六本木ヒルズライブラリー

秋に読みたい食にまつわる7冊

更新日 : 2024年10月21日 (月)





秋と言えば、食欲の秋。きのこ、新米、それから秋刀魚……旬の食べ物は枚挙にいとまがありません。見て、嗅いで、味わって、あるいはアツアツを手で感じたり、調理中の音に耳を傾けたり……食は五感のすべてを使って楽しめる、最高のエンターテインメントです。
そこに加えてもう一つ、「読んで味わう」楽しみはいかがでしょうか。秋はもちろん、読書の秋でもあります。言葉を通じて見えてくる、新たな食の世界。今月は、読めば満腹になること間違いなしの7冊をご紹介いたします。


 

見て、読んで楽しむ 世界の料理365日
青木 ゆり子/自由国民社
どんな国のどんな人も、毎日何かを食べて生きている。そして、そのほとんどは日常の「なんてことはない」食事。しかし、そういう日々の料理にこそ、その土地の歴史、地理、文化が詰まっています。

本書は365品、歴史上の偉人が毎日食べた朝ごはんから、現地に行かなければ食べられないソウルフードまで、世界各地で食べられてきた料理をご紹介します。一皿に詰まった様々な「情報」をスパイスに、世界をまるごと味わってみてはいかがでしょうか。

水曜日はおうちカレー
クタクタな日こそ、カレーを食べよう
長谷川 あかり/大和書房
カレーこそ、疲れた現代人を救うソリューション!?本書を読めば、その理由もわかるはず。なぜなら、カレーはおいしいだけではないんです。コツをつかめば意外と手軽、その上体にも優しい料理になります。「水曜日はカレー!」と決めてしまえば、悩みも減って心もラクに。

カレー作りに市販のルーは必要ありません。お決まりのカレー粉と普通の調味料を組み合わせれば、和洋中、普段の食事にもおもてなしにも、どんな食卓にもぴったりなカレーが作れてしまうのです。自由に、ラクに、そして楽しく。いつのまにか「カレーの水曜日」が待ち遠しくなるはず!

現代調理道具論
おいしさ・美しさ・楽しさを最大化する
稲田 俊輔/講談社
美味しい料理は、良い道具から。しかし本書が目指すのは、「楽で美味しい」料理。そのために必要となるのは「ちょうど良い」道具です。スライサー、シリコンべら、おろし金……家庭で使われる道具を改めて見直し、その力を最大限引き出す方法を考えます。

もちろん、本格ビリヤニから簡単で美味しいミニマル焼売まで、道具論を「実践」するレシピも多数収録。楽をするためにこそ道具にこだわり、徹底的に「雑な」おいしさを追求する。そんな著者の姿勢は、日々を楽しく、そして楽に生きていくための大切な視点を教えてくれます。

午前7時の朝ごはん研究所
小田 真規子/ポプラ社
朝食は「食事」ではありません——これ、レシピ本として、ちょっと驚く宣言かもしれません。ただ、言いたいことはいたってシンプル。その「役割」をきちんととらえようということ。朝食に必要な要素、すなわち水分、栄養、エネルギー、体温、はたまた体へのやさしさか、それを見極め食べればよい、ということなのです。

誰しも朝はできるだけ眠っていたいし、身支度だって忙しい、朝食の準備に割ける時間はほんの数分……そんな日常の前提に立って、本書は作られています。「0分」でできるレシピは必見。朝食はめんどくさい、そんな固定観念を打ち砕く一冊です。

志麻さんのレシピノート
何度でも作りたい、食べたいフランスの家庭料理
タサン志麻/幻冬舎
フランス料理と聞くと、ついついお店の手の込んだ一皿を想像してしまうもの。しかし、それは和食で言うところ「割烹」。家庭で作られるフランス料理はずっとシンプルで、もちろんおいしいのです。

著者はフレンチの三ツ星レストランで修業しながらも、「家政婦」に転身し、日常に寄り添った料理を作ってきた「家庭料理」のプロ。本書は単なるレシピ集ではなく、日々の料理において何を考え、感じて判断すればよいのか、料理と楽しく向き合うための様々なヒントが詰まっています。想像力を刺激する、豊富な料理のイラストもぜひお楽しみください。

ライ麦はもともと小麦に間違えられた雑草だった
食材と人類のウィンウィンな関係
ビル・フランソワ /光文社
生物物理学者でもある著者によるエッセイ集。本書は、食べ物にまつわる歴史、科学、知られざるエピソードがふんだんに盛り込まれています。これを読めばレストランの一席で披露できるような教養が身につく……というだけではありません。

そもそも、私たちが普段食べているもの、その一つ一つに長い歴史があり、食事をすることはつまりその歴史を食べている、と言うこともできるのではないでしょうか。世界で最初のイチゴや、酔っぱらいのハエが発明したチーズ……ひとたび本書を味わった後は、日々の食事が違って見えるはず。ひとつまみの知識がもたらす美味を、ご賞味あれ。

サンダー・キャッツの発酵の旅
世界中を旅して見つけたレシピ、技術、そして伝統
Sandor Ellix Katz /オライリー・ジャパン
人類の調理法において、発酵が担ってきた役割は火に次いで大きいものかもしれません。チーズ、味噌のような食品はもちろん、お酒やチョコレート、そもそもパンだって発酵がなければ生まれないものです。本書はそんな発酵と人類の関係を豊富な写真と共に探る一冊。日本はもちろん、中南米から北極圏にいたるまで、世界各地で今も息づく発酵食品をフルカラーでご紹介します。

それぞれの地域に特色はあれど、それ以上に驚くのは「発酵」という技術によって、人類は繋がっているということ。発酵食品を知ることは、すなわち私たちの歴史を知ることなのです。


食は人が生きる上で決して避けられないものです。それゆえ人類の発展は、作物を改良し、レシピを受け継ぎ、あるいは様々な調理器具を発明する、そんな食の歴史と表裏一体。食にまつわる本を読めば、思想、文化、あるいは科学といった、様々な世界とのつながりが見えてきます。この秋は、もちろん食べ物でお腹を満たしつつ、箸休めに食にまつわる本を読んでみてはいかがでしょうか。
 

見て、読んで楽しむ 世界の料理365日

青木ゆり子
自由国民社

水曜日はおうちカレー クタクタな日こそ、カレーを食べよう。

長谷川あかり
大和書房

現代調理道具論 おいしさ・美しさ・楽しさを最大化する

稲田俊輔
講談社

午前7時の朝ごはん研究所—朝食は料理にあらずパズルなり

小田真規子
ポプラ社

志麻さんのレシピノート 何度でも作りたい、食べたいフランスの家庭料理

タサン志麻
幻冬舎

ライ麦はもともと小麦に間違えられた雑草だった 食材と人類のウィンウィンな関係

ビル・フランソワ
光文社

サンダー・キャッツの発酵の旅 —世界中を旅して見つけたレシピ、技術、そして伝統

Sandor Ellix Katz (著), 水原 文 (翻訳)
オライリー・ジャパン