記事・レポート
カフェブレイク・ブックトーク「心に沁みることばの数々」
~決意を促す言葉、気が利く言葉~
更新日 : 2009年11月25日
(水)
第4章 わが国に広まっている名言の多くは中国から渡来
澁川雅俊: ここに『ことわざと故事・名言分類辞典』(法学書院)があります。これには世界各国のその種のことばが収められていますが、収録されている名言を調べてみると、90%以上が中国の歴史、思想、文学に由来するものです。
例えば山本七平が著した『指導力-「宋名臣言行録」の読み方』(日本経済新聞出版社)は、10世紀から12世紀に栄えた中国の宋という国の成立と発展にかかわった政治家や官僚の功績を集めた本で、唐の時代の皇帝太宗の言行録である「貞観政要」(じょうがんせいよう)と同様に、江戸時代から明治時代の為政者たちに読み継がれた帝王学の名著といわれています。
この種のものとして『中国古典の知恵に学ぶ-菜根譚』(ディスカヴァ-・トゥエンティワン)や『菜根譚の名言-ベスト100』(PHP研究所)で取り挙げられている『菜根譚』は処世訓(人生、幸福、人間、世間、人原関係、仕事などについての教え)として、江戸時代から現代まで広く日本人に愛読されてきたといわれています。例えばこんなことばがありました。「苦心の中に常に心を悦ばしむるの趣を得、得意の時に便(すなわ)ち失意の悲しみを生ず」(有頂天のときの人の心の持ちようを戒める)。
そういったテキストよりももっと身近なものは、なんといっても「論語」でしょう。『四字熟語で読む論語』(大修館書店)は、圧縮された四字熟語の本意を「論語」のテキストを介して解説しています。例えば世界の現状になぞらえて1つ選ぶとすれば「歳寒松柏」(さいかんしょうはく)があります。原文は「大寒既に至り、霜雪既に降る、吾是をもって松柏の茂を知る」ということですが、その意味は、人は非常時においてこそ真価がとわれる、ということです。
また『人生を豊かにする四字熟語』(ランダムハウス講談社)は、「論語」はもとより紀元前からの中国の古典から毛沢東や郭沫若などの論文から人生を豊かにする名言の数々を四字熟語で表現しています。なおこの本は、「一陽来復」(どんな不況や不調でも必ず底を打ちあとは……)など一般に知られている熟語以外のものをたくさん収録していますが、よくできた分類索引が施されており、私たちがそれを使いたいTPOから適当な四字熟語を効果的に探し出すすべを提供しています。
しかしなんといっても中国の古典から名言を抽出し、それぞれ的確な解説を加えている最大のものは、『大漢和辞典』の著者諸橋轍次がまとめた『中国古典名言事典』(講談社)です。例えば『楽水-「水」に関わる故事・ことわざ・名言集』(東京図書出版会)のような特定のテーマの下での名言集を編纂した本がありますが、こうした名言集は諸橋の事典のような基本資料があってはじめて可能になります。
ところで以上はどちらかといえば、中国から渡来した古典的名言集ですが、『中国の四字熟語-現代流行語から読む中国人の仰天価値観』(日本実業出版社)は、現代中国人の生き方を四字熟語で著した名言の数々を収録しています。例えば「無商不奸」(うーしゃんぶじぇん。ムショウフカン)なる現代四字熟語が掲載されています。それは「商売人はずるいものだ」という意味ですが、「ビジネスにはずるさやしたたかさも必要だ」という現代中国人の考えが反映していると解説されています。
わたしはこれを拾い読みしていて『創作四字熟語 保存版-平成の世相を反映した日本語パロディ』(河出書房新社)を思い出しました。これは現代日本の世相や人情・気質をユーモアたっぷり、ウィットに富んだ漢字四文字でみごとに活写した独創的な熟語400作品を集めた話題の書でした。
新約聖書マタイ伝に「人は麺麭のみに生くるに非ず、神の口より出る言の葉にもよるべし」という文言があります。これは名言中の名言で、「生きるために食物は重要だが、それと同様に神の教えも不可欠である」という教え(箴言。生きていく上での教訓となる簡潔なことば)です。このように聖書や仏典などからも名言集が編み出されています。
そうしたものの中に『イエス・キリスト 人生に奇跡を起こす言葉-2000年間、人間の魂を磨き続けたメッセージ』(三笠書房)や『日本仏教名言集』(天来書院)があります。 また『こだわらない』や『こだわらない、でも流されない』(いずれもPHP研究所)などは仏典のテキストからの直裁的な引用ではありませんが、仏教にもとづいた著者の思想・思考が箴言集という形でまとめられています。
例えば山本七平が著した『指導力-「宋名臣言行録」の読み方』(日本経済新聞出版社)は、10世紀から12世紀に栄えた中国の宋という国の成立と発展にかかわった政治家や官僚の功績を集めた本で、唐の時代の皇帝太宗の言行録である「貞観政要」(じょうがんせいよう)と同様に、江戸時代から明治時代の為政者たちに読み継がれた帝王学の名著といわれています。
