記事・レポート
業魂を繋ぐ~日本の老舗、名店
「商は信なり」を体現する老舗
更新日 : 2018年06月13日
(水)
第4章 心とからだの健康に貢献する老舗
老舗温泉宿のイノベーション
澁川雅俊: 前述したように、日本には老舗旅館(温泉宿)が数多くあり、数百年以上の歴史を持つものは32を数えます。温泉場と言えば、「弘法大師がこの温泉を……」といった言い伝えを各地で耳にしますが、空海の生誕(774年)以前から栄えた温泉場も少なくありません。山梨県の西山温泉、兵庫県の城崎温泉、石川県の粟津温泉がそれに当たります。
副題に「日本で一番ほめてあげたい職場」とある『「小さな神様」をつかまえろ!』〔鶴岡弘之/PHP研究所〕は、逆境の中に突破口を見いだし復活を遂げた8つの会社、組織の物語です。その1つ、石川県の粟津温泉・のとやは1311年創業の旅館ですが、バブル崩壊後の大不況を乗り越えるべく、従来の経営や業界の慣習を打破しようと取り組んだ改革の軌跡が詳しく語られています。
『事業承継で生まれ変わる~後継者による中小企業の経営革新』〔日本政策金融公庫総合研究所編/きんざい〕は、事業承継に悩む経営者に向けた、やや専門的な書です。本書では、事業承継を通じて経営革新に成功した様々な企業が紹介されていますが、1502年創業の伊香保温泉・千明仁泉亭の項では、若女将が温泉宿の価値を再考し、経営危機を乗り越えるまでの奮闘が紹介されています。
『ちっちゃいけど、世界一誇りにしたい会社』〔坂本光司/ダイヤモンド社〕は、社員30人以下の小規模ながら、日本中から顧客が追いかけてくる8つの企業の物語が描かれています。那須塩原にある1551年創業の板室温泉・大黒屋もその1つに選ばれており、老舗旅館の伝統と現代アートの融合により、驚異のリピート率を獲得した理由が記されています。
『若手経営者が語る私の革新〈5〉』〔商工ジャーナル編集部編/商工中金経済研究所〕は、先代から事業を受け継ぎ、新たな事業を起こし、経営に革新をもたらした若手経営者20人の「老舗継承の覚悟」を紹介しています。安土桃山時代創業の伊香保温泉・ホテル木暮の項では、若女将が家族経営を基盤とした果敢な挑戦を語っています。
同じく安土桃山時代に創業し、415年続いていた福島県双葉郡大熊町の老舗旅館、玉の湯温泉・湯守玉林房は、東日本大震災後の東京電力福島第一発電所原子力発電所の爆発によって休業を余儀なくされました。“業魂”の継承が危ぶまれており、早期の再開業を祈念します。
箱根温泉にも江戸時代創業の温泉旅館があります。文士や役者、俳優などに愛された1625年創業の塔ノ沢温泉・福住楼の“業魂”継承については、『箱根温泉旅館・福住樓』〔折橋徹彦/創元社〕で紹介されています。副題に「行楽の社会心理史の試み」とあるように、当代女将の語りと営業記録を通じて、事業継承の要件を客観的な視点で明らかにしています。
副題に「日本で一番ほめてあげたい職場」とある『「小さな神様」をつかまえろ!』〔鶴岡弘之/PHP研究所〕は、逆境の中に突破口を見いだし復活を遂げた8つの会社、組織の物語です。その1つ、石川県の粟津温泉・のとやは1311年創業の旅館ですが、バブル崩壊後の大不況を乗り越えるべく、従来の経営や業界の慣習を打破しようと取り組んだ改革の軌跡が詳しく語られています。
『事業承継で生まれ変わる~後継者による中小企業の経営革新』〔日本政策金融公庫総合研究所編/きんざい〕は、事業承継に悩む経営者に向けた、やや専門的な書です。本書では、事業承継を通じて経営革新に成功した様々な企業が紹介されていますが、1502年創業の伊香保温泉・千明仁泉亭の項では、若女将が温泉宿の価値を再考し、経営危機を乗り越えるまでの奮闘が紹介されています。
