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無料で学べる「オープンエデュケーション」がもたらす人材革命

~ウェブで教育の機会が世界に開かれる意味:飯吉透×石倉洋子~

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更新日 : 2012年08月07日 (火)

第4章 高等教育もロングテール化が必要~日本の大学の崩壊は近い~

飯吉透(京都大学 高等教育研究開発推進センター 教授)

飯吉透: グローバル化、フラット化する世界において、さまざまなものがSupply-PushからDemand-Pullに変わりました。「流通・販売」は小売店からオンラインストアへ、「メディア」はマスメディアからパーソナルメディアへ、「広告」はマスメディアからネット検索付帯へ。しかし「教育」の分野だけは、いまだに大量生産的・画一的な知識や技術の習得が中心です。

業種の移り替わりが激しく安定感がなくなっている今、大学で4年間学んだら、後は知識を補充しなくても大丈夫なんてあり得ないですよね。「働いていた工場が海外に移転してしまった。仕事がなくなった、どうしよう。もう歳なのに……」みたいな状況で、やはり教育が自分を再起動するための糧になるはずというか、糧にならなければいけないのです。

こうした教育に対する需要は、時も場所もみんなバラバラなので、「今ある学校に通いなさい」ではダメなのです。個人の興味、能力、必要に応じたオンデマンドな形で教育を提供していく必要があります。例えるなら、日本で3人しか欲しい人がいない本が手に入るアマゾンのような高等教育システム、つまり「高等教育のロングテール化」が必要です。

最近日本では、大学崩壊の話がいろいろ出ていますが、「壊れるものは壊れてしまえばいい」というのが僕の持論です。こんなことを言えるのは、壊れた先には、一人ひとりの無限の可能性のための次世代の教育環境=オープンエデュケーションという明るい未来が待っていると信じているからです。

これだけいい教材がオープンエデュケーションであるのだから、もう先生は要らないという発想もできますよね。実際、ブリガム・ヤング大学というハイレベルの大学では、そこそこのレベルの先生を雇うより、賢い学生にリーダーシップを取らせて学生同士で勉強した方がパフォーマンスが上がる、という実証結果が出ています。

最近では「Open Study」というオンラインの学習コミュニティが登場していて、オープンエデュケーションの教材と組み合わせることで自学自習がやりやすくなっています。わからないところを質問すると答えてくれるし、自分と同じようなことを勉強している人とコンタクトすることもできます。オンラインで世界中の学生たちが、互いに助け合って学んでいるのです。 http://openstudy.com/

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関連書籍

『ウェブで学ぶ~オープンエデュケーションと知の革命~』


『ウェブで学ぶ~オープンエデュケーションと知の革命~』


梅田望夫,飯吉透
筑摩書房

『グローバルキャリア~ユニークな自分のみつけ方~』

石倉洋子
東洋経済新報社

『世界級キャリアのつくり方』

黒川清,石倉洋子
東洋経済新報社


該当講座

オープンエデュケーションがもたらす人材革命

~ウェブによって世界中の人々に教育の機会が開かれる意味~

オープンエデュケーションがもたらす人材革命
飯吉透 (京都大学 高等教育研究開発推進センター 教授)
石倉洋子 (一橋大学名誉教授)

飯吉 透(京都大学 高等教育研究開発推進センター 教授)
石倉 洋子(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 教授)
全世界に広がるオープンエデュケーションを巡る動きを解説し、これからの教育、個人のキャリア構築がどのように影響を受けるのかを考察します。また、グローバル人材の育成が急務と言われる中、日本人はオープンエデュケーションを具体的にどのように活用していけばいいのか、議論します。


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