記事・レポート

新書本—軽装な冊子が森羅万象を映す

ブームの理由から“おすすめの新書本”をすすめる新書本まで

更新日 : 2010年03月04日 (木)

第2章 なぜ〈新書本〉なのか

六本木ライブラリー カフェブレイクブックトーク 紹介書籍
写真提供:河出書房新社

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【廉価・軽装だけでない新書本】

澁川雅俊: “普通”の本(単行本)がたくさんあるのに、なぜ“新書本”なのでしょうか。安価で持ち歩きに便利だからでしょうか。

このことについて第1章で挙げた「読書世論調査09年版」で新書本を読む理由を尋ねたところ、「持ち歩きに便利」や「安価だ」と回答した人は、それぞれ100人中10人程度でそれほど多くありません。むしろ、「さまざまなテーマにわたっていて内容が豊富」、「さまざまなジャンルの筆者が多い」、「タイムリーなテーマのものが多い」、「好きな作家の最新作が読める」と、新書本の特徴がよく捉えられており、新書本読書がかなり定着していることがわかります。

【小型の、気軽に読める内容の書物を集めた、廉価軽装の叢書】

新書本の特徴をもう少しみるために、少し大きな辞・事典で調べてみると、「新書」とは「新書判の略称」とありましたので「新書判」を調べてみると、「出版物の判型の一つで、小型で比較的気軽に読める内容の書物を集めた、廉価軽装の叢書」と定義されていました。

なぜその大きさになったのかについては、岩波新書の創刊(1938年)にかかわります。創刊に当たって岩波書店は、普及版として軽装・廉価の方針で、1年ほど前に創刊された英国のペリカン・ブックスを参考に造本することにしました。つまり、ペーパーバック、薄手の紙装の軽装本で、表紙およびカバーが一定のデザインで統一されている小型本(おおよそ縦17cm×横11cmサイズ)という造本上の基本フォーマット(装幀)に定着しました。そうしたスタイルは、後続の新書シリーズにも採用されることになりました。

なお、厚さについて実測で調べてみると、平均約1cm(テキスト総文字数で12万字程度)で、単行本と比べると3分1ほどになっています。

もうひとつの特徴は、特定の出版社から叢書(双書、アンソロジーまたはシリーズ)として継続的に刊行される一連の書物群であることです。「叢書」とは、同じテーマの下で種々の書物を一定の装幀に従って継続的に刊行し、全体として一大部冊化したものです。

単行本系列のシリーズは、例えば「世界文学全集」(河出書房新社)、「日本歴史民俗叢書」(吉川弘文館)や「知の再発見双書」(大阪創元社)、「政治思想研究叢書」(早稲田大学出版部)など、ある程度限定されたテーマの下で逐次的に刊行される単行本群ですが、新書本のシリーズではそういう限定性はなく、あらゆるテーマに関して出されているのが普通です。

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