記事・レポート

「金融グローバリゼーション~国際金融センターを目指す東京のこれから~」

BIZセミナーその他
更新日 : 2008年05月12日 (月)

第2章 新たな金融手法と金融商品が登場

アカデミーヒルズで開催した斉藤惇さんの講座の様子

斉藤惇: また、M&Aファイナンスや不動産ファイナンスなどキャッシュフローを重視する新たな金融手法が普及してきました。特に強調したいのは、証券化手法が発達したことにより、実に多様な証券化商品が生み出されたことです。1980年代から今日に至る長期の経済成長の背景として、こうした金融技術の革新、金融商品の派生が非常に大きな役割を果たしたことは見逃せません。

市場参加者という観点から見ると、投資家の顔ぶれが多様化しました。ヘッジファンドあるいはプライベートエクイティファンドなどがグローバルな金融システムにおいて、重要なプレイヤーとして活躍するようになりました。最近はむしろ、ファンドの旺盛な投資需要によって、M&Aを含むさまざまな投資案件が創出されています。このように金融取引手法の発達と、さまざまなファンドの拡大により、多様なリスクを持った世界中の資金が、グローバルな金融市場をめまぐるしく駆け巡りはじめました。

最近のサブプライムローン問題は特定の国の、特定分野のリスクが世界中の投資家に分散して保有される時代になったことを端的に現しています。世界的な金余りの中で成功体験が少し長期化したため投資家の多くが自信過剰に陥り、リスクを軽視した結果でしょう。新しい金融技術が初めて実経済の検証を受けているのです。

デリバティブが本格的に市場に登場したのは1970年代ですが、今、本格的な試練を受けています。これを機に、賢いアングロアメリカンは、おそらく何らかのルールを作り出すでしょうが、この新しい金融のあり方が大きく方向転換することはないと思います。