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「キュレーター」がメディアとビジネスとイノベーションを変える

田中洋×津田大介×勝見明に学ぶ、キュレーション術

BIZセミナーマーケティング・PR教養
更新日 : 2012年05月29日 (火)

第6章 キュレーションの3プロセス~これでiPadの誕生も紐解ける~


勝見明氏

勝見明: 自分なりに、キュレーションのプロセスを考えてみました。


【1.再定義のプロセス】
やはり最初は、自分たちのあり方や情報など、既存の概念を問い直すことだと思います。

【2.新しい編集のプロセス】
次に、要素を選択し、絞り込み、結びつける。これはつまり編集ですが、新しいものを生み出すという意味で「新しい編集のプロセス」と考えました。

【3.創発のプロセス】
こうして、新しい意味や文脈や価値を生成するのです。創発というのは各部分の単なる総和ではなく、全体としてそれを超える新しい性質が生まれることをいいます。例えばアリ塚です。アリ塚は一粒一粒の砂から成っていますが、全体として砂の総和を超える性質を持っています。


このように考えると、iPadはキュレイテッド・コンピューティングに見えてくるんです。「Think different.」という想いのもとに、タブレット・コンピュータの概念を問い直し、「ノートPCでもなく、スマートフォンでもない第3のカテゴリー」と再定義し、何でもできるパソコンとは違い、機能を徹底的に絞り込むことで、はるかにいいものをつくり出しました。絞り込んだことで、使いやすさという新しい価値が生まれたのです。つまり、スティーブ・ジョブズがやったことは、まさにキュレーションだったのです。

では、なぜ今、キュレーションが注目されているのでしょうか? 20世紀は、基本的につくり手サイドから「より多く・より高い価値」を追求する時代でした。その結果、すべてにおいて過剰や細分化が生じました。これがインターネットの情報の世界では、短期間に一気に起きたのです。21世紀はユーザーサイドから「より善い・より適した価値」を追求する時代です。その転換に必要なのがキュレーションという発想なのではないでしょうか。

だとすれば、クリエイティビティに結びつくあらゆる行為——編集、プロデュース、デザイン、コンセプトメイキング、プランニング、アーキテクチャ、プロダクトディベロップメント等など——全てにおいてキュレーション的な発想が必要です。だから今、ネットメディアだけでなく、リアルな世界の我々も、知のキュレーションを求められているのです。

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スティーブン・ローゼンバウム【著】田中洋【監訳・解説】野田牧人【訳】
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該当講座

「キュレーター」がメディア、マーケティング、イノベーションの未来を変える
田中洋 (中央大学大学院ビジネススクール 教授 )
勝見明 (ジャーナリスト)
津田大介 (ジャーナリスト/メディア・アクティビスト)

田中 洋(中央大学ビジネススクール教授)
勝見 明(ジャーナリスト)
津田 大介(ジャーナリスト/メディア・アクティビスト)
コンテンツ不足の時代からコンテンツ過剰の時代にシフトしている世界で、情報の海のなかから収集し、選別し、編集し、「意味」を与える「キュレーター」が注目されています。本講座では、新しい概念である「キュレーション」について考察します。


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