
第9章 グローバル・アジェンダの解決には、私たちの関与が必要
2010年07月22日 (木)
注目の記事
-
11月20日 (水) 更新
aiaiのなんか気になる社会のこと
「aiaiのなんか気になる社会のこと」は、「社会課題」よりもっと手前の「ちょっと気になる社会のこと」に目を向けながら、一市民としての視点や選....
-
10月22日 (火) 更新
本から「いま」が見えてくる新刊10選 ~2024年10月~
毎日出版されるたくさんの本を眺めていると、世の中の”いま”が見えてくる。新刊書籍の中から、今知っておきたいテーマを扱った10冊の本を紹介しま....
-
10月22日 (火) 更新
メタバースは私たちの「学び」に何をもたらす?<イベントレポート>
メタバースだからこそ得られる創造的な学びとは?N高、S高を展開する角川ドワンゴ学園の佐藤将大さんと、『メタバース進化論』を出版されたバーチャ....
現在募集中のイベント
-
開催日 : 12月17日 (火) 19:00~20:30
note × academyhills
メディアプラットフォームnoteとのコラボイベント第1回。近著『きみのお金は誰のため』が25万部超のベストセラーとなっている、社会的金融教育....
「そもそもお金って何?未来をつくるためのお金の教養」
-
開催日 : 11月28日 (木) 19:00~20:30
World Report 第10回 アメリカ発 by 渡邊裕子
いま世界の現場で何が起きているのかを、海外在住の日本人ジャーナリスト、起業家、活動家の視点を通して解説し、そこから見えてくることを参加者の皆....
「ハリス V.S. トランプ 米国大統領選挙結果を読み解く」