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RoppongiBIZ*週刊東洋経済提携セミナー『勝間式「利益の方程式」』

更新日 : 2008年07月31日 (木)

第3章 本はタイトルで手に取らせない限り顧客獲得コスト倒れになる

勝間式「利益の方程式」

勝間和代: では、顧客獲得コストを下げる基礎知識に移ります。実は最近特に重要になっているのは、この顧客獲得コストです。なぜこれが重要かというと答えは簡単で、供給過剰だからです。大体すべてにおいて競合商品があって、その中で私たちが選ぶという手段をとるわけです。顧客獲得コストは実際に広告を打つと、商品単価によるのですが一番安いもので300円ぐらい、高いもので数10万円ぐらいかかります。ですので、人1人を動かすというときに、一体幾らで動かせますかということで決まってくるわけです。

 皆さんにお買い上げいただいた『利益の方程式』という書籍は1,500円です。そこで顧客獲得コストって幾らぐらい使われるかというと、当然印刷費、著者への印税、流通コスト、流通マージンがあります。すると5%から10%がせいぜいなんですよ。1,500円の本の5%って75円です。75円で獲得しろって、これは結構無茶な話なんですね。だからこそ、書籍というのは何が大事かというと、もうタイトルです。タイトルでぱっと手に取らせない限り、どんなにいい本でも顧客獲得コスト倒れになってしまうんですね。いい本あるいは売れる本というのは、タイトルがいい本が多いです。

 一方、例えば生命保険、車、住宅など何十万円も獲得コストにかけられる商品というのがあります。そういうものは何をするかというと、ダイレクト電話がかかってきたり、あるいはコマーシャルやキャンペーンを打ったり、雑誌広告が出たりということで、大量の顧客獲得コストがかけられる。あるいは客単価が安くても大量に買ってもらえるもの。例えばカレーのルーとかそうですね。ああいうものは1箱300円しかしませんけれども、皆さん大量に買いますから、顧客獲得コストがせいぜい1箱あたり50円しか使えなくても、それが何十万個、何百万個と日々売れているのを計算すると、コマーシャルが打てるんですよ。

 大事なことは何かというと、一番簡単なのは商品力なんです。結局、おいしいもの、あるいは面白いタイトル、面白い物であれば、顧客獲得コストはどんどん下がってきます。これは口コミやリピーターも入るからです。ですので、これもよく言われているのですが、どんなにいい広告を打ったって、いいプロモーションをしたって、悪い商品って絶対売れないんですよ。あるいは一時的に売れたとしても、最後までリピーターになれないので、顧客獲得コストがかかってしまう。定番商品は何が素晴らしいというと、例えばブルボンのいろんな商品がありますよね。テレビ・コマーシャルはほとんどやっていないけれど、私たちは、ついルマンドなどを買っているわけですね。それはなぜかというと、もう定番で分かっているからです。そこまで行けば、もう顧客獲得コストをかけずにも儲かるようになります。

 それから顧客を積極的に選択することが獲得コストを下げると言っているのですが、これは赤字客と黒字客というのがいるんですね。売ったはいいけれども、やたらクレーマーになる客とか、あるいは、売った後ですごく手間ひまがかかる客、そういうお客をなるべく排除し顧客を選ぶようにし ていかないと、コストが高くなってしまう。ですので、ダイレクトメールのレスポンス率などが的確なのですが、いわゆるデータベースマイニングを行いまして、適切なところに送るのとそうでないのですと、レスポンス率が大体5%から10%ぐらい平気で変わってしまうのですね。その鍵を見つけることが大事です。ですので、現代では、CRMも含めて顧客をどうプロファイリングするかなど、データをどうやって取るかということが大事になってきます。

▲ 過剰供給の現代において顧客獲得コストの最小化はオペレーションの中で特に重要な課題となっている。本項で抜粋した以外にも「ロイヤル顧客維持の重要性」 や「口コミは究極の顧客獲得手段」など、複数のポイントが言及されていた。詳しくは書籍または勝間氏のセミナーなどをチェックしていただきたい

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「週刊東洋経済」提携セミナー
勝間式「利益の方程式」
利益を生み出す黄金ルール
勝間和代 (経済評論家、公認会計士)

「売上増は七難隠す」という言葉がありますが、これは日本経済が右肩上がりで成長を遂げていたバブル崩壊以前の「売上をあげると利益は後からついてくる」という頃の経験則に基づいた実感です。しかしながら日本の経済状況は成長期から成熟期へ大きく変化し、人々の生活は豊かになるとともに市場は飽和しつつあります。こう....


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