記事・レポート

みうらじゅんの物集め紀行

それでも、やっぱり、これが好き♡

更新日 : 2013年11月12日 (火)

第2章 「スーベニール・ゴッド」のルール

写真:みうらじゅん(イラストレーターなど)

 
欲しいと思ったモノは買わない

みうらじゅん:  みなさんも観光地に行かれると思いますが、僕の場合、メインは観光地ではなく、「みやげ物屋」です。観光地に行くと、みやげ物屋でだいたいのことを想像して、そのまま家に帰る。素人は、目的地に行く前にみやげ物屋をのぞいて、おもしろそうなモノを見つけてから目的地に行き、戻ってきた時には「やっぱりいらないや」という現象が起こります。

自分が「いらないや」と思う前に買ってしまうのが、スーベニール・ゴッド(みやげ物の神)のルールです。自分では確実にスーベニール・ゴッドだと思ってやっておりますが、一期一会で見た瞬間に始末する。反対に欲しいと思ったモノは、あえて買わない。それも何十年と続けてきております。

みやげ物屋でパッと見て、「こんなもん、誰が買うんだろう?」と思ったのと同時に、食いつく。「こんなもん、誰が買うんだろう? …って、オレが買うんだ!」と。その訓練を繰り返してきました。世の中では「洗脳」と言われるものですが、他人を洗脳することはできても、自分を洗脳するのは意外と難しい。本日はそのコツを、皆さんにお教えしたいと思います。

あえて、ほめてみる

みうらじゅん:  当然ながら、僕も常識人なので、買った後は「しまった」と思います。ラメがボロボロと剥がれ落ちるモノ、木くずが絨毯に入り込むモノ、とてもイヤです。イヤでイヤでしかたがないけれども、それも神の宿命である。

世間ではそうしたものを「ムダなモノ」と呼びますが、「ならば、ムダではないモノとは何なんだ?」と、自分に問うのです。考えてもあまりよく分からない。ボーッとしてきます。そして最後は、価値がなくてもいいじゃないか、となる。「グラスの底に顔があっても、いいじゃないか!」と、岡本太郎という人は言っていましたが、別に誰も悪いとは言っていません。一人で自己完結する、一人ボケツッコミが岡本流です。僕の場合は、「誰が買うんだろう? …って、オレが買うんだ!」がそれです。

いらないなと思っていたモノさえも、眺めているうちに、だんだんと愛らしくなってきます。全体ではまったくいいとは思えないけれど、「ここがいいよね」と細かい部分を褒めたくなる。できれば、声に出して言うことをお勧めします。声に出すと、耳から音として入るので、脳が「そうかなあ」と一瞬、勘違いします。人間の脳は真面目なので、いらないモノ、変なモノに対して、通常は拒絶反応を起こします。声に出すことで脳を困らせていく。1つの修業です。