この種のものとして『中国古典の知恵に学ぶ-菜根譚』(ディスカヴァ-・トゥエンティワン)や『菜根譚の名言-ベスト100』(PHP研究所)で取り挙げられている『菜根譚』は処世訓(人生、幸福、人間、世間、人原関係、仕事などについての教え)として、江戸時代から現代まで広く日本人に愛読されてきたといわれています。例えばこんなことばがありました。「苦心の中に常に心を悦ばしむるの趣を得、得意の時に便(すなわ)ち失意の悲しみを生ず」(有頂天のときの人の心の持ちようを戒める)。
●四字熟語で著された中国渡来の名言集
そういったテキストよりももっと身近なものは、なんといっても「論語」でしょう。『四字熟語で読む論語』(大修館書店)は、圧縮された四字熟語の本意を「論語」のテキストを介して解説しています。例えば世界の現状になぞらえて1つ選ぶとすれば「歳寒松柏」(さいかんしょうはく)があります。原文は「大寒既に至り、霜雪既に降る、吾是をもって松柏の茂を知る」ということですが、その意味は、人は非常時においてこそ真価がとわれる、ということです。
また『人生を豊かにする四字熟語』(ランダムハウス講談社)は、「論語」はもとより紀元前からの中国の古典から毛沢東や郭沫若などの論文から人生を豊かにする名言の数々を四字熟語で表現しています。なおこの本は、「一陽来復」(どんな不況や不調でも必ず底を打ちあとは……)など一般に知られている熟語以外のものをたくさん収録していますが、よくできた分類索引が施されており、私たちがそれを使いたいTPOから適当な四字熟語を効果的に探し出すすべを提供しています。
しかしなんといっても中国の古典から名言を抽出し、それぞれ的確な解説を加えている最大のものは、『大漢和辞典』の著者諸橋轍次がまとめた『中国古典名言事典』(講談社)です。例えば『楽水-「水」に関わる故事・ことわざ・名言集』(東京図書出版会)のような特定のテーマの下での名言集を編纂した本がありますが、こうした名言集は諸橋の事典のような基本資料があってはじめて可能になります。
ところで以上はどちらかといえば、中国から渡来した古典的名言集ですが、『中国の四字熟語-現代流行語から読む中国人の仰天価値観』(日本実業出版社)は、現代中国人の生き方を四字熟語で著した名言の数々を収録しています。例えば「無商不奸」(うーしゃんぶじぇん。ムショウフカン)なる現代四字熟語が掲載されています。それは「商売人はずるいものだ」という意味ですが、「ビジネスにはずるさやしたたかさも必要だ」という現代中国人の考えが反映していると解説されています。
わたしはこれを拾い読みしていて『創作四字熟語 保存版-平成の世相を反映した日本語パロディ』(河出書房新社)を思い出しました。これは現代日本の世相や人情・気質をユーモアたっぷり、ウィットに富んだ漢字四文字でみごとに活写した独創的な熟語400作品を集めた話題の書でした。
●聖書や仏典からも
新約聖書マタイ伝に「人は麺麭のみに生くるに非ず、神の口より出る言の葉にもよるべし」という文言があります。これは名言中の名言で、「生きるために食物は重要だが、それと同様に神の教えも不可欠である」という教え(箴言。生きていく上での教訓となる簡潔なことば)です。このように聖書や仏典などからも名言集が編み出されています。
そうしたものの中に『イエス・キリスト 人生に奇跡を起こす言葉-2000年間、人間の魂を磨き続けたメッセージ』(三笠書房)や『日本仏教名言集』(天来書院)があります。 また『こだわらない』や『こだわらない、でも流されない』(いずれもPHP研究所)などは仏典のテキストからの直裁的な引用ではありませんが、仏教にもとづいた著者の思想・思考が箴言集という形でまとめられています。
カフェブレイク・ブックトーク「心に沁みることばの数々」 インデックス
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第1章 心に沁みることばの数々
2009年10月21日 (水)
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第2章 まず、ビジネスにかかわる名言集
2009年10月30日 (金)
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第3章 生き方一般、そしてその基盤あるいは背景にかかわることば
2009年11月12日 (木)
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第4章 わが国に広まっている名言の多くは中国から渡来
2009年11月25日 (水)
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第5章 これも名言か?
2009年12月04日 (金)
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