記事・レポート
マーケティング・クリエイティブ最前線「宝島社の女性誌マーケティング」
~出版の概念を覆すマーケティング戦略で部数はまだ伸びる~
更新日 : 2011年01月27日
(木)
第6章 マーケティングの3大ポイント
桜田圭子: マーケティングのポイントは、大きく分けて3つあると考えています。まず1つは「雑誌のライバルは雑誌ではない」ということです。今、雑誌を定期的に読んでいらっしゃる方というのは、それほど多くないと思います。いま定期的に雑誌を読まれている方のみをターゲットにしていたら、他の雑誌と読者の奪い合いになってしまい、やがて市場は縮小していきます。弊社では、いま雑誌を読んでいない方を「潜在読者」としてとらえて、マーケティングを行っています。
雑誌は生活必需品とは違って嗜好品ですので、どの雑誌を選ぶかということだけでなく、買わないという選択肢も存在します。必需品の場合はいつものAという商品からBに変えるという消費行動があると思いますが、雑誌は必需品ではないので、AかBかという選択ではありません。雑誌のライバルは雑誌ではなく、女性がお金と時間をつかうすべてのものがライバルだと考えています。
弊社の雑誌読者のボリュームゾーンは20代です。となると、年齢や職業だけでターゲットを絞ってしまうと、社内の雑誌同士で読者の奪い合いをすることになってしまいますが、最近、雑誌の読まれ方が変わってきていて、最近は、いわゆる従来型の年齢や職業と言ったデモグラフィック属性ではなくライフスタイルや嗜好性をもとに、雑誌を選ばれている方が多いと感じます。全誌とも部数が伸びていますので、毎号、新しい読者を取り込んでいるのではないかと社内でも分析しています。
2つ目は「既成概念にとらわれない」ことです。出版社も企業であり、弊社では「雑誌は商品」と考えています。良いコンテンツをつくるのは大前提で、いかにして良いものであることを伝えていくかという視点が重要だと感じています。つまり、読者の求める商品として完成させていくためにマーケティング会議を行っています。業界の常識を疑って、自社の財産をもう一度見直すことが大事なのではないかと思います。
3つ目は「社内でわかりやすい目標を持つ」ことです。弊社の場合は「一番誌戦略」でした。どのような企業さんでも、部署や職種によって活動の目的や方向性が微妙に異なっていると思うのですが。編集はいいコンテンツを生み出すことが目標だったり、営業は売上を伸ばすことが目標だったり、経営は収支を改善することが目標だったり。社内でそれぞれがバラバラな目標を持って活動していると、同じ商品を扱っているにもかかわらず、それぞれのベクトルがバラバラな方向に向かっていて、なかなか企業として伸びていかないのではないかと感じます。そこに「一番誌戦略」という戦略が提示されたことで社内が1つになって同じ方向に向かって行けたのではないかと思います。
宝島社でなぜマーケティングが機能しているのかということを考えてみましたが、それはやはり企業風土が非常に大きいと思います。
まずフラットな組織ということがあげられます。例えば、役職で呼ばないというようなことを、創業時から実践しており、男女平等という点では女性社員が6割を超えています。また、タテヨコの垣根がほとんどありません。情報化・効率化も重視しており、業務を遂行するときに、みんながコストを考えながら進めていいます。また、社員の半数以上が中途採用で新卒をほとんど採用していません。商社、銀行、メーカーなどさまざまな企業から社員が入社してきているため、ベースにビジネス感覚がある上でクリエイティブな仕事をしている社員が多いのではないかと思っています。
最後に経営トップの理念ですが、社員の自発性と創意性を尊重するということを常に重視しており、非常に社員想いの経営です。これらのことが企業風土に繋がっているのではないかと考えています。私が作っている社内報は「宝」というタイトルなのですが、サブタイトルはトップから提案があり「社員は宝です」になりました。社員想いの経営があり、社員が会社のことを想っているからこそ、このような企業風土が続いているのではないかと思っています。
今日このセミナーに参加された方は、宝島社の雑誌が売れているのには、なにか秘密があるのではないかと期待されてお集まりいただいたのではないかと思いますが、特別なことをしているわけではありません。どうしたらみんなが喜ぶかを考えて、当たり前の地道なことを徹底してやり続けていくことが一番大切なことなのではないかと思っています。
雑誌は生活必需品とは違って嗜好品ですので、どの雑誌を選ぶかということだけでなく、買わないという選択肢も存在します。必需品の場合はいつものAという商品からBに変えるという消費行動があると思いますが、雑誌は必需品ではないので、AかBかという選択ではありません。雑誌のライバルは雑誌ではなく、女性がお金と時間をつかうすべてのものがライバルだと考えています。
弊社の雑誌読者のボリュームゾーンは20代です。となると、年齢や職業だけでターゲットを絞ってしまうと、社内の雑誌同士で読者の奪い合いをすることになってしまいますが、最近、雑誌の読まれ方が変わってきていて、最近は、いわゆる従来型の年齢や職業と言ったデモグラフィック属性ではなくライフスタイルや嗜好性をもとに、雑誌を選ばれている方が多いと感じます。全誌とも部数が伸びていますので、毎号、新しい読者を取り込んでいるのではないかと社内でも分析しています。
