記事・レポート

安藤忠雄「チャンスを逃すな」

日本はもう絶望的な状態……か?

日本元気塾建築・デザイン
更新日 : 2010年12月06日 (月)

第5章 オリンピックふたたび

安藤忠雄氏

2016年のオリンピック誘致の夢は破れたが、安藤はあきらめてはいない。この構想が持ち上がったとき、東京都知事の石原慎太郎は「2016年のオリンピックの監督は安藤忠雄に任せる」と発表した。安藤にとっては寝耳に水だったが、「やはりリーダーにはこれくらいの強引さがないとチャンスはつくれない」と引き受ける。

東京オリンピックが開かれた1964年は日本が一番元気なときだった。丹下健三が設計した国立代々木競技場の技術、デザイン、そこに秘められた日本人の心意気に世界の人々は驚嘆し、感動した。安藤はその経験から、日本の技術の粋を集めたオリンピックを考える。

晴海のオリンピックのメーン会場は、太陽光パネルを張り巡らせて発電し、使用エネルギーをまかなう構想。「日本なら実現できるし、世界の人々も、日本なら本当にやってのけるだろうと信じてくれる。そうした信用がある間に、世界に出て行かなければなりません」。

もうひとつのユニークなプロジェクトが「海の森」だ。「東京湾に浮かぶ100ヘクタールのゴミの山を皆の募金で緑の森に変えたい」と安藤は石原に提案する。資源や食糧を無駄にしない循環型社会の象徴を創ろう、と。石原は快諾し、「造成工事やメンテナンスは東京都がやる。1000円募金で50万人集められるか」と聞いた。安藤は「やりましょう」と答えた。

「50万人が『あの森は僕の森だ、私の森だ』と思うことが大切なのです。50万人の募金でゴミの山を美しい森に変えてみせたら、世界の人々はきっと『日本という国は面白いぞ』と思う」。安藤は講演の度に募金を呼びかけ、世界の人々にも参加を呼びかけた。

元フランス大統領のジャック•シラク、ノーベル平和賞受賞のワンガリ・マータイ、U2のボノもこのプロジェクトの応援団だ。ノーベル賞学者の小柴昌俊も賛同し、「海の森」の植樹に来てくれた。
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安藤忠雄:チャンスをつくる  
安藤忠雄 (建築家)
米倉誠一郎 (日本元気塾塾長/法政大学イノベーション・マネジメント研究科教授/ 一橋大学イノベーション研究センター名誉教授)

関東大震災後、現在の東京の都市骨格を形作ったと言われ、医師であり都市計画家でもある後藤新平氏の生誕150周年を記念して一昨年創設された『後藤新平賞』。本年、その国内外における多様な建築と、『瀬戸内オリーブ基金』『海の森募金』など環境に対するビジョン・実践力が後藤氏と通ずるということで、建築家・安藤忠....


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