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カフェブレイク・ブックトーク『「天の川」の先の先』

更新日 : 2008年09月24日 (水)

第2章 安全な宇宙旅行を計画するために……

『もしも宇宙を旅したら—地球に無事帰還するための手引き』

澁川雅俊: 米スペースシャトルの事故のことがまだ記憶に残っています。それ以前の報道で、宇宙船がいかにも易々と打ち上げられ、所定の飛行任務を果たし、無事帰還している印象をいつも受けていました。そんなナイーブな考えに対して、『もしも宇宙を旅したら—地球に無事帰還するための手引き』(ニール・F・カミンズ著、三宅真砂子訳、2008年ソフトバンククリエイティブ刊)は、宇宙のさまざまな危険についておさらいしています。

例えば、空気や重力のことだけではなく、宇宙空間の浮遊物(流星や人工衛星とその破損部品)などとの衝突の危険性、星の上でのガスや地滑りや放射線の問題、さらには宇宙船の操作ミスや宇宙飛行技術のミス、医学的な問題、心理的な問題、飛行士同士の人間関係、帰還後の地上での生活の適応能力の問題など広範にわたって洗い出しています。

もっともこの本ではスペースシャトルでのこれまでの経験だけではなく、月や火星などの惑星への旅行なども含めてデータに基づいて安全な宇宙旅行をシミュレーションしています。

●宇宙エレベーター?!

『宇宙旅行はエレベーターで』
宇宙旅行について最近、『宇宙旅行はエレベーターで』(ブラッドリー・C・エドワーズ&フィリップレーガン著、関根光宏訳、2008年ランダムハウス講談社刊)という本が出されました。「宇宙エレベーター?そりゃ何だ!」ということになりそうですが、専門用語で軌道エレベーターなどとも呼ばれ、その発想は文学作品とのかかわりが強いとされています。例えば誰でも知っている「ジャックと豆の木」がそうです。

その童話は、まいた豆の蔓が雲の上に延びていき、その蔓をジャックがつたっていくと天まで昇ることができた、というものですが、ここでいう"エレベーター"は、簡単にいえば、例えば月と地球の間に鋼鉄の何万倍も強力なケーブルを張り渡し、それに箱を付けて人びとを天体に運ぶというものです。ちょっとした発想ですね。

この本は研究者と実業家による共著ですが、この二人はロケットに拠らないこの方法で、月や火星への宇宙旅行が2029年には可能になるといっています。

●愛おしい"お月様"、大事な"お日様"

『月の歩きかた』
『最新・月の科学』
宇宙旅行はこれまでSFが先行してきたような印象が強いのですが、人間と天体とのかかわりは昔から文学(神話や伝説を含めて)に著されてきました。

『月の歩きかた』(マイケル・カーロヴィッツ著、松井貴子訳、2008年二見書房刊)は、月に対する神秘性や信仰や詩情や科学技術の物語を活写しています。そして『月の科学—「かぐや」が拓く月探査』(青木満著、2008年ベレ出版刊)は、先行した無人機による月探査とアポロ計画の経緯と成果を紹介し、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2007年9月に打ち上げた探査機「かぐや」計画を解説しています。「かぐや」は『最新・月の科学』(渡部潤一編著、2008年日本放送協会刊)で紹介されている謎の数々を解明できるでしょうか。

月が私たちにとって最も親しいとすれば、太陽は最も大事な天体です。お日様が東から昇って西に沈み、翌日には再び東から出てくる現象は、人間にとってその生活に大きな影響を持つうえに、最も身近な不思議であったわけで、神話・伝承などで最高神などとして描かれることが多く、崇拝の対象となっていました。

『太陽からの光と風』
しかし月と比べ、それは一般にはあまりよく知られていません。『太陽からの光と風』(秋岡眞樹編著、2008年技術評論社刊)は、その意外と知らない太陽と地球の関係を私たちの日常生活を視座においている点で、読んでいて切実さを感じます。

※書籍情報は、株式会社紀伊国屋書店の書籍データからの転載です。

関連書籍

もしも宇宙を旅したら 地球に無事帰還するための手引き

カミンズ,ニール・F., 三宅真砂子
ソフトバンククリエイティブ

宇宙旅行はエレベーターで

エドワーズ,ブラッドリー・C., レーガン,フィリップ, 関根光宏【訳】
ランダムハウス講談社


月の科学—「かぐや」が拓く月探査

青木 満
ベレ出版

太陽からの光と風—意外と知らない?太陽と地球の関係

秋岡眞樹
技術評論社

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