記事・レポート
WANTED! 求むリーダー
~リーダーシップの本質を明らかにする本を紹介します~
カフェブレイクブックトーク
更新日 : 2012年10月22日
(月)
第3章 MBA的リーダーシップ論
澁川雅俊: 『アントレ・リーダーの「情熱」仕事術:起業家精神でチームを導く』(デイヴ・ラムジー)のカバーにこんな文言が書かれていました。「『リーダーシップセミナー』や『マネジメント講座』からは真のビジネス・リーダーは生まれない。お上品なリーダー論では組織の統率など不可能だ。」と。この挑発的なステートメントの適否は別として、このテーマでのブックトークではやはり経営学におけるリーダーシップ論を中心に据えなければなりません。
その場合はやはり『ドラッカーはなぜ、マネジメントを発明したのか』(ジャック・ビーティ)から始めなければなりません。この本はいまから15年も前に出された本の再版ですが、著者は標題に掲げた問いにこう応えています。「今日が明日を創り出す。明日起こることは決して偶然の産物ではない。ドラッカーはモノや金の動きではなく人を見た。世界を変える『知の探究』が、そこから始まった。」と。
六本木ライブラリーには現在40点ほどのドラッカー本がありますが、ここでは他に『世界一やさしいドラッカーの教科書』(浅沼宏和)、『チェンジ・リーダーの条件』(上田惇生翻訳)、『ドラッカー365の金言』(上田惇生訳)の3点だけ取り上げておきます。
(六本木ライブラリー所蔵の)『チェンジ・リーダーの条件』は、10年以上前に出された本の26刷、『ドラッカー365の金言』は9刷です。くり返し出され、多くのビジネスマンに読まれた本です。『世界一やさしいドラッカーの教科書』はそれほど深くないにしても、かつてドラッカーの経営論を読みあさった人たちが30分でその核心を思い出すのに便利かもしれません。
学問としてのリーダーシップ論を代表するかどうかを判断する力をもっていませんが、ここでは『リーダーシップ論<第2版>』(ジョン・P・コッター)と『ハーバード流ボス養成講座』(リンダ・A・ヒル 、ケント・ラインバック)を取り上げます。
コッターはハーバード・ビジネススクールの教授で、リーダーシップ論の第一人者と認められています。本書は同校での講義や各所で行った講演のアンソロジーで、10年以上前の初版に、その後発表された論文や講演を加えて再編集・翻訳したものです。大学院レベルでのリーダーシップ論の教科書的な著作と評されているようです。
マネジメントとリーダーシップはどう違うのか、という私の素朴な疑問をこの本は——リーダーシップとマネジメントは複雑なビジネス環境では共に不可欠なもので、相互に補完関係にある。複雑な状況にうまく対応するのがマネジメントの役割であるのに対し、リーダーシップの役割は変化にうまく対応すること。したがって、新しい環境に適応してビジネスを成功に導くために変革が必要となれば、リーダーの力量が問われることになる、とわかりやすく解き明かしてくれました。
ヒルとラインバックもリーダーシップ研究とその教育にかかわってきた人物です。この本の原題は‘Being the Boss’で、<ボス>はリーダーであるはずですが、本筋はマネジャーの在り方を論じています。そして「自分をマネジメントする」、「人脈をマネジメントする」、「チームをマネジメントする」という3つの課題を日常業務に落とし込んで具体的に論じています。
ヒルとラインバックのほかにこのトピックの本としては、『管理職の心得』(大島洋)、『プレイング・マネジャー最強の仕事術』(高島健二)、『忠誠心、このやっかいな美徳』(エリック・フェルテン)があります。
大島は、企業のトップではなく、中間管理職クラスの人々のリーダーシップを論じていますが、その限りにおいてリーダーシップは、マネジャー一人ひとりの覚悟の問題であり、同時に他者との関係の問題であり、またそれらの人々を通じての組織体との関係の問題だと規定し、それらの視点でリーダーの能力を立体的に鍛える方法論を展開しています。マネジメントとリーダーシップの初歩的な理解を進める、非常に良いテキストです。
コンサルタント会社の現役のマネジャーの高島は、自らが行った経営診断の実績を踏まえて、成功するマネジャーの要件を導き出し、興味深い主張を行っています。すなわち、企業の伸張にリーダーシップは確かに重要だが、リーダーを支える部下のフォロワーシップも等しく重要だ、と。この主張は日本のビジネスマンにはウケるのではないでしょうか。
その<リーダーを支える部下のフォロワーシップ>とのかかわりで、フェルテンの「忠誠心」が気になりました。本書ではそれを、報いを期待せずにわが身を捧げることと規定し、歴史的事件や思想・宗教や文学・映画作品を分析しています。美徳ではあるが厄介で一筋縄でいかない質性を念頭に置きながら、さまざまな局面での忠誠心とリーダーシップを議論していて一読に値します。
その場合はやはり『ドラッカーはなぜ、マネジメントを発明したのか』(ジャック・ビーティ)から始めなければなりません。この本はいまから15年も前に出された本の再版ですが、著者は標題に掲げた問いにこう応えています。「今日が明日を創り出す。明日起こることは決して偶然の産物ではない。ドラッカーはモノや金の動きではなく人を見た。世界を変える『知の探究』が、そこから始まった。」と。
