六本木ヒルズライブラリー

【エントランスショーケース展示連動企画】
谷崎潤一郎と棟方志功-棟方志功のブックデザイン-
(19:15~20:45)

【スピーカー】石井 頼子(棟方志功研究/学芸員)
      

ライブラリーイベント

【六本木/アークヒルズ ライブラリーメンバー対象】
 ※マイページよりお申込みください。
【会場】アカデミーヒルズ(六本木ヒルズ森タワー49階)

日時

2017年02月27日 (月)  19:15~20:45
終了しています

内容

【概要】

自らの版画作品を「板画」と称した棟方志功(1903年~1975年)は「言葉」を操ることが好きでした。板から生まれる画だから「板画(はんが)」。「芸術」ではなくて「芸業(げいごう)」。「仕事」ではなくて「仕業(しごと)」。「絵描きになれなかったら文学の道を歩んでいただろう」と口にする棟方は、文章を読むのも綴るのも大好きでした。

昭和初年代、棟方は児童文学の挿絵を描いて糊口を凌ぎました。そこで出会った詩人たちとの交流から、版画家として世に認められる作品が生まれて行きます。一方、昭和7年から18年にかけて、後に「阿佐ヶ谷文士村」と呼ばれる地域に住まいを持ったことも、期せずして文学者たちとの繋がりを深める要因となりました。蔵原伸二郎、保田與重郎、中谷孝雄、亀井勝一郎等々文学者たちとの縁は装幀の仕事に繋がって行き、昭和10年代中期に棟方は足掛け4年、実質的には2年半の間に100冊以上の本を装幀しています。

疎開先の富山では、俳人歌人との仕事が増えました。戦後の谷崎潤一郎(1886年~1965年)との出会いも大きなものでした。『鍵』を機にした谷崎とのコンビネーションは、「装幀家」としての棟方を飛躍的に進化させるに至り、昭和30年代、第二次棟方装幀本ブームとも言うべき事態を引き起こします。こうして棟方は生涯で1000冊を越える本と関わりを持ちました。

今回のアカデミーヒルズエントランスショーケース企画展では、それらの仕事のごく一部ではありますが、『鍵』から連なる華麗な棟方の装幀本の世界を堪能して頂きます。そして、その展示との連動で開催する本セミナーでは、棟方の自筆原稿をもとに、作品の変遷を交えて、谷崎潤一郎と棟方志功の交流の記録を紐解いて参ります。文豪谷崎と棟方に共通するものは何か、二人が何を求め合いそこから何が生まれたのか、お伝え出来れば幸いです。


石井 頼子 (いしい よりこ) プロフィール

1956年、版画家棟方志功の長女・けようの長女として東京都に生まれる。
棟方と生活を共にし、その制作風景に接しながら育つ。
慶應義塾大学文学部を卒業後、2011年の閉館まで棟方板画美術館に学芸員として勤務。
現在はインディペンデント・キュレーターとして展覧会監修や執筆活動、講演などを通じ、
知られざる棟方の紹介に努めている。近著に『棟方志功の眼』(2014年)『言霊の人 棟方志功』(2015年・共に里文出版)、『もっと知りたい 棟方志功』(2016年東京美術)など。
日本民藝館運営委員。


1963年12月22日 東海道棟方板画取材「伏見稲荷」