2つ目は「既成概念にとらわれない」ことです。出版社も企業であり、弊社では「雑誌は商品」と考えています。良いコンテンツをつくるのは大前提で、いかにして良いものであることを伝えていくかという視点が重要だと感じています。つまり、読者の求める商品として完成させていくためにマーケティング会議を行っています。業界の常識を疑って、自社の財産をもう一度見直すことが大事なのではないかと思います。
3つ目は「社内でわかりやすい目標を持つ」ことです。弊社の場合は「一番誌戦略」でした。どのような企業さんでも、部署や職種によって活動の目的や方向性が微妙に異なっていると思うのですが。編集はいいコンテンツを生み出すことが目標だったり、営業は売上を伸ばすことが目標だったり、経営は収支を改善することが目標だったり。社内でそれぞれがバラバラな目標を持って活動していると、同じ商品を扱っているにもかかわらず、それぞれのベクトルがバラバラな方向に向かっていて、なかなか企業として伸びていかないのではないかと感じます。そこに「一番誌戦略」という戦略が提示されたことで社内が1つになって同じ方向に向かって行けたのではないかと思います。
宝島社でなぜマーケティングが機能しているのかということを考えてみましたが、それはやはり企業風土が非常に大きいと思います。
まずフラットな組織ということがあげられます。例えば、役職で呼ばないというようなことを、創業時から実践しており、男女平等という点では女性社員が6割を超えています。また、タテヨコの垣根がほとんどありません。情報化・効率化も重視しており、業務を遂行するときに、みんながコストを考えながら進めていいます。また、社員の半数以上が中途採用で新卒をほとんど採用していません。商社、銀行、メーカーなどさまざまな企業から社員が入社してきているため、ベースにビジネス感覚がある上でクリエイティブな仕事をしている社員が多いのではないかと思っています。
最後に経営トップの理念ですが、社員の自発性と創意性を尊重するということを常に重視しており、非常に社員想いの経営です。これらのことが企業風土に繋がっているのではないかと考えています。私が作っている社内報は「宝」というタイトルなのですが、サブタイトルはトップから提案があり「社員は宝です」になりました。社員想いの経営があり、社員が会社のことを想っているからこそ、このような企業風土が続いているのではないかと思っています。
今日このセミナーに参加された方は、宝島社の雑誌が売れているのには、なにか秘密があるのではないかと期待されてお集まりいただいたのではないかと思いますが、特別なことをしているわけではありません。どうしたらみんなが喜ぶかを考えて、当たり前の地道なことを徹底してやり続けていくことが一番大切なことなのではないかと思っています。
マーケティング・クリエイティブ最前線「宝島社の女性誌マーケティング」 インデックス
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第1章 マーケティングの重要性に気づいた3つの出来事
2011年01月20日 (木)
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第2章 「マーケティング会議」の導入で部数が伸びた
2011年01月21日 (金)
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第3章 プロモーションのアイデアはこうして生み出す
2011年01月24日 (月)
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第4章 電子書籍より、約58,000店の出版流通を活かす
2011年01月25日 (火)
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第5章 企画のポイントは「期待以上&一言」
2011年01月26日 (水)
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第6章 マーケティングの3大ポイント
2011年01月27日 (木)
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第7章 会議は発言自由、即断即決、持ち越しナシ
2011年01月28日 (金)
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第8章 みんなが持っている物は“ブランド”か?
2011年01月31日 (月)
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第9章 「ぜひ、まねてください」
2011年02月01日 (火)
該当講座
宝島社の女性誌マーケティング
~出版の概念を覆すマーケティング戦略で部数はまだ伸びる~
桜田 圭子(㈱宝島社 マーケティング本部広報課長)
西川 英彦(法政大学教授)
今回のマーケティング・クリエイティブ最前線では、新しい発想で快進を続けて注目を集めている宝島社にクローズ・アップします。
付録付雑誌だけでなく、美顔器を書店で販売して大ヒットさせるなど、従来の常識を覆すマーケティング戦略で注目を集める同社の発想の源にあるものとは?進化を続ける宝島社の好調の秘密に迫ります。
"最前線"講座
マーケティング・PR 経営戦略
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