記事・レポート
天文学と占星術の不思議な関係
渡部潤一氏×鏡リュウジ氏
更新日 : 2010年08月24日
(火)
第6章 自然に対する東洋と西洋の違い
渡部潤一: 自然に対する姿勢をみたとき、東洋と西洋の違いは厳然とあります。東洋の場合、見たものをそのまま記録する。神に近づこうとしないというか、多神教で何にでも神様が宿っていると考える。西洋は一神教的なところがあって、「神がつくりたもうた宇宙は完璧で、その完璧なものを読み解こう」という努力が、コペルニクスをはじめとした自然科学の原点になっているのではないかと思います。
一方で、東洋にはとても立派な記録が残されています。例えば、1054年に今のおうし座で超新星爆発がありましたが、これを記録しているのは韓国、中国、日本です。西洋ではいくら探しても記録が見つからないんです。西洋には「天は不変である」という思い込みがあって記録をとることはあまりしなかったからなのか、あるいは見えないものとして消してしまったのかもしれません。
鏡リュウジ: そうはいっても、西洋も一枚岩ではないんですよ。西洋では星はもともと神々だったので、神様がたくさんいました。だから占星術というのは、「西洋の中で最後まで生き残った多神教のひとつである」という言い方もできると思うんです。
ギリシアのヘレニズム時代には、神秘的な宗教や考え方がいろいろありました。この潮流は15世紀のルネサンス時代に本格的に西洋の世界に入ってきます。ですからルネサンスのイタリアは占星術天国なんです。多神教の占星術を叩かなければいけないはずのローマ教皇も占星術をやっていたり、教会の中に星の神々が描かれていたりする、そんな時代でした。
単純に、迷信としての占星術が捨てられて近代科学が立ち上がったという世界史観だけでは説明できないようなことが、おそらくいろいろあるのではないかと感じています。
渡部潤一: 今の科学史ではガリレオとかコペルニクスが偉いとされていますが、実はあの時代、一番天文学が進んでいたのはアラビアなんです。コペルニクスの著書『天球の回転について』にはアラビアの本の内容をそのまま使っている部分があって、ある人に言わせると「盗用じゃないか」と(笑)。違った文化から見ると、違ったものがやはり見えてきます。
記事をシェアする
ブログに書く
この記事のURLはこちら。
http://www.academyhills.com/note/opinion/10070706TenmonKagami.html
関連リンク
天文学と占星術の不思議な関係 インデックス
-
第1章 我々が見ている世界には、まだ見えない向こう側がある
2010年07月07日 (水)
-
第2章 星々の意思を読み解く、占星術のはじまり
2010年07月16日 (金)
-
第3章 天文学と占星術の根っこは同じ
2010年07月27日 (火)
-
第4章 占星術は考える星の学問「考星学」だった
2010年08月05日 (木)
-
第5章 天文学と占星術の分かれ道
2010年08月13日 (金)
-
第6章 自然に対する東洋と西洋の違い
2010年08月24日 (火)
-
第7章 2010年はどうなる?
2010年08月31日 (火)
該当講座
鏡リュウジ(占星術研究家/翻訳家)
渡部潤一(天文学者/自然科学研究機構国立天文台天文情報センター長・アーカイブ室長・総合研究大学院大学准教授)
科学の発展とともに別々の道を歩むこととなった天文学と占星術の不思議な関係についてお話いただきます。
教養
注目の記事
-
10月22日 (火) 更新
本から「いま」が見えてくる新刊10選 ~2024年10月~
毎日出版されるたくさんの本を眺めていると、世の中の”いま”が見えてくる。新刊書籍の中から、今知っておきたいテーマを扱った10冊の本を紹介しま....
-
10月22日 (火) 更新
aiaiのなんか気になる社会のこと
「aiaiのなんか気になる社会のこと」は、「社会課題」よりもっと手前の「ちょっと気になる社会のこと」に目を向けながら、一市民としての視点や選....
-
10月22日 (火) 更新
メタバースは私たちの「学び」に何をもたらす?<イベントレポート>
メタバースだからこそ得られる創造的な学びとは?N高、S高を展開する角川ドワンゴ学園の佐藤将大さんと、『メタバース進化論』を出版されたバーチャ....
現在募集中のイベント
-
開催日 : 11月28日 (木) 19:00~20:30
World Report 第10回 アメリカ発 by 渡邊裕子
いま世界の現場で何が起きているのかを、海外在住の日本人ジャーナリスト、起業家、活動家の視点を通して解説し、そこから見えてくることを参加者の皆....
「ハリス V.S. トランプ 米国大統領選挙結果を読み解く」