記事・レポート
なんでもかんでも進化する?
読みたい本が見つかる「カフェブレイク・ブックトーク」
更新日 : 2010年06月07日
(月)
第6章 人類の進化についてのさまざまな観点
澁川雅俊: 人類の起源、あるいは「人の由来」といえばさまざまな生物の中でもっともユニークな進化をとげたのが人類である、というのが生物進化学の統一的見解のようです。
それに関連して次のような本があります。
・『この6つのおかげでヒトは進化した—つま先、親指、のど、笑い、涙、キス』(C・ウォルター、07年早川書房)
・『言葉を使うサル—言語の起源と進化』(R・バーリング、07年青土社)
・『歌うネアンデルタール—音楽と言語から見るヒトの進化』(S・ミズン、06年早川書房)
・『環境を“感じる”—生物センサーの進化』(郷康広・颯田葉子、09年岩波書店)
・『赤を見る—感覚の進化と意識の存在理由』(N・ハンフリー、06年紀伊國屋書店)
・『「左利き」は天才?—利き手をめぐる脳と進化の謎』(D・ウォルマン、06年日本経済新聞出版社)
等などです。
『この6つのおかげで……』は、目立ったほどの体毛もなく、体重のバランスをとる2本足、すぐれた知能や感情など自然界に類を見ないある種の生物が、人間になるために身につけなければならなかった要件を次のように分析し、それぞれがいかに重要であるかを解説しています。それらは、まず大地をしっかり踏みしめるための足の親指、自在に動く手の親指、ことばを発するためののど、ことばによるコミュニケーションに感情を込める笑いと涙、そして愛情を深めるキスである、とこの本はいっています。この本の著者は米科学ジャーナリストで、それだけに読みやすいものに仕上がっています。
『言葉を使うサル』は、生物進化学というより、言語学の分野の研究成果です。『歌うネアンデルタール』も人間のコミュニケーションの始まりをテーマにしていますが、とりわけ歌とことばのかかわりに焦点を絞っています。この本では、ハミング(ヨーデル?)といったらいいのでしょうか、ネアンデルタール人がのどをつかってある種の歌声で意思疎通をはかっていたとの推論から、歌が話しことばを先行していたと唱えています。
『環境を“感じる”』『赤を見る』『「左利き」は天才?』はいずれも人間の脳の働きと発達、とりわけものごとの認知・認識をテーマにしています。
とりわけ最後のものは、全人類の約10%を占める「左利き」の人たちは、右利きの人とどこが違うのか、左利きはどうやって生まれるのか、脳の仕組みや働きに差があるのか等など、左手を利き手とする人たちにまつわる事例を収集して、分析しています。90%といわれている右利きの人が圧倒的に多い社会ではあまり手に取られることはないかもしれませんが、面白い本です。とりわけ左利きの人にはそう思われます。
以上いくつかの本について見てきましたが、進化に関する研究は生物全体の進化から個体生物のそれ、さらに個体生物の器官、そして人間であれば脳とか心とか感覚などの部分的なもののそれが注目されるようになり、例えば進化考古学、進化人類学、進化心理学、進化医学などのように他の学問分野と学際的な展開を見せているようです。
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http://www.academyhills.com/note/opinion/10042106BT_Evolution.html
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