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伊勢谷友介とリバースプロジェクト その理念と実践に迫る

人類が地球に生き残るために、どうするべきか?

環境
更新日 : 2012年03月23日 (金)

第2章 人類が地球に生き残るためのプロジェクト

伊勢谷友介氏

片岡真実: 伊勢谷さんは東日本大震災の前から、地球の環境や未来を考える「REBIRTH PROJECT(リバースプロジェクト)」という活動をされていましたよね。はじめたきっかけや、どんなことをしているのか教えていただけますか。

伊勢谷友介: 僕は25歳のときに、自分が持つテーマを人に伝える手段として映画を選び、撮りました。でも映画って、結局全部フィクションなんです。映画は芸術としては最高峰だと思いますけど、事実じゃない。そこに伝わり方の弱さを感じてしまったんです。だったらテーマを作品で表現するのと同時に、実際の社会の中で行動すれば、人に訴えかける力が強くなるんじゃないかと思ったんです。それがリバースプロジェクトをはじめたきっかけです。

僕のテーマは「人類が地球に生き残ること」なんですよ。僕らの世代だけでなく、未来永劫、ずっと人間が存在し続けていくために、生きている人たちは常に考えて行動しなければならないと思うんです。だからリバースプロジェクトでは「人類が地球に生き残るためのプロジェクト」をやっています。

組織としては株式会社です。会社にしたのは「地球に人類を存続させていくには、活動に継続性がなければいけない。現代は資本主義社会だから、この社会の中で継続性を保つためには株式会社という方法が適している」と考えたからです。だから株式会社は単なる方法であって、目的ではありません。目的は人類が地球に生き残ること。リバースプロジェクトはそのすべての活動が、その目的につながっている株式会社です。

今は、衣《HATCH YOU(ハッチ・ユー)》・食《HOUSE475(ハウス475)》・住《THE SPIKE SHOW(ザ・スパイクショー)》という3つの活動を展開しています。この3つは「人が生きるときに絶対必要なものを補完しておく必要があるんじゃないか。それが実際的に生きる強さになっていくはずだ」という考えから生まれたものです。

片岡真実: では、具体的にどんな活動をやってこられたのか、いくつか紹介していただけますか。

伊勢谷友介: 最初にやったのは、住の《THE SPIKE SHOW》ですね。日本の家は20~30年に1度ぐらいのペースで建て替えられて、そのたびに90%以上が廃材として処分されるそうです。僕らはその廃材を持ち帰って作品をつくり、家が取り壊されて更地になったら作品を持って戻ってきて展示して、新しい建物を建てる建築業者が入る前に撤収していなくなる、というパフォーマンスをやりました。

環境に負荷をかけないようにしつつ、かつ、無駄なものから価値をつくる——アーティストとして社会に貢献できる形というものを、このパフォーマンスで提案しました。

片岡真実: 価値がなくなっているものや、価値がなくなりつつあるものに、新しく別の価値を与えるというのは、現代アートの本質的なところだと思います。そういう意識を喚起した一番有名な作品は、現代アートの父といわれるマルセル・デュシャンの《泉》です。少し前まで森美術館の「フレンチ・ウィンドウ展」で展示していたのですが、彼は男性用の便器の向きを変えて美術館の台座に乗せることで、芸術という価値を与えたんです。こういう作品から、あらゆるものに別の価値を与えていくことが現代アートの中心的な活動になっていったので、伊勢谷さんの活動は本当にそれにつながっていると思います。

伊勢谷友介: そんなふうに言っていただけると、うれしいですね。

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  六本木アートカレッジ「人類が地球に生き残るために、どうするべきか?」

俳優、映画監督、美術家の伊勢谷友介氏は、「人類が地球に生き残るために何かできるのか」をテーマに、 主宰する「REBIRTH PROJECT」でさまざまなプロジェクトを展開してきました。特に、3.11東日本大震災以 降は精力的に活動を広げています。それは未来にとってどんな可能性を持っているのか、私たちは日常的 にどんな心構えが必要なのか?森美術館チーフ・キュレーターの片岡真実氏との対談で、アートもビジネス も社会問題も一体となって考える、広い視点から見た未来について語ります。