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セミナーレポート:日本における「報道の自由」は危機的状況なのか?
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アカデミーヒルズ スタッフの活動レポート
文/清水 写真/アカデミーヒルズ
2016年6月14日公開
グローバル・アジェンダ・シリーズ2016 第2弾では、ニューヨークタイムズ前東京支局長で現在は日本再建イニシアティブで研究員として活動するマーティン・ファクラー氏をお迎えし、昨今話題となっている日本メディアの独立性について考察しました。石倉洋子氏のモデレートの下、日本メディアの構造的な問題から、アメリカ大統領選におけるメディア戦略まで、幅広く議論しました。
自己規制が働く日本メディア:なぜ自分たちのために立ち上がらないのか?
まず冒頭でファクラー氏から日本メディアの構造的な問題とそれを活用した安倍政権によるメディアコントロールについて問題提起がありました。
記者が拘束・投獄されたり、訴えられ、盗聴されたりする海外に比べて、日本では報道に対する圧力はそこまでひどくはない。しかし、特に2014年から政権による圧力は高まっており、日本の報道機関はそれに対抗できずにself-censorship(自己規制)をしてしまっている---とファクラー氏は言います。
対抗できない理由としてファクラー氏が挙げたのが、日本メディアが過度に重きを置く"access journalism"。政府や企業が公表した情報をベースに報道することが中心である日本メディアは、政府・企業が持っている情報をいかに入手するかを重視します。「『調査報道』(発表される情報をベースにするのではなく、記者が自ら継続的に様々な情報源にあたり、裏付けを取り、事実を積み上げていく取材手法)と『政府・企業から開示される情報の報道』の2つのバランスが取れている米国に比べて、日本では調査報道はほとんどなされておらず、権力側からいかに情報をもらうかが極端に重視されている。そのために、政権側が情報へのアクセスを閉ざすと少し示唆するだけで、日本メディアはそれを恐れてすぐに自己規制をしてしまうのだ。」というのです。
自分たちの独立性を守るために政権と戦う姿勢を見せる海外メディアと比べて、日本メディアが従順になってしまう要因として、政府の情報へのアクセスが制度化された記者クラブの存在を挙げ、その特性を指摘しながら、受動的な日本メディアが作られてしまうメカニズムを解説してくださいました。
記者が拘束・投獄されたり、訴えられ、盗聴されたりする海外に比べて、日本では報道に対する圧力はそこまでひどくはない。しかし、特に2014年から政権による圧力は高まっており、日本の報道機関はそれに対抗できずにself-censorship(自己規制)をしてしまっている---とファクラー氏は言います。
対抗できない理由としてファクラー氏が挙げたのが、日本メディアが過度に重きを置く"access journalism"。政府や企業が公表した情報をベースに報道することが中心である日本メディアは、政府・企業が持っている情報をいかに入手するかを重視します。「『調査報道』(発表される情報をベースにするのではなく、記者が自ら継続的に様々な情報源にあたり、裏付けを取り、事実を積み上げていく取材手法)と『政府・企業から開示される情報の報道』の2つのバランスが取れている米国に比べて、日本では調査報道はほとんどなされておらず、権力側からいかに情報をもらうかが極端に重視されている。そのために、政権側が情報へのアクセスを閉ざすと少し示唆するだけで、日本メディアはそれを恐れてすぐに自己規制をしてしまうのだ。」というのです。
自分たちの独立性を守るために政権と戦う姿勢を見せる海外メディアと比べて、日本メディアが従順になってしまう要因として、政府の情報へのアクセスが制度化された記者クラブの存在を挙げ、その特性を指摘しながら、受動的な日本メディアが作られてしまうメカニズムを解説してくださいました。
石倉氏×ファクラー氏の対談、サプライズゲスト黒川清氏の登場!
