記事・レポート
安藤忠雄「組織の条件、リーダーの条件」
更新日 : 2009年06月12日
(金)
第5章 暗闇に一筋の光を追う

「オリンピック招致」や「海の森プロジェクト」に見る活動の特徴は、一筋の光を目指して皆が自主的にチームをつくりあげ、皆で頑張って達成しようという発想にある。安藤は「そこに暗闇から脱する糸口がある」と語る。今、世界経済は暗闇に包まれているが、安藤もまた、過去に暗闇のなかで必死にもがいた経験がある。10代後半から20代の初め、独学で建築を学び、事務所をつくった頃は、まさに今の経済状態と同様、暗闇を手探りで歩くようなものだったという。「時々、光が見えて追いかけていくと、また真っ暗になるような日々だった。しかし、またいつか光が見えてくる。その光は頑張る者にだけ見えてくるものだ」。
今、安藤が危惧しているのは、携帯電話やメールの普及で人と人が直接対話する機会が減り、若い世代の思考力や対話力が低下していることと、日本から夢や情熱が失われつつあること。これではチームがつくれない。チームは対話によってつくられ、チームは情熱と客観性がセットになって成り立つものであるからだ。しかし、安藤はあきらめてはいない。夢を持とう、対話を始めよう、チームをつくろうと、熱く呼びかける。
今、安藤が危惧しているのは、携帯電話やメールの普及で人と人が直接対話する機会が減り、若い世代の思考力や対話力が低下していることと、日本から夢や情熱が失われつつあること。これではチームがつくれない。チームは対話によってつくられ、チームは情熱と客観性がセットになって成り立つものであるからだ。しかし、安藤はあきらめてはいない。夢を持とう、対話を始めよう、チームをつくろうと、熱く呼びかける。

「宇宙からはっきり認識できる人工物は万里の長城だけというが、かろうじて明治神宮と皇居は認識できるという。それならば、『海の森』だって宇宙から見えるはずだ。自分たちの手で、宇宙から認識できるものをつくるなんて面白いじゃないか。そうした想いを持った人が5人集まり、10 人集まればチームができる。自分の心に関わるものがたくさんあることが『責任ある個人』をつくり上げていく。チームとリーダーを創り出すのは、そうした夢と責任感なのだ」。(終)
安藤忠雄「組織の条件、リーダーの条件」 インデックス
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第1章 自由と責任、夢と好奇心
2009年04月01日 (水)
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第2章 世界の人々とチームを組む
2009年04月16日 (木)
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第3章 直島で見た福武のリーダーシップ
2009年05月08日 (金)
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第4章 オリンピック招致の意義とは
2009年05月26日 (火)
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第5章 暗闇に一筋の光を追う
2009年06月12日 (金)
該当講座
安藤忠雄氏は1969年28歳の時に、たった2人の建築事務所を大阪に開設しました。それから40年、現在では精鋭25名、平均年齢30歳という若いスタッフを率いてヨーロッパ、アメリカ、中東、アジアなど国内外の多様なプロジェクトに日々真剣勝負を挑んでいます。 建築家安藤氏の活躍を知る機会はこれまで沢山あり....
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