記事・レポート
サマーダボス会議 in 大連 報告会
~弱体化した日本の発信力。回復への提言
更新日 : 2009年11月04日
(水)
第8章 新世界の課題を解決する人材になれ!
竹中平蔵: 今回のサマーダボスでのもう1つのキーワードは「アジアの経済発展モデルの見直し」でした。日本の輸出依存度は長年10%程度だったのが、2007年は16%で、この数年間で高まってきています。この傾向は各国そうで、中国はもっと高いし、東南アジアの幾つかの国では50%を超えている国もあります。(※編注:「世界の統計2009」総務省統計局を参照)
いいものを作ってアメリカやヨーロッパに輸出するというビジネスモデルは、日本をモデルにして発展してきたといわれています。しかし今後欧米が長期にわたってアジアから物を買い続けるという力は、もうないのではないでしょうか。日本ではよく「内需依存型にしなければいけない」と言われていますが、アジア型の経済発展モデルをどうしていくのか、というのが大きな議論になりました。
結論から言えば「規制緩和」以外にありません。潜在的な需要があるのにまだ掘り起こされてないもの、例えば医療・社会保障関係、教育関係、通信・放送関係など、これらは今、全部規制されています。規制緩和を伴わない成長戦略はあり得ません。
ところが残念なのは、規制緩和をやろうという政治的な声がほとんどない。アジアの多くの国も政府依存です。先ほど少し触れましたが、中国は民営化した企業を、今、逆行して国営化するような動きをしています。これはアジア全体の大きな課題だと思います。私は今年の大連のサマーダボス会議に出て、その先導的なモデルを示すのは、願わくば日本であってほしいと思いました。
石倉洋子: アジアの新しい成長モデルという意味では、今回、私がパネリストとして参加した「新しい競争力を持つ新しい国・ニュー・チャンピオン」というパネル・ディスカッションがそのテーマでした。
そのパネルには、ベトナムの副首相や、コスタリカやモーリシャスの大臣たちが登場して、世界的な景気低迷の下、当面は政府主導でいろいろな活動を計画していることを語りました。しかし、それは今、ここにある世界経済不況という課題を解決するための短期的な対応策である、「民から官へ」という流れではない、政府が一見大きな力を持ち始めているのは、あくまでも短期的な対策であること、を心に留める必要があると思いました。
世界では保護主義的な動きがかなり見えますが、こうした傾向が長期的な流れになると、世界経済は低迷する、貿易や協働を推進してこそ経済成長が実現できるというメッセージは、何度も強調されていました。
会議で何が起こっているのか、「裏庭」の話は当然見ることはできませんが、公開されている記録やビデオはウェブサイトで見られます。セッションの要約もダウンロードできるので、情報としてかなり使えると思います。ぜひウェブサイトを活用していただきたいとおもいます。
それから来年(2010年)、「グローバル・アジェンダ・ゼミナール」を開催します。こういう世界の課題について、多くの組織が協働して解決していかねばならない課題について、考える機会がほしい、同時に問題解決の力をつけたい、という方にぜひ参加していただきたいと思います。
最後に、途中で少し触れた『戦略シフト』、この本には、企業中心に、世界共通プラットフォームを提案すべきだという話も書いています。この3点セットのマーケティングで、今日のセッションを終わらせていただきたいと思います(笑)。ありがとうございました。(終)
いいものを作ってアメリカやヨーロッパに輸出するというビジネスモデルは、日本をモデルにして発展してきたといわれています。しかし今後欧米が長期にわたってアジアから物を買い続けるという力は、もうないのではないでしょうか。日本ではよく「内需依存型にしなければいけない」と言われていますが、アジア型の経済発展モデルをどうしていくのか、というのが大きな議論になりました。
結論から言えば「規制緩和」以外にありません。潜在的な需要があるのにまだ掘り起こされてないもの、例えば医療・社会保障関係、教育関係、通信・放送関係など、これらは今、全部規制されています。規制緩和を伴わない成長戦略はあり得ません。
ところが残念なのは、規制緩和をやろうという政治的な声がほとんどない。アジアの多くの国も政府依存です。先ほど少し触れましたが、中国は民営化した企業を、今、逆行して国営化するような動きをしています。これはアジア全体の大きな課題だと思います。私は今年の大連のサマーダボス会議に出て、その先導的なモデルを示すのは、願わくば日本であってほしいと思いました。
石倉洋子: アジアの新しい成長モデルという意味では、今回、私がパネリストとして参加した「新しい競争力を持つ新しい国・ニュー・チャンピオン」というパネル・ディスカッションがそのテーマでした。
そのパネルには、ベトナムの副首相や、コスタリカやモーリシャスの大臣たちが登場して、世界的な景気低迷の下、当面は政府主導でいろいろな活動を計画していることを語りました。しかし、それは今、ここにある世界経済不況という課題を解決するための短期的な対応策である、「民から官へ」という流れではない、政府が一見大きな力を持ち始めているのは、あくまでも短期的な対策であること、を心に留める必要があると思いました。
世界では保護主義的な動きがかなり見えますが、こうした傾向が長期的な流れになると、世界経済は低迷する、貿易や協働を推進してこそ経済成長が実現できるというメッセージは、何度も強調されていました。
会議で何が起こっているのか、「裏庭」の話は当然見ることはできませんが、公開されている記録やビデオはウェブサイトで見られます。セッションの要約もダウンロードできるので、情報としてかなり使えると思います。ぜひウェブサイトを活用していただきたいとおもいます。
それから来年(2010年)、「グローバル・アジェンダ・ゼミナール」を開催します。こういう世界の課題について、多くの組織が協働して解決していかねばならない課題について、考える機会がほしい、同時に問題解決の力をつけたい、という方にぜひ参加していただきたいと思います。
最後に、途中で少し触れた『戦略シフト』、この本には、企業中心に、世界共通プラットフォームを提案すべきだという話も書いています。この3点セットのマーケティングで、今日のセッションを終わらせていただきたいと思います(笑)。ありがとうございました。(終)
関連書籍
戦略シフト
石倉洋子東洋経済新報社
サマーダボス会議 in 大連 報告会 インデックス
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第1章 世界経済の潮流は、ダボス会議で決まる
2009年11月04日 (水)
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第2章 ダボス会議とサマーダボスの基礎知識
2009年11月04日 (水)
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第3章 サマーダボスの重要性に、日本は気づいていない
2009年11月04日 (水)
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第4章 中国の圧倒的な存在感
2009年11月04日 (水)
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第5章 日本の経済人が不在ということに、危機感をおぼえる
2009年11月04日 (水)
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第6章 環境やアニメに対する日本の認識と、世界の認識は違う
2009年11月04日 (水)
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第7章 アイデアをビジネスにする“マルチ・ステークホルダー”
2009年11月04日 (水)
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第8章 新世界の課題を解決する人材になれ!
2009年11月04日 (水)
該当講座
石倉 洋子(一橋大学大学院国際企業戦略研究科 教授)
竹中 平蔵(アカデミーヒルズ理事長/慶應義塾大学教授)
ダボス会議を主催する世界経済フォーラムが東京に事務所を開設することを機に、ダボス会議の前線で議論されていることは何なのか、日本はどのように世界の課題に貢献できるのかについて考えるセミナーです。今回は、9月10日~12日に中国・大連で開催されるニュー・チャンピオン年次総会(サマー・ダボス会議)で何が議論されたか、石倉氏と竹中氏が解説します。
アカデミーヒルズセミナー
政治・経済・国際
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