石倉氏との対談では、安倍政権の戦略的なメディアコントロール、日本メディアの歴史的背景、アメリカ大統領選におけるドナルド・トランプ氏のメディア戦略まで幅広く議論しました。
これまでの日本の政権が重視してこなかったメディア戦略を、現在の安倍政権が戦略的に行うようになったことをファクラー氏は「日本政府にとってのターニングポイント」だと評価。過去には首相の失言が問題になったり、政権側のスポークスパーソンが当時の首相を記者の前で批判するなど統制が取れていなかったものが、今はメディアの弱みを見極めながら巧みにメディアを操るようになり、将来首相が変わってもそれは続いてメディアへの圧力は増していくだろう、と分析します。
その後、話題はトランプ氏が共和党の大統領候補に確定したアメリカ大統領選におけるメディア戦略へと発展。トランプ氏が巧みにテレビやSNSを使い、どのようにして多くのアメリカ人の心をつかんだのか、ファクラー氏の見方を披露しました。
後半では、最近出版された『規制の虜 グループシンクが日本を滅ぼす』が話題の、福島原発事故の国会事故調査委員会元委員長・黒川清氏がサプライズゲストとして登場。福島原発事故の取材を通じてファクラー氏と接点がある黒川氏も交えて鼎談となり、メディアの問題だけではなく、日本社会の根源的な問題が浮き彫りにされました。
これまでの日本の政権が重視してこなかったメディア戦略を、現在の安倍政権が戦略的に行うようになったことをファクラー氏は「日本政府にとってのターニングポイント」だと評価。過去には首相の失言が問題になったり、政権側のスポークスパーソンが当時の首相を記者の前で批判するなど統制が取れていなかったものが、今はメディアの弱みを見極めながら巧みにメディアを操るようになり、将来首相が変わってもそれは続いてメディアへの圧力は増していくだろう、と分析します。
その後、話題はトランプ氏が共和党の大統領候補に確定したアメリカ大統領選におけるメディア戦略へと発展。トランプ氏が巧みにテレビやSNSを使い、どのようにして多くのアメリカ人の心をつかんだのか、ファクラー氏の見方を披露しました。
後半では、最近出版された『規制の虜 グループシンクが日本を滅ぼす』が話題の、福島原発事故の国会事故調査委員会元委員長・黒川清氏がサプライズゲストとして登場。福島原発事故の取材を通じてファクラー氏と接点がある黒川氏も交えて鼎談となり、メディアの問題だけではなく、日本社会の根源的な問題が浮き彫りにされました。
石倉氏の感想
日常的に海外のあらゆるメディアから情報を得ている石倉氏。日本では報道されない問題も多く、情報源を日本メディアだけに依存することがいかに偏っているか、日頃からブログでもたびたび問題提起をされています。
本セミナーについても、石倉氏の感想が彼女のブログに書かれています。ぜひこちらの公式ブログもご覧ください。
また、グローバル人材を目指す集中講座「石倉洋子のグローバル・ゼミ」でも、過去に「日米メディア、権力の監視としてのジャーナリズム」をテーマにゲスト講師と議論したことがありました。
世界を舞台に活躍する人材にとって「情報をどのように得て、どういう視点から見るか、自分の意見は何か」を常に意識することは重要です。
石倉洋子のグローバル・ゼミでは、こういった思考をするためのトレーニングも行います。2016年9月に開講するプログラムは現在受講生を募集中です。
本セミナーについても、石倉氏の感想が彼女のブログに書かれています。ぜひこちらの公式ブログもご覧ください。
また、グローバル人材を目指す集中講座「石倉洋子のグローバル・ゼミ」でも、過去に「日米メディア、権力の監視としてのジャーナリズム」をテーマにゲスト講師と議論したことがありました。
世界を舞台に活躍する人材にとって「情報をどのように得て、どういう視点から見るか、自分の意見は何か」を常に意識することは重要です。
石倉洋子のグローバル・ゼミでは、こういった思考をするためのトレーニングも行います。2016年9月に開講するプログラムは現在受講生を募集中です。
本講座の関連書籍
セミナーでも話題として上がったファクラー氏の著書
安倍政権にひれ伏す日本のメディアファクラー・マーティン
双葉社
双葉社
該当講座
日本における「報道の自由」は危機的状況なのか?
NYタイムズ前東京支局長が語る世界における日本のメディア
昨今メディアで話題になっている日本の報道姿勢について、
ニューヨークタイムズ前東京支局長のマーティン・ファクラー氏をゲストにお招きして議論します。
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