六本木ライブラリーには現在40点ほどのドラッカー本がありますが、ここでは他に『世界一やさしいドラッカーの教科書』(浅沼宏和)、『チェンジ・リーダーの条件』(上田惇生翻訳)、『ドラッカー365の金言』(上田惇生訳)の3点だけ取り上げておきます。
(六本木ライブラリー所蔵の)『チェンジ・リーダーの条件』は、10年以上前に出された本の26刷、『ドラッカー365の金言』は9刷です。くり返し出され、多くのビジネスマンに読まれた本です。『世界一やさしいドラッカーの教科書』はそれほど深くないにしても、かつてドラッカーの経営論を読みあさった人たちが30分でその核心を思い出すのに便利かもしれません。
学問としてのリーダーシップ論を代表するかどうかを判断する力をもっていませんが、ここでは『リーダーシップ論<第2版>』(ジョン・P・コッター)と『ハーバード流ボス養成講座』(リンダ・A・ヒル 、ケント・ラインバック)を取り上げます。
コッターはハーバード・ビジネススクールの教授で、リーダーシップ論の第一人者と認められています。本書は同校での講義や各所で行った講演のアンソロジーで、10年以上前の初版に、その後発表された論文や講演を加えて再編集・翻訳したものです。大学院レベルでのリーダーシップ論の教科書的な著作と評されているようです。
マネジメントとリーダーシップはどう違うのか、という私の素朴な疑問をこの本は——リーダーシップとマネジメントは複雑なビジネス環境では共に不可欠なもので、相互に補完関係にある。複雑な状況にうまく対応するのがマネジメントの役割であるのに対し、リーダーシップの役割は変化にうまく対応すること。したがって、新しい環境に適応してビジネスを成功に導くために変革が必要となれば、リーダーの力量が問われることになる、とわかりやすく解き明かしてくれました。
ヒルとラインバックもリーダーシップ研究とその教育にかかわってきた人物です。この本の原題は‘Being the Boss’で、<ボス>はリーダーであるはずですが、本筋はマネジャーの在り方を論じています。そして「自分をマネジメントする」、「人脈をマネジメントする」、「チームをマネジメントする」という3つの課題を日常業務に落とし込んで具体的に論じています。
【マネジャーVSリーダー】
ヒルとラインバックのほかにこのトピックの本としては、『管理職の心得』(大島洋)、『プレイング・マネジャー最強の仕事術』(高島健二)、『忠誠心、このやっかいな美徳』(エリック・フェルテン)があります。
大島は、企業のトップではなく、中間管理職クラスの人々のリーダーシップを論じていますが、その限りにおいてリーダーシップは、マネジャー一人ひとりの覚悟の問題であり、同時に他者との関係の問題であり、またそれらの人々を通じての組織体との関係の問題だと規定し、それらの視点でリーダーの能力を立体的に鍛える方法論を展開しています。マネジメントとリーダーシップの初歩的な理解を進める、非常に良いテキストです。
コンサルタント会社の現役のマネジャーの高島は、自らが行った経営診断の実績を踏まえて、成功するマネジャーの要件を導き出し、興味深い主張を行っています。すなわち、企業の伸張にリーダーシップは確かに重要だが、リーダーを支える部下のフォロワーシップも等しく重要だ、と。この主張は日本のビジネスマンにはウケるのではないでしょうか。
その<リーダーを支える部下のフォロワーシップ>とのかかわりで、フェルテンの「忠誠心」が気になりました。本書ではそれを、報いを期待せずにわが身を捧げることと規定し、歴史的事件や思想・宗教や文学・映画作品を分析しています。美徳ではあるが厄介で一筋縄でいかない質性を念頭に置きながら、さまざまな局面での忠誠心とリーダーシップを議論していて一読に値します。
WANTED! 求むリーダー インデックス
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第1章 辛いものだよ、リーダーは
2012年10月18日 (木)
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第2章 経営は哲学だ!
2012年10月19日 (金)
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第3章 MBA的リーダーシップ論
2012年10月22日 (月)
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第4章 ‘本当の’リーダー?
2012年10月23日 (火)
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第5章 目配り・気配りのリーダーシップ論
2012年10月25日 (木)
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第6章 ‘現場’的リーダーシップ論
2012年10月26日 (金)
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