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新書本—軽装な冊子が森羅万象を映す

ブームの理由から“おすすめの新書本”をすすめる新書本まで

更新日 : 2010年03月19日 (金)

第4章 新書シリーズのランキング

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澁川雅俊: 第1章で挙げたように、あれだけ多くの新書シリーズとなると、どのシリーズが良いのか、どの新書本が良いのかなどと詮索したくなります。どれが良いかは、基本的には選好の問題で、読者一人ひとりのリテラシーとフィーリングの問題でもあるのですが、出版界では新書シリーズにランク付けがあるようです。

『本の現場—本はどう生まれ、だれに読まれているか』(永江朗、09年ポット出版)によると、岩波新書、中公新書、講談社現代新書を〈御三家〉と呼び、新潮新書、ちくま新書、光文社新書を〈新御三家〉と称し、これらの6シリーズを一部リーグとし、それ以外のものを二部リーグとするランキングもあるようです。

テキストのグレードは別としても、そうした格付けは、全国的大型書店網を持つ紀伊國屋書店が運営しているPOSシステムのパブライン(出版者向け販売データ提供システム)での売上げに歴然と現れているとされています。そうしたデータを背景に考えると、新書本一点当たりの発行部数は、一部リーグでは1点10万部が目安で刊行され、二部リーグでは3万~5万部のようです。

【新書本の変容】

御三家と新御三家なるランキングはある時期まで、ある程度質の高さを示していました。しかし最近のように、新書本がベストセラーの高位に入るようになると、御三家はもとより新御三家以外のシリーズのなかでも、10万部以上の発売を誇るものがたくさん出るようになってきました。

『本の現場』を書いた永江は、少し前に『いまどきの新書』(永江朗、04年原書房)、という新書本のガイドブックを書いていますが、その本の冒頭で著者は、こうした事実をもって岩波新書創刊のこころざしを踏襲して信頼するに耐える教養書であった新書本の様変わりを指摘しています。

例えば先に挙げたベストセラー新書本、すなわち『差別と日本人』(角川oneテーマ21)、『しがみつかない生き方』(幻冬舎新書)、『日本を貶めた10人の売国政治家』、(幻冬舎新書)、『悩む力』(集英社新書)が、「岩波新書」のいう「激変する現在の状況を適正に捉えることができる教養を現代人自らが養う拠り所を提供しようとする考え」の範疇に入るのかどうかという点に、この著者は違和感を覚えているようです。

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