記事・レポート
東日本大震災復興チャリティーセミナー
新しいニッポンを創るために!
アカデミーヒルズセミナー政治・経済・国際文化教養
更新日 : 2011年06月14日
(火)
第8章 電力会社はなければ困る。でも、東電である必要はない
竹中平蔵: 政治についても議論のポイントを整理しておきます。皆さんは大連立に賛成ですか、それとも反対ですか?(※会場に賛成・反対を挙手で示してもらう)——1:3ぐらいで反対の方が多いですね。
私が思うに、与党はこういうときこそ責任与党としての、まさに責任を果たさなければいけません。野党は建設的な野党として対案を出して、賛成すべきは賛成し、反対すべきは反対し、やはり野党としての責任を果たさなければいけません。「大変だから大連立する」というのは原理原則に反します。
さらに原理原則から見ておかしいのは、「こういう状況だから選挙はできない、やるべきじゃない」という意見です。衆議院選挙の選挙期間は、たったの12日間です。しかもその間も総理大臣はいるんです、大臣もいるんです。やるべきことがあるなら、総理大臣と大臣は選挙運動をしなければいいじゃないですか。思考停止状態になって「このままいかなければいけない」というのはおかしいと思います。「本当に大変なときにこそ原理原則で国民の声を聞く」という選択もあっていいと思うのです。先ほどの復興税ではありませんが、私たちが情緒的な対応をしないことが重要です。私たちが国民としてできることは、自分たちの将来を傷つけないような選択をすることだと思います。
米倉誠一郎: きょうは原理原則ということを改めて思い知らされました。僕は流されやすい体質なもので、つい流されておりました(笑)。大きな政府でいくのか小さな政府でいくのか、日本を道州制にするのかしないのか、TPPに参加するのかしないのか、消費税をどうするのかなど、そういう政策論を政治家からは聞きたいものです。
竹中平蔵: 最後に、敢えて電力について問題提起をしたいと思います。(今日の会場の)六本木ヒルズが電力を東電に売っているということはご存知でしょうか。これは電力の自由化をしたからです。電力の自由化に一番反対したのは東電でした。あのときもっといろいろな所に電源をつくっていれば、計画停電なんてしなくて済んだかもしれません。圧倒的な力を持っている東電に対する批判というのは弱いと言わざるを得ません。
東電が今後どうなるかは賠償がどのぐらいになるかによりますが、債務超過になる可能性が私はあると思います。そのとき必ず次のような議論が出てきます。「東電をグッドとバッドに分けよう。そしてグッドはちゃんとやって、バッドには国のお金を入れて、場合によっては基金を国でつくって引き取ろう」と。これは結局何かというと、東電生き残り論です。東電はグッドとして残るんです。「そんなことを言ったって、電力会社がなければ困るじゃないか」という意見が必ず出ます。そうです、電力会社はなければ困ります。でも、東電がなくても私たちは困りません。別に東電である必要はないんです。
私は足利銀行方式でやる必要があると思います。ちゃんとデューデリをやって、債務超過になるなら一時国有化して、いいところを売ればいい。それは関電が買ってもいいし、商事会社が買ってもいい、どこが買っても構いません。私たちには電力会社は必要です。しかし特定の会社は必要ありません。今後必ず議論が出てきますが、東電の救済策というのは原理原則にかかわる部分です。
米倉誠一郎: 同感です。電電公社のときも「困る」と言っていましたが、今ではたくさんの人がiPhoneを使っていますよね。電話会社はなくちゃ困るけれど、ソフトバンクだって全く問題なかったわけです。電力会社もそれと同じ。基本電力系統は安定が大事ですから、3会社ぐらい要るかもしれません。
竹中平蔵: ヨーロッパは発電と送電を全て別会社にしました。あのフランスですら別にしたんです。イギリスは大量のリストラをやりました。こうしたきちんとしたことを日本でもやっていただこうではありませんか。
米倉誠一郎: 最後に1つだけ。イノベーション・セオリーでいうと、松下幸之助がいいことを言っています。「3%のコストダウンは難しいけれど、30%ならできる」と。このインプリケーションはすごく大事です。イノベーションをやろうという人は簡単にあきらめてほしくない。そうじゃないと、日本は決して世界からうらやましがられる国にはなれません。
竹中平蔵: 私たち一人ひとりができることを、改めてしっかり考えながら、前に進んでいきましょう。(終)
私が思うに、与党はこういうときこそ責任与党としての、まさに責任を果たさなければいけません。野党は建設的な野党として対案を出して、賛成すべきは賛成し、反対すべきは反対し、やはり野党としての責任を果たさなければいけません。「大変だから大連立する」というのは原理原則に反します。
さらに原理原則から見ておかしいのは、「こういう状況だから選挙はできない、やるべきじゃない」という意見です。衆議院選挙の選挙期間は、たったの12日間です。しかもその間も総理大臣はいるんです、大臣もいるんです。やるべきことがあるなら、総理大臣と大臣は選挙運動をしなければいいじゃないですか。思考停止状態になって「このままいかなければいけない」というのはおかしいと思います。「本当に大変なときにこそ原理原則で国民の声を聞く」という選択もあっていいと思うのです。先ほどの復興税ではありませんが、私たちが情緒的な対応をしないことが重要です。私たちが国民としてできることは、自分たちの将来を傷つけないような選択をすることだと思います。
米倉誠一郎: きょうは原理原則ということを改めて思い知らされました。僕は流されやすい体質なもので、つい流されておりました(笑)。大きな政府でいくのか小さな政府でいくのか、日本を道州制にするのかしないのか、TPPに参加するのかしないのか、消費税をどうするのかなど、そういう政策論を政治家からは聞きたいものです。
