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住職に学ぶ、集中力を高める方法

~六本木で煩悩リセットいたしませう~

更新日 : 2010年01月15日 (金)

第3章 ルーティンワークに集中できる人は、仕事ができる

小池龍之介氏

小池龍之介: 仕事とはたいがい、とてもニュートラルで、毎回同じようにこなさなければならないことばかりだったりします。クリエイティブに見える仕事ですら、一つひとつの構成要素は意外と地味でありきたりなことから成り立っています。それを丁寧にすることができない人が、現代社会には多すぎるのです。

「こんなルーティンワークはクリエイティブな俺様には向かない」とイライラしながら仕事する人と、そんな余計なことを考えずに集中して、しっかりニュートラルな作業をこなしていける人——どちらが幸福かというと後者の方です。ストレスがないですし、イライラしながらやるより、結果として仕事が上手くいくからです。

ありきたりなニュートラルな仕事をこなして、充足感を覚えることができれば、仕事は上手くいきます。また、そうやって普通のことをきちんとこなしている人は、周りにいい印象を与えます。

皆さんは仕事をしているつもりでも、実は、仕事時間の半分ぐらいは仕事をしていません。自分ではその時間、ずっと仕事をしていると思い込んでいるのですが、実際は1秒のうち0.5秒はしていないのです。その間、別の情報が割り込んできて、例えば「服」「六本木」「夜空」「過去の情報」「未来に対する心配」など、思いつくままに考えているのです。小さな単位では見えませんが、100秒に拡大すると、50秒は何もしていないのです。「えっ、そんなバカな」と思うかもしれませんけれども実際にそうなんです。

これは五感と記憶、つまり「六門」から常にノイズがたくさん入っているからです。ノイズを活性化させないためには、刺激によって心が波立たないようにすることが重要です。例えば、「ほめるべきである」とか、「上手くいくべきである」と思うと、心が波立ちます。それによってノイズがいっぱい割り込んできてしまいます。

ここで、本題である「集中」について考えてみましょう。私が指導する座禅セッションでは、集中力を形成することをテーマの1つにしています。座禅においては、並大抵の集中力ではなく、超越的な集中力を形成します。

まず、「集中している」とはどのような状態でしょうか。皆さんは今、ここにおいでになっているのですから、聞こうという意思をもっておられるはずです。そのつもりなのに、なぜか眠たくなったり、別のことをいろいろ考えたりしていると思います。きょうの出来事を思い出したり、これから何をしようとか、いろいろ考えたでしょう。

その考える割合が高まるにしたがって、聞こえなかった瞬間がいっぱいあったはずです。聞こえていたつもりでいても、何を言っているかデータとして入ってこなかった瞬間があるはずです。こうしたことは仕事で会議や打ち合わせをしているときにも起こっています。

「聞く」行為の中に、関係ない情報がいっぱい入り混じっているのです。例えば、興奮しているときは、やろうとしていることに身が入りません。イライラしていたりして「クソー」とか思っている。すると、これが頭の中で鳴り響き出すのです。「クソー」と思ってしまうと、過去の「クソー」と思った情報がいっぱい活性化してきます。記憶のデータベースでは、似たような情報とつながっているからです。

集中の度合いが強まってくるにしたがい、このノイズは減っていきます。究極の集中状態とは、集中の対象以外は一切認識しないという状態です。ある1点に集中して、何か聞くなら聞くしかしない、見るなら見るしかしない。かなり超越的な集中状態です。

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煩悩リセット稽古帖

小池龍之介
ディスカヴァー・トゥエンティワン

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