記事・レポート
危機を克服して進化する吉野家流経営
~「吉野家ウェイ」に見る現場を活かす価値追求マネジメント~
BIZセミナー経営戦略
更新日 : 2008年05月08日
(木)
第4章 アメリカ牛にこだわったのは、お客さまの期待を裏切らないため
安部修仁: 「うまい、やすい、はやい」は、吉野家の個性になっています。これは、吉野家の価値構成要素の1つであると自負しています。このうち「うまい、はやい」の2つは、築地で生まれました。築地は味にうるさい食のプロが集まっているし、1分1秒を争って仕事をしているのでスピードに対するニーズも高かったからです。
「来店頻度主義」にも関わることですが、おいしさの中で私たちが最も重視しているのは「後味」です。繰り返し食べても飽きない「後味」にしています。タレは手間隙掛けて作っていますが、タレの原液だけを飲んでもおいしくはありません。牛丼の味は、タレと、牛肉と玉ねぎから出るジュースが混ざり合って生まれるものです。詳しくは言えませんが、タレと牛肉と玉ねぎの配合量など、様々な要素が合体してはじめてあの味になるのです。
BSE騒動のとき、アメリカ牛にこだわったのは牛丼に関してはアメリカ牛のばら肉が最適だと私たちは考えていて、アメリカ牛に合わせてタレを作っていたからです。アメリカ牛がなければオージービーフで作ればいいじゃないか、というわけにはいかないのです。
「来店頻度主義」にも関わることですが、おいしさの中で私たちが最も重視しているのは「後味」です。繰り返し食べても飽きない「後味」にしています。タレは手間隙掛けて作っていますが、タレの原液だけを飲んでもおいしくはありません。牛丼の味は、タレと、牛肉と玉ねぎから出るジュースが混ざり合って生まれるものです。詳しくは言えませんが、タレと牛肉と玉ねぎの配合量など、様々な要素が合体してはじめてあの味になるのです。
BSE騒動のとき、アメリカ牛にこだわったのは牛丼に関してはアメリカ牛のばら肉が最適だと私たちは考えていて、アメリカ牛に合わせてタレを作っていたからです。アメリカ牛がなければオージービーフで作ればいいじゃないか、というわけにはいかないのです。
しかし、実はアメリカ牛が輸入停止になっていた間、例外的にオージービーフと国産牛をブレンドして牛丼を提供していた店舗が5、6店舗あります。競馬場などのクローズドのマーケットに出店していたFC加盟店で実施していました。そのような場所では競合禁止規定があり、他に例えばカレー屋さんがあったら吉野家でカレーは提供できませんでした。従って、牛丼を提供できなければ、その店を閉めなければならない状況だったのです。牛丼をやめたら、加盟店の権利を剥奪することになってしまいます。それを回避するために、オージービーフと国産牛を使った牛丼を作っていました。
その味はどうだったかというと、私たちの表現では「タレが濁る」。お客さまには、「タレがまずくなった」と言われました。タレは変えていないのに、です。だったら素材に合わせてタレを変えればいいじゃないか、と思われるかもしれませんが、そうすると結果的に"別の牛丼"になってしまいます。お客さまは「牛丼を早く復活してほしい」とおっしゃるのですが、"別の牛丼"を出すと「味が違う! これは吉野家じゃない!」とおっしゃいます。
お客さまの期待を裏切るものを出したら、先々後悔すると思い、社内で議論を重ねて休止という決断を下したのです。
その味はどうだったかというと、私たちの表現では「タレが濁る」。お客さまには、「タレがまずくなった」と言われました。タレは変えていないのに、です。だったら素材に合わせてタレを変えればいいじゃないか、と思われるかもしれませんが、そうすると結果的に"別の牛丼"になってしまいます。お客さまは「牛丼を早く復活してほしい」とおっしゃるのですが、"別の牛丼"を出すと「味が違う! これは吉野家じゃない!」とおっしゃいます。
お客さまの期待を裏切るものを出したら、先々後悔すると思い、社内で議論を重ねて休止という決断を下したのです。
危機を克服して進化する吉野家流経営 インデックス
-
第1章 値下げしても、味と品質を保ち、利益も守った「吉野家ウェイ」
2008年04月09日 (水)
-
第2章 「客数主義・来店頻度主義」は、築地で生まれた事業化戦略だった
2008年04月14日 (月)
-
第3章 売上1割増を達成する方法
2008年04月21日 (月)
-
第4章 アメリカ牛にこだわったのは、お客さまの期待を裏切らないため
2008年05月08日 (木)
-
第5章 会社更生で学んだこと
2008年05月13日 (火)
注目の記事
-
11月20日 (水) 更新
aiaiのなんか気になる社会のこと
「aiaiのなんか気になる社会のこと」は、「社会課題」よりもっと手前の「ちょっと気になる社会のこと」に目を向けながら、一市民としての視点や選....
-
10月22日 (火) 更新
本から「いま」が見えてくる新刊10選 ~2024年10月~
毎日出版されるたくさんの本を眺めていると、世の中の”いま”が見えてくる。新刊書籍の中から、今知っておきたいテーマを扱った10冊の本を紹介しま....
-
10月22日 (火) 更新
メタバースは私たちの「学び」に何をもたらす?<イベントレポート>
メタバースだからこそ得られる創造的な学びとは?N高、S高を展開する角川ドワンゴ学園の佐藤将大さんと、『メタバース進化論』を出版されたバーチャ....
現在募集中のイベント
-
開催日 : 12月17日 (火) 19:00~20:30
note × academyhills
メディアプラットフォームnoteとのコラボイベント第1回。近著『きみのお金は誰のため』が25万部超のベストセラーとなっている、社会的金融教育....
「そもそもお金って何?未来をつくるためのお金の教養」
-
開催日 : 11月28日 (木) 19:00~20:30
World Report 第10回 アメリカ発 by 渡邊裕子
いま世界の現場で何が起きているのかを、海外在住の日本人ジャーナリスト、起業家、活動家の視点を通して解説し、そこから見えてくることを参加者の皆....
「ハリス V.S. トランプ 米国大統領選挙結果を読み解く」