記事・レポート

日本発「無印良品」から世界の「MUJI」へ
~ケロッグ経営大学院 モーニングセッションより

地球規模で「消費の未来」を見通す

更新日 : 2015年10月07日 (水)

第2章 「わけあって、安い」に込めた想い


 
無印良品のものづくり

鈴木啓: 創業以来、商品企画の基本となっているのは「生活の基本となる本当に必要なものを、本当に必要なかたちでつくること」。言葉にすれば簡単ですが、この概念を商品に落とし込むのはなかなか大変です。そこで誕生したのが「素材の選択」「工程の点検」「包装の簡略化」という、ものづくりの3つの基本です。

例えば、1982年に発売した再生紙を使ったメモ帳。「何かをメモするだけなら、きれいな白い紙ではなく、チラシの裏紙でもいいはず。ならば、メモ帳も再生した紙でいいのではないか。紙を再生して使うことは環境にも優しい」。素材を徹底的に見直す中から出てきた発想がきっかけとなり、誕生した商品です。

最初の頃は「メモ帳が茶色いのはおかしい」と言われるお客様も多かったそうですが、現在そうした声はいただいておりません。その後もノートやらくがき帳、クレヨンの箱など様々な商品で再生紙を活用しましたが、素材の用途を広げることで、仕入れコストが安くなり、そのぶん価格を抑えることもできました。これだけの規模で再生紙を活用したのは、無印良品が最初だと思います。

例えば、1980年に発売した「こうしん われ椎茸」。いわゆる干し椎茸です。当時、スーパーなどではきれいに形の整った、見栄えの良い干し椎茸ばかり売られていました。工程を見直すため、我々が生産地を訪れたところ、当然ながら形の悪いもの、割れているものもたくさんあり、こうしたものは見栄えが悪いという理由で選別されて出荷できず、生産者の自宅で使われたり、捨てられたりしていました。

干し椎茸はそのまま食べるわけでもなく、見栄えにはあまりこだわらないはず。多くの場合、おいしい出汁がとれればいいわけで、割れているものでも風味は変わりません。私達は、形の悪いものもすべて買い取り、サイズや形の選別もせず、また、包装の簡略化ということで、パッケージはおなじみの透明な袋に商品名を印字しただけ。

品質はそのままに、あらゆる無駄を省いたことで、従来品より価格を3割ほど抑えることができ、その結果、大ヒット商品となりました。あまりにも売れすぎてしまい、きれいな形の干し椎茸をわざわざ割って袋に詰めた……なんてことはしませんでしたが(笑)、それほどヒットしました。

とはいえ、消費者の心理は非常に面白いもので、価格は安いほうが良いけれど、安すぎると逆に心配になるのです。そこで、パッケージの商品名の上に「価格が安い理由」を表示しました。つまり、お客様にものづくりの背景情報をきちんとご説明し、安心して購入いただけるようにしたのです。

「わけあって、安い」。これは創業当初に掲げたキャッチフレーズですが、我々が大切にしてきた想いを端的に表しています。このキャッチフレーズは、我々の良きアドバイザーとして活躍していただいているクリエイティブ・ディレクターの小池一子さんによるものです。現在は「わけあり○○」と銘打った商品があふれていますが、実はこの言葉を最初に打ち出したのは無印良品です。

無印良品の生みの親である田中一光さんは、「良い商品、良い情報、良い環境。この3本柱が1つでも欠けてしまえば、商品は成立しない」と言われています。良い商品をつくり、商品の背景にある情報をきちんと伝え、良い店舗環境でお届けする。これにより、我々の伝えたい想いがお客様にも正しく理解いただけると考えています。



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日本発「無印良品」から世界の「MUJI」へ ~MUJIのグローバル展開に学ぶ~

鈴木 啓(株式会社 良品計画 取締役・執行役員/生活雑貨部長)8年半にわたる海外事業の第一線でのご経験を交えながら、良品計画のグローバル展開についてご紹介いただきます。


日本発「無印良品」から世界の「MUJI」へ
~ケロッグ経営大学院 モーニングセッションより
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