記事・レポート
天文学と占星術の不思議な関係
渡部潤一氏×鏡リュウジ氏
更新日 : 2010年07月16日
(金)
第2章 星々の意思を読み解く、占星術のはじまり
鏡リュウジ: おひつじ座やおうし座いった“星座”が誕生したのは、紀元前のバビロニア、今のイラク、中近東のあたりです。それが古代ギリシア、それからヘレニズムの時代になって完成されていきました。
星座は1日1回転しますが、その相対的な位置や形は変わりません。とても規則的です。だから完璧に予測できるのです。昔の人は、何とかして未来のことを知ろうとしました。運命や国をどうしたらいいかを知りたかったのです。もちろん、そういう気持ちは現代を生きる我々にもあります。
ところが、完全に動きがわかってしまうものは占いには使えません。例えば全てハートのエースだけのトランプで、トランプ占いをしてもダメでしょう? かといって全く予測がつかないランダムのものも、やはり未来を予測する道具としては使えません。
惑星というのはちょうどいいんです。ある程度の法則性があって予測はつけられるけれど、ちょっと戻ったりして、ランダムな動きをすることもある。何か意思をもっているような動きを見せるから、古代バビロニア人は惑星を「神様」だと感じたのです。そして神々がいろいろなメッセージを地上に送っていると考えていました。
時代が進んでギリシアの数学などと結びついてくると、より美しい完成された宇宙観がつくられました。紀元2世紀ごろ、エジプトのアレクサンドリアで活躍した天文学者であり、地理学者であり、占星術家でもあったプトレマイオスは、地球が宇宙の真ん中にあり、その周りを月や太陽や、木星などの惑星が回転していると考えました。その位置関係によって、星のメッセージが地上に届くとしたのが占星術です。
ここで「あれっ?」と思う方がいるかもしれません。星占いでまず出てくるのは、星座の名前なのに、太陽や月、木星などの惑星が主役というのは、ピンとこないかもしれません。星占いでは「何月何日生まれは○○座」と決まっていますが、どういうふうに決められているかご存じですか? 実はそのカギが惑星にあるのです。
地球から見たときの太陽の通り道、太陽が1年かけて1周するルートを「黄道(こうどう)」と言います。その黄道上に12個の星座が並んでいます。おひつじ座、おうし座、ふたご座、かに座、しし座、おとめ座、てんびん座、さそり座、いて座、やぎ座、みずがめ座、うお座の12の星座です。この12の星座のことを「黄道12星座」と呼んだりもします。
この黄道のあたりを水星や金星、火星、月がちょうど動いているように見えるんです。だから、惑星の現在の位置を確認するのに黄道12星座というのは、とても便利だったんです。「今、火星がちょうどしし座の方向に見える」など、時計の文字盤みたいなものですね。そういうわけで、12星座が惑星との関係、とりわけ太陽との関係で重要なものになっていきました。
我々が現在使っているカレンダーは太陽暦です。太陽の位置をもとに暦を決めているわけです。これは逆に言うと、何月何日ということがわかれば、太陽のだいたいの位置がわかるということです。例えば春分の日3月20日ごろには、太陽はおひつじ座の0度にきます。生まれたとき太陽がどの星座に入っているかで、その人の生まれ星座を定めるようになったのです。
12星座占い以前はホロスコープを用いるのが一般的でした。12の星座が描かれた図形の中にいろいろな星を描き込んで、その人だけの天体の配置図をつくり、いろいろな判断をしていました。簡単に誕生日だけでわかる星座占いが発明されたというのは、ごく最近のことです。
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該当講座
鏡リュウジ(占星術研究家/翻訳家)
渡部潤一(天文学者/自然科学研究機構国立天文台天文情報センター長・アーカイブ室長・総合研究大学院大学准教授)
科学の発展とともに別々の道を歩むこととなった天文学と占星術の不思議な関係についてお話いただきます。
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