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DNAから読み解く生命の不思議

アカデミーヒルズ サマースクール 夢中になれることを見つけよう

更新日 : 2015年06月24日 (水)

第1章 不思議と謎に満ちた生き物の世界

アート、デザイン、サイエンスなど各分野の第一線で活躍するプロフェッショナルが、小学校高学年~中学生に向けて夢を叶えるためのヒントを熱く語る「アカデミーヒルズ サマースクール~夢中になれることを見つけよう」。今回はその中から、大人の好奇心も刺激する2つの“特別授業”をご紹介します。皆さんもぜひ、夢を実現するためのヒントを見つけてみてはいかがでしょうか?

生命の謎を解き明かすカギとなる「DNA」。近年はテクノロジーの進化により、その研究がますます加速していますが、そもそもDNAは生き物の体内でどのような働きをしているのでしょうか? 新進気鋭の生物学者・佐々木浩氏が、最新の研究成果とともに、その秘密をやさしく解説します。


講師:佐々木浩(生物学者)

佐々木浩(生物学者)
佐々木浩(生物学者)

 
分子生物学のセントラルドグマ

佐々木浩: 最近、よく耳にするようになった「DNA」。テレビの科学番組では「生命の設計図」などと紹介されています。その設計図を調べると、どのようなことが分かり、それが皆さんの将来をどのように変えていくのか? DNAを中心に、生命の不思議に迫っていきたいと思います。

さて、僕が大学生の頃に読んだ生物学の教科書は、すべて英語で書かれており、1,392頁もありました。重さは何と3.7kg。すべてをこの授業で説明することはできません。そこで皆さんには、生命の謎をひも解くためのとっておきのキーワードをご紹介します。

それが、「分子生物学のセントラルドグマ」です。セントラルドグマとは、直訳すれば中心的な原理といった言葉になりますが、もっと簡単に表現すれば、「最も大切なこと」。この授業を通じて、生物学において最も大切なことを学んでいただきたいと思います。
最大・最小・最強の生き物

佐々木浩: 地球上には、たくさんの生き物がいます。例えば、大きな生き物の代表といえば、シロナガスクジラ。体長は約30m、重さは120トンもあります。実はもっと大きな生き物がいます。それはアメリカ・カリフォルニア州の山中に生えている、セコイアデンドロンという木です。最も高いものは約84mあり、これは30階建てのビルに相当します。

しかし、もっと大きな生き物がいるのをご存じでしょうか? 正解はキノコ。といっても、巨大なおばけキノコではありません。例えば、アメリカ・ミシガン州の広大な森に生えているキノコ。それぞれは手のひらに乗るほど小さいのですが、離れた場所に生えているキノコのDNAを調べると、すべて同じDNAを持っていました。キノコは、地面の下で「菌糸」と呼ばれる根のようなものでつながっています。つまり、1つの生き物だったわけです。その範囲は8.9㎢。東京ドームに換算すれば、約190個分の広さです。

反対に、最も小さな生き物は、肺炎の原因になるマイコプラズマという細菌。直径は約200nm。電子顕微鏡でなければ見えないほど、小さな生き物です。一方で、高温の中でも平気な生き物としては、日本の研究者が「しんかい6500」という深海探査船に乗り、インド洋で発見した超好熱メタン菌があります。122度という熱水中でも生きることができ、さらに仲間を増やすことができます。

ならば、地球上で最強の生物は何でしょう? それは、最近何かと話題になっているクマムシです。体長は1mm前後の小さな生き物ですが、下はマイナス273度、上は150度の環境でも生きることができ、宇宙のような真空状態も耐えることができます。さらに、人間なら即死するような量の放射線を浴びても大丈夫という、信じられないほど強い生き物です。とは言いながらも、仮死(乾眠)状態にならなければ、こうした環境に耐えることができません。

地球上に生き物が現れたのは、約40億年前と言われています。最初の生き物は、顕微鏡でしか見えないほどの小さな微生物。そうしたものが枝分かれし、様々に進化していったと考えられています。世界には、人間の仲間に当たる生き物が約870万種類いると考えられています。しかし、その90%以上がまだ発見されていないそうです。生き物には数多くの謎が残されたままであり、それらを1つひとつひも解いていくことが、生物学の最も面白いところです。


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