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伊勢谷友介とリバースプロジェクト その理念と実践に迫る

人類が地球に生き残るために、どうするべきか?

環境
更新日 : 2012年03月29日 (木)

第5章 3.11で問われたリバースプロジェクトの真価

片岡真実(左)伊勢谷友介氏(右)

片岡真実:  3.11の直後から、新しいプロジェクトをはじめていましたよね。これについても教えていただけますか。

伊勢谷友介: 「人類が地球に生き残る」ために、神様というか、人間ではない存在がやるとすれば、人間の数を減らすという方法があります。それをやった人間がいて、ヒトラーです。でも彼は恨みしか残しませんでした。それを僕は現代に生きる人間として知っています。人が死んで数が減ることは物理的に考えるといいんですけれど、人道的に考えると絶対にダメだということも知っています。どんなに物理的によくても、それはしちゃいけないというのが人間のルールです。

助けたい——でもそれには確固たる理由がほしくて、探ったんです。それで僕が思ったのは、現代に生きる人が地球上に生き残れるようにするということは、なるべく多くの人を生かす方法を知恵を絞って考えるということで、それは価値のあることだと考えました。ただ東日本大震災では、原発の爆発もあって動揺したし、自分の身の安全もわからない状態になって、逃げるという選択も一瞬頭をよぎったんですけれど、リバースプロジェクトの目的を考えたら「それはダメだ、やろう!」と思いました。

まずはツイッターで被災地の叫びを集めて、炊き出しや水の供給場所の情報を精査して拡散しました。「誰々がいなくなった」「見つかりました」という情報も。三日三晩ほとんど寝ずにコンピュータの前で泣いたり、笑ったり、怒ったりしていました。

片岡真実: それから具体的なアクションに乗り出したわけですね。

伊勢谷友介: そうです。最初はお米の支援でした。「RICE475(ライス475)」のメンバーが「僕ら米屋なんで、お米なら集められると思います」と言ってきてくれたんです。それでリバースプロジェクト側で呼びかけて、会津の運送会社さんと組んで、お米を3トンぐらい被災地に送りました。

それと同時に個人支援物資の活動もはじめました。J-WAVEのナビゲーターをしている丹羽順子さんと、ウインローダーさんという物流業者と、J-WAVEさんの協力を得て、最終的に150トンの個人物資を仕分けして、被災地に送ることができました。

片岡真実: そうした活動が発展して「元気玉プロジェクト」というのにつながっていったんですね。

伊勢谷友介: はい。「元気玉プロジェクト」というのは……『ドラゴンボール』というマンガの主人公の必殺技「元気玉」ってご存じですか? 孫悟空という主人公が自分一人じゃ倒せない敵を倒すときに、みんなに「ちょっとずつパワーを貸してくれ!」と言ってパワーを集めて、でっかい玉にして敵にぶつけるんです。これを僕は、現実社会でやれるんじゃないかと思ったんですよ。

プロジェクトの仕組みは、誰でもいいので自分がやりたいアイディアがあったら、サイトで世の中の人にプレゼンテーションするんです。それに共感した人は、アイディアを実行するための活動資金を支援するわけです。数百円とか、そういう少ない額から支援できます。

実際にどんなことをやったかというと、例えば、ホットスポット問題で卒業式ができなかった福島県飯舘村の幼稚園と小学校の子供たちに、クリスマスに卒業式をプレゼントするプロジェクト。これはただの卒業式じゃなくて、離ればなれになってしまったコミュニティのみんなに集まってもらって、「別々になっても頑張っていこう。いつかまた同じ場所に戻ってこよう」という想いを高めてもらうための大事な時間なんです。

片岡真実: 3月にできなかった卒業式を、12月25日にクリスマスのプレゼントとして開催するための資金を集めたんですね。

伊勢谷友介: はい。(※卒業式は2011年12月25日に無事に開催)

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  六本木アートカレッジ「人類が地球に生き残るために、どうするべきか?」

俳優、映画監督、美術家の伊勢谷友介氏は、「人類が地球に生き残るために何かできるのか」をテーマに、 主宰する「REBIRTH PROJECT」でさまざまなプロジェクトを展開してきました。特に、3.11東日本大震災以 降は精力的に活動を広げています。それは未来にとってどんな可能性を持っているのか、私たちは日常的 にどんな心構えが必要なのか?森美術館チーフ・キュレーターの片岡真実氏との対談で、アートもビジネス も社会問題も一体となって考える、広い視点から見た未来について語ります。