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安藤忠雄「チャンスを逃すな」

日本はもう絶望的な状態……か?

日本元気塾建築・デザイン
更新日 : 2010年12月03日 (金)

第4章 枠を壊し、チャンスを広げる

安藤忠雄氏

世界各国で数多くの美術館を設計している安藤だが、ライバル企業の美術館を設計するという珍しい経験もしている。「仕事はいつも闘争的であるべき」と考える安藤は、サントリーとアサヒビールから依頼があったとき、「両方キャンセルになってもかまわない」と腹をくくり、どちらにも承諾の返事をする。両方から「厚かましいヤツ」と言われたが、「そんな勇気があるヤツに頼みたい」と、両社のトップが言い、話が決まった。

「サントリーミュージアム[天保山]」の設計を依頼された安藤は、隣接する大阪市や、運輸省・建設省(現・国土交通省)が所管する敷地も勝手に設計していく。当然、実現するには全部説得しなければならない。「頼まれたことだけやっていたら、日本にチャンスはない」。安藤は縦割行政を逆手にとり、複雑な調整と説得をやってのけた。

「チャンスをつかむには、勇気と、瞬時に物事を判断する知的能力を持たなければいけない」とも言う。日本のリーダーは、間違ったことをしないようにと考えるあまり、なかなか前に進もうとしない。海外では失敗を恐れず、挑戦する人を高く評価する。

『太平洋ひとりぼっち』で有名な堀江謙一が、小さなヨットで太平洋を渡ってサンフランシスコ湾に到達したとき、アメリカ人は「すごいヤツだ、大変な勇気だ」と狂喜して迎えたが、日本人は「パスポート、持っていったのか」と。

「アサヒビール大山崎山荘美術館」でも安藤は既成概念を壊した。もともとの建物は昭和初期に完成されたハーフティンバー工法の別荘。戦後、荒廃したままになっていた建物をアサヒビールが買取った。美術館に再生する依頼を受けた安藤は、建物(本館)を補強し、本館に負担をかけずにすむ地下に新館を創ろうと考えた。

新館は隣地の京都府の土地まではみ出して設計した。これにはアサヒビールも驚いて止めたが、「ここでチャンスを広げておいたおかげで」、今度は京都府から敷地を貸すという申し出があった。現在は工事のため休館しているが、2011年にオープンする。
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安藤忠雄:チャンスをつくる  
安藤忠雄 (建築家)
米倉誠一郎 (日本元気塾塾長/法政大学イノベーション・マネジメント研究科教授/ 一橋大学イノベーション研究センター名誉教授)

関東大震災後、現在の東京の都市骨格を形作ったと言われ、医師であり都市計画家でもある後藤新平氏の生誕150周年を記念して一昨年創設された『後藤新平賞』。本年、その国内外における多様な建築と、『瀬戸内オリーブ基金』『海の森募金』など環境に対するビジョン・実践力が後藤氏と通ずるということで、建築家・安藤忠....


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