六本木ヒルズライブラリー

GIFT BOOKS ~大切な人に贈る6冊~

更新日 : 2024年11月25日 (月)





年末も近づいてきたこの頃、今年一年お世話になった人、あるいは大切な誰かのために、贈り物を考える機会も多いのではないでしょうか。そんな方にオススメしたいのが、本を贈ること。
食べ物について、美しいものについて、あるいは宇宙や生命、言葉について。本を開くだけ、たった一行の文章を読むだけで、読む人は広く、深く、多様な世界に誘われます。これは最も手軽な「新世界へのチケット」と言えるかもしれません。
今月ご紹介する書籍は、そんな「チケット」にぴったりの6冊です。


 

料理は子どもの遊びです
ミシェル・オリヴェ/河出書房新社
どんなことも、まずは「遊び」だと思ってみる。子供が新しいことを学ぶ秘訣は、そんな心持ちにあるのではないでしょうか。本書はフレンチのシェフが作ったレシピを、絵本に仕立てた一冊。チーズスフレに、自家製マヨネーズ、チキンのワイン煮……メニューは本格的ですが、平易な言葉とシンプルな絵は、料理を大人の世界から子供の世界へぐっと引き寄せます。

フランスでは半世紀の間読み継がれ、300万部も刊行された古典的料理絵本。自分でも作ってみたい!と思わせる、遊び心が満載です。料理が苦手な大人の方も、ぜひお手にとってみてはいかがでしょうか。

ぼくは川のように話す
ジョーダン・スコット/偕成社
どんなにお喋りが好きな人でも、スピーチが得意な人でも、不意に言葉に詰まったことや自分が口にした言葉に違和感を覚えたことはあるのではないでしょうか。何でも表現できるようでいて、意外と思い通りにならない「言葉」。

吃音をもつ詩人の実体験をもとに作られた本書は、そんな言葉とうまく馴染むことができない少年の悩みを水と光の煌めきと共に描き出した絵本。言葉からあふれてしまう思いとどのように向き合うのか、私たちが一生抱える問題を繊細なタッチで掬い取る一冊です。

あなたのための短歌集
木下 龍也/ナナロク社
Q.「まっすぐに生きられる短歌をお願いします」。
A.「「まっすぐ」の文字のどれもが持っているカーブが日々にあったっていい」。
歌人・木下龍也が依頼者からお題を受けて作る「あなたのための短歌」。片想いの未練を断ち切りたいという切なる願いや、苦しい職場で生き抜くための勇気が、五七五の言の葉に織り込まれています。

時に正面から受け止め、時に軽やかに違う道を指し示す百首は、たった一人のために作られた歌でありながら、同じ悩みを知っている私たち皆んなに響きます。きっと、「あなたのための短歌」が見つかるはずです。

きみのお金は誰のため
ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」
田内 学/東洋経済新報社
資本主義がますます加速する現代社会において、お金と関係のないものは何もない、と言っても過言ではないでしょう。生きていく上で、収入や貯蓄について考えるのは当然のこと。子供のうちから投資を学ぶといったことも珍しくありません。

しかし、そんな時代だからこそ、「お金の本質を理解する」ことは「お金から解放される」ことだと本書は語ります。解放されることで初めて、人はお金を使いこなすことができるのだ、と。中学2年生の主人公の視点を通してお金と社会の関係を解き明かす小説仕立ての一冊。物価の上昇から老後資金に至るまで、様々なお金の疑問と不安に答えます。

たね
ギータ・ヴォルフ/タムラ堂
美しい装丁の絵本を数多く出版している南インドの小さな出版社タラブックス。その新作である本書もまた、先住民族のワルリ画アーティスト、ワイエダ兄弟による素朴で繊細な絵がまず目を惹きます。

あらすじは実にシンプルです。一粒のたねが運ばれ、芽吹き、大きく伸びていく。小さな命に秘められた力、あるいは生命がめぐる奇跡についての物語が、異なるデザインからなる四章に綴じ込められています。一つ一つ手刷りされた本書は、紙の手触りやインクの匂いを通して、本を読むという体験自体が宝物になるはずです。

美術の物語
エルンスト・H・ゴンブリッチ/河出書房新社
本書では、ラスコーの洞窟画から現代アートに至るまで、長大な美術史を豊富な写真とともに辿ります。

ダ・ヴィンチもピカソもウォーホルも、誰もが過去の作品に影響を受け、同時に後世へ影響を与えてきました。美術とは、時代ごとの人々の価値観、あるいは歴史上の出来事とともに変わっていく鏡のようなもの。美術史を学び、「見る目」を得れば、私たちの社会や人を「見る目」もまた変わるはずです。

 

 


誰かから本をもらうと嬉しいのは、なぜでしょうか。もしかすると、そこにはどこか「告白」めいたものがあるからかもしれません。贈る人の考え方や生き方、あるいは大好きなもの。つまりはその人にとって大切な「世界」を知ってほしいという想い。それは紙とインクに自分自身を託す、さりげない告白のようなもの。だからこそ、人からもらった本は、知らず背筋を伸ばして、どきどきしながら読んでしまうのでしょう。あるいは誰かがそんな楽しみを味わうことを想像しながら、本を選ぶのもまた、楽しいはず。ご紹介した6冊をきっかけに、ぜひ誰かに本を贈ってみてはいかがでしょうか。
 

料理は子どもの遊びです

ミシェル ・オリヴェ
河出書房新社

ぼくは川のように話す

ジョーダン・スコット
偕成社

あなたのための短歌集

木下龍也
偕成社

きみのお金は誰のため: ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」

田内学
東洋経済新報社

たね

ギータ・ヴォルフ
‎タムラ堂

美術の物語

エルンスト・H・ゴンブリッチ
河出書房新