竹中平蔵: 最後に、敢えて電力について問題提起をしたいと思います。(今日の会場の)六本木ヒルズが電力を東電に売っているということはご存知でしょうか。これは電力の自由化をしたからです。電力の自由化に一番反対したのは東電でした。あのときもっといろいろな所に電源をつくっていれば、計画停電なんてしなくて済んだかもしれません。圧倒的な力を持っている東電に対する批判というのは弱いと言わざるを得ません。
東電が今後どうなるかは賠償がどのぐらいになるかによりますが、債務超過になる可能性が私はあると思います。そのとき必ず次のような議論が出てきます。「東電をグッドとバッドに分けよう。そしてグッドはちゃんとやって、バッドには国のお金を入れて、場合によっては基金を国でつくって引き取ろう」と。これは結局何かというと、東電生き残り論です。東電はグッドとして残るんです。「そんなことを言ったって、電力会社がなければ困るじゃないか」という意見が必ず出ます。そうです、電力会社はなければ困ります。でも、東電がなくても私たちは困りません。別に東電である必要はないんです。
私は足利銀行方式でやる必要があると思います。ちゃんとデューデリをやって、債務超過になるなら一時国有化して、いいところを売ればいい。それは関電が買ってもいいし、商事会社が買ってもいい、どこが買っても構いません。私たちには電力会社は必要です。しかし特定の会社は必要ありません。今後必ず議論が出てきますが、東電の救済策というのは原理原則にかかわる部分です。
米倉誠一郎: 同感です。電電公社のときも「困る」と言っていましたが、今ではたくさんの人がiPhoneを使っていますよね。電話会社はなくちゃ困るけれど、ソフトバンクだって全く問題なかったわけです。電力会社もそれと同じ。基本電力系統は安定が大事ですから、3会社ぐらい要るかもしれません。
竹中平蔵: ヨーロッパは発電と送電を全て別会社にしました。あのフランスですら別にしたんです。イギリスは大量のリストラをやりました。こうしたきちんとしたことを日本でもやっていただこうではありませんか。
米倉誠一郎: 最後に1つだけ。イノベーション・セオリーでいうと、松下幸之助がいいことを言っています。「3%のコストダウンは難しいけれど、30%ならできる」と。このインプリケーションはすごく大事です。イノベーションをやろうという人は簡単にあきらめてほしくない。そうじゃないと、日本は決して世界からうらやましがられる国にはなれません。
竹中平蔵: 私たち一人ひとりができることを、改めてしっかり考えながら、前に進んでいきましょう。(終)
※本セミナーの受講料は被災地の図書館の復興に役立ててもらうため、「財団法人図書館振興財団」に全額寄付いたします。アカデミーヒルズでは、今後もさまざまな活動を通じてこの財団に1年間寄付を続けていく予定です。
東日本大震災復興チャリティーセミナー インデックス
-
第1章 今こそTPP、エコタウン、道州制の実現を!
2011年06月02日 (木)
-
第2章 原理原則に反する「復興税」には反対です
2011年06月03日 (金)
-
第3章 3つの政策で脱原発・脱炭素社会のリーダーに
2011年06月06日 (月)
-
第4章 既存企業を超えて、若者が日本をひっくり返すチャンス!
2011年06月07日 (火)
-
第5章 経団連の善意「法人税引き下げ見送り」は自粛同様に罪が深い
2011年06月09日 (木)
-
第6章 ここで中国にとられる程度のモノなら、事業から手を引くこと
2011年06月10日 (金)
-
第7章 役所の縦割り権限を排除しなければ、復旧・復興・改革はできない
2011年06月13日 (月)
-
第8章 電力会社はなければ困る。でも、東電である必要はない
2011年06月14日 (火)
該当講座
アカデミーヒルズセミナー 東日本大震災復興チャリティー
新しいニッポンを創るために!
竹中平蔵(アカデミーヒルズ理事長/慶應義塾大学)米倉誠一郎(日本元気塾塾長/一橋大学)
アカデミーヒルズセミナー東日本大震災復興チャリティー「新しいニッポンを創るために」では、この度の震災から日本が復興し、進むべき方向、そして新しい日本を創るためには、我々は何をしなければならないのか、について考えます。またセミナーの収益は被災地復興のために寄付する予定です。
アカデミーヒルズセミナー
政治・経済・国際 文化 教養
注目の記事
-
11月26日 (火) 更新
本から「いま」が見えてくる新刊10選 ~2024年11月~
毎日出版されるたくさんの本を眺めていると、世の中の”いま”が見えてくる。新刊書籍の中から、今知っておきたいテーマを扱った10冊の本を紹介しま....
-
11月26日 (火) 更新
メタバースは私たちの「学び」に何をもたらす?<イベントレポート>
メタバースだからこそ得られる創造的な学びとは?N高、S高を展開する角川ドワンゴ学園の佐藤将大さんと、『メタバース進化論』を出版されたバーチャ....
-
11月20日 (水) 更新
aiaiのなんか気になる社会のこと
「aiaiのなんか気になる社会のこと」は、「社会課題」よりもっと手前の「ちょっと気になる社会のこと」に目を向けながら、一市民としての視点や選....
現在募集中のイベント
-
開催日 : 01月30日 (木) 19:00~20:30
note × academyhills
メディアプラットフォームnoteとのコラボイベント第2回。映画『ビリギャル』の主人公のモデルで教育家として活動する小林さやかさんと、元陸上選....
小林さやかと為末大が語る『人間の学び・成長のプロセスとマインドセット』