記事・レポート

みうらじゅんの物集め紀行

それでも、やっぱり、これが好き♡

更新日 : 2013年11月14日 (木)

第3章 誰にとっても嬉しくない「いやげ物」

写真:みうらじゅん(イラストレーターなど)

 
愛着とは煩悩である

みうらじゅん:  世の中にみやげ物は数多く存在します。一方で、買っても嬉しくない、貰ったらもっと嬉しくないモノが、昭和の時代にはたくさんありました。それが「いやげ物(もの)」です。

「いやげ物」を友人にあげて、目の前で捨てられたことが度々あります。平成に入った頃から、そうした辱めをなくそうという気運が高まり、キティちゃんなどが参入して、全国のみやげ物屋を均一化していきました。しかし、活気があった昭和の時代は、「誰が買うんだろう?」というモノが、店先を埋めておりました。

その1つが「ヘンジク」、変すぎる掛け軸です。どれをとっても愛着がない。そこが一番いいところです。愛着というのは、仏教的に言うと煩悩です。愛はそもそも煩悩ですから、できるだけ愛さない。買ったけれど、愛さない。ヘンジクを通して、煩悩を払うわけです。

さすがに僕も大人なので、数多く買っているうちに、これらは同じ会社で作られていることが分かってきました。同じような絵のタッチ、ラメの入れ方をしていますから、複数の会社が作っていれば、「ウチの特許が盗まれた」と、もめると思います。でも、そのような記事は新聞に載ったことはない。ということは、色々な会社が作っているように見せているけれど、実は1つの会社で作られている。気がついた上で、気がついてないフリをして買う。それがスーベニール・ゴッドのやり方です。

ヘンジク:変すぎる掛け軸

みうらじゅん:  こちらの「ヘンジク」には、ピサの斜塔や教会が描かれています。これはイタリアで買いましたが、こういうモノを彼の地では「タァペストゥリィー」と言います。こちらは、香港で買ったタァペストゥリィーです。香港にも存在しています。

こちらの「ヘンジク」は以前、友人のいとうせいこう氏と一緒に<スライドショー>というイベントを開いた時に業者に頼んで作り、お客さんに配りました。頼んでみて分かりましたが、やはり同一業者でした。

全体的にラメが多用されていますが、当然このラメは落ちます。後日、「不快な気持ちになった」というお叱りの言葉もたくさん受けました。独身の方の場合、彼女が遊びに来た時、部屋にラメが落ちていたら、「誰か来たの?」などと疑われると思います。そういう時に、複雑にもめたりしないかなと思って、ラメは通常よりも増量でお願いしました。