記事・レポート
サマーダボス会議 in 大連 報告会
~弱体化した日本の発信力。回復への提言
更新日 : 2009年11月04日
(水)
第1章 世界経済の潮流は、ダボス会議で決まる
中国が戦略的に仕掛けた「サマーダボス会議」をご存知ですか?
世界の経済潮流が決まる場であるにも関わらず、日本ではその重要性が理解されておらず、ビジネスチャンスも存在感も失っています。
会議で一体何が行われているのか—— 会議に出席した石倉洋子氏らが徹底解説! 日本の発信力を高める方法を探ります。
講師:石倉洋子 一橋大学大学院国際企業戦略研究科 教授
講師:竹中平蔵 アカデミーヒルズ理事長/慶應義塾大学教授 グローバルセキュリティ研究所所長
特別ゲスト:土屋聡 世界経済フォーラム 日本統括
竹中平蔵: 世界が直面している貧困問題、環境問題、テロリズムの問題、金融危機など、私たちが解決しなければならない非常に重要な問題を「グローバル・アジェンダ」といいます。それらに対処するために開かれているのが、ワールド・エコノミック・フォーラム(世界経済フォーラム)が主催する「ダボス会議」です。
ものを作り出す経済力や破壊する軍事力をハード・パワーと呼ぶのに対し、ものを引きつける力をソフト・パワーと呼びますが、ダボス会議はソフト・パワーの象徴のような場だと私は思います。これは非営利財団が行っている会議ですが、世界の中で極めて大きな存在感があり、まさにWinner-Take-All、一人勝ちになっています。
毎年7月に世界の首脳が集まるサミットですが、今ではこれは、1月のダボス会議から始まるといわれています。サミットで議長を務める総理大臣や大統領が、冬のダボス会議でアジェンダをぶち上げることでプロセスが始まるとされ、今やダボス会議は世界の経済論議の中に完全に組み込まれた存在になっています。
重要なのはここからです。これに対して中国が同じような会議を作ろうと、10年ほど前から中国版ダボス会議として、海南島で「ボアオ会議」というのを始めました。初開催の2002年に、当時の首相、小泉さんと私も一緒に出席したことがあります。しかし、ボアオ会議はいくら頑張ってもダボス会議のようにはなりません。それはWinner-Take-Allだからです。
その後、中国は方針転換し、ダボス会議を中国の中に取り込む戦略を立てました。その結果できたのが「サマーダボス」です。2007年に大連で開催され、2008年は天津で、そして今年2009年は再び大連で行われました。私は日本や韓国でも開催すればいいと思うのですが、毎年中国でやることが既成事実化してきました。
大連で行われた今年のサマーダボスは、すごいものでした。街を挙げてこの会議を支持していて、参加者のために交通規制をしたり、入国時には空港に特別レーンを設けて迎え入れたり、民主主義国では考えられないような待遇で後押しをしていました。
日本ではこのたび、ワールド・エコノミック・フォーラムの東京オフィス開設誘致に成功し、六本木ヒルズにオフィスができました。ニューヨーク、北京に続く3番めのオフィスになります。
ダボス会議やサマーダボスで日本がいかに存在感を出していけるか、解決しなければならないグローバル・アジェンダに対していかに貢献できるか。今日はそのことを踏まえて、先日のサマーダボスのご報告をさせていただきたいと思います。
最初に、なぜダボス会議が重要で、どこに注目しなければいけないのかをお話しておきます。世界の経済論議の潮流は、ダボス会議のような場で決まっているのです。ここにいろいろな影響力のある人が出てきて議論することが、世界の経済論議の潮流になるのです。ですので、ダボス会議で何が議論されているかを見ることは、一種の定点観測になります。
また、日本の政治家や企業家、専門家がそこに出ていって話すことは、日本全体のIR(Investor Relations)になります。ダボス会議はIRの場なんです。ですので、そこで何を発信できるかも大変重要になります。
ものを作り出す経済力や破壊する軍事力をハード・パワーと呼ぶのに対し、ものを引きつける力をソフト・パワーと呼びますが、ダボス会議はソフト・パワーの象徴のような場だと私は思います。これは非営利財団が行っている会議ですが、世界の中で極めて大きな存在感があり、まさにWinner-Take-All、一人勝ちになっています。
毎年7月に世界の首脳が集まるサミットですが、今ではこれは、1月のダボス会議から始まるといわれています。サミットで議長を務める総理大臣や大統領が、冬のダボス会議でアジェンダをぶち上げることでプロセスが始まるとされ、今やダボス会議は世界の経済論議の中に完全に組み込まれた存在になっています。
重要なのはここからです。これに対して中国が同じような会議を作ろうと、10年ほど前から中国版ダボス会議として、海南島で「ボアオ会議」というのを始めました。初開催の2002年に、当時の首相、小泉さんと私も一緒に出席したことがあります。しかし、ボアオ会議はいくら頑張ってもダボス会議のようにはなりません。それはWinner-Take-Allだからです。
その後、中国は方針転換し、ダボス会議を中国の中に取り込む戦略を立てました。その結果できたのが「サマーダボス」です。2007年に大連で開催され、2008年は天津で、そして今年2009年は再び大連で行われました。私は日本や韓国でも開催すればいいと思うのですが、毎年中国でやることが既成事実化してきました。
大連で行われた今年のサマーダボスは、すごいものでした。街を挙げてこの会議を支持していて、参加者のために交通規制をしたり、入国時には空港に特別レーンを設けて迎え入れたり、民主主義国では考えられないような待遇で後押しをしていました。
日本ではこのたび、ワールド・エコノミック・フォーラムの東京オフィス開設誘致に成功し、六本木ヒルズにオフィスができました。ニューヨーク、北京に続く3番めのオフィスになります。
ダボス会議やサマーダボスで日本がいかに存在感を出していけるか、解決しなければならないグローバル・アジェンダに対していかに貢献できるか。今日はそのことを踏まえて、先日のサマーダボスのご報告をさせていただきたいと思います。
最初に、なぜダボス会議が重要で、どこに注目しなければいけないのかをお話しておきます。世界の経済論議の潮流は、ダボス会議のような場で決まっているのです。ここにいろいろな影響力のある人が出てきて議論することが、世界の経済論議の潮流になるのです。ですので、ダボス会議で何が議論されているかを見ることは、一種の定点観測になります。
また、日本の政治家や企業家、専門家がそこに出ていって話すことは、日本全体のIR(Investor Relations)になります。ダボス会議はIRの場なんです。ですので、そこで何を発信できるかも大変重要になります。
関連書籍
戦略シフト
石倉洋子東洋経済新報社
サマーダボス会議 in 大連 報告会 インデックス
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第1章 世界経済の潮流は、ダボス会議で決まる
2009年11月04日 (水)
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第2章 ダボス会議とサマーダボスの基礎知識
2009年11月04日 (水)
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第3章 サマーダボスの重要性に、日本は気づいていない
2009年11月04日 (水)
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第4章 中国の圧倒的な存在感
2009年11月04日 (水)
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第5章 日本の経済人が不在ということに、危機感をおぼえる
2009年11月04日 (水)
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第6章 環境やアニメに対する日本の認識と、世界の認識は違う
2009年11月04日 (水)
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第7章 アイデアをビジネスにする“マルチ・ステークホルダー”
2009年11月04日 (水)
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第8章 新世界の課題を解決する人材になれ!
2009年11月04日 (水)
該当講座
石倉 洋子(一橋大学大学院国際企業戦略研究科 教授)
竹中 平蔵(アカデミーヒルズ理事長/慶應義塾大学教授)
ダボス会議を主催する世界経済フォーラムが東京に事務所を開設することを機に、ダボス会議の前線で議論されていることは何なのか、日本はどのように世界の課題に貢献できるのかについて考えるセミナーです。今回は、9月10日~12日に中国・大連で開催されるニュー・チャンピオン年次総会(サマー・ダボス会議)で何が議論されたか、石倉氏と竹中氏が解説します。
アカデミーヒルズセミナー
政治・経済・国際
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