『ちっちゃいけど、世界一誇りにしたい会社』〔坂本光司/ダイヤモンド社〕は、社員30人以下の小規模ながら、日本中から顧客が追いかけてくる8つの企業の物語が描かれています。那須塩原にある1551年創業の板室温泉・大黒屋もその1つに選ばれており、老舗旅館の伝統と現代アートの融合により、驚異のリピート率を獲得した理由が記されています。
『若手経営者が語る私の革新〈5〉』〔商工ジャーナル編集部編/商工中金経済研究所〕は、先代から事業を受け継ぎ、新たな事業を起こし、経営に革新をもたらした若手経営者20人の「老舗継承の覚悟」を紹介しています。安土桃山時代創業の伊香保温泉・ホテル木暮の項では、若女将が家族経営を基盤とした果敢な挑戦を語っています。
同じく安土桃山時代に創業し、415年続いていた福島県双葉郡大熊町の老舗旅館、玉の湯温泉・湯守玉林房は、東日本大震災後の東京電力福島第一発電所原子力発電所の爆発によって休業を余儀なくされました。“業魂”の継承が危ぶまれており、早期の再開業を祈念します。
箱根温泉にも江戸時代創業の温泉旅館があります。文士や役者、俳優などに愛された1625年創業の塔ノ沢温泉・福住楼の“業魂”継承については、『箱根温泉旅館・福住樓』〔折橋徹彦/創元社〕で紹介されています。副題に「行楽の社会心理史の試み」とあるように、当代女将の語りと営業記録を通じて、事業継承の要件を客観的な視点で明らかにしています。
薬屋(和漢方)も老舗がたくさん
澁川雅俊: 平安時代から江戸時代までを見ていくと、15の老舗薬屋がありました。
胃薬の三光丸については、『新日本永代蔵』〔舩橋晴雄/日経BP社〕で紹介されています。『日本永代蔵』は、井原西鶴による浮世草子の一点で、江戸庶民の暮らしを平易に描いており、金持ちはいかにして金持ちになったかなどを率直に著しています。一方、現代の永代蔵は「企業永続の法則」との副題が付されており、様々な分野からなる40社の事例をもとに、日本型企業の源流と発展の軌跡が描かれています。本書では、奈良県御所市にある1319年創業の三光丸薬店が手掛けてきた「配置売薬」の戦術が紹介されています。
『異彩を放つ石川の百年企業~永続的発展の秘訣を探る』〔碇山洋監修/能登印刷出版部〕は、県内にある「百年企業」25社がどのように危機の時代を乗り越えてきたのかを考察しています。慶長年間(1596~1615年)に創業した石川県白山市のコメヤ薬局については、その400年余の歩みを同社社長が開陳しています。
胃薬の三光丸については、『新日本永代蔵』〔舩橋晴雄/日経BP社〕で紹介されています。『日本永代蔵』は、井原西鶴による浮世草子の一点で、江戸庶民の暮らしを平易に描いており、金持ちはいかにして金持ちになったかなどを率直に著しています。一方、現代の永代蔵は「企業永続の法則」との副題が付されており、様々な分野からなる40社の事例をもとに、日本型企業の源流と発展の軌跡が描かれています。本書では、奈良県御所市にある1319年創業の三光丸薬店が手掛けてきた「配置売薬」の戦術が紹介されています。
『異彩を放つ石川の百年企業~永続的発展の秘訣を探る』〔碇山洋監修/能登印刷出版部〕は、県内にある「百年企業」25社がどのように危機の時代を乗り越えてきたのかを考察しています。慶長年間(1596~1615年)に創業した石川県白山市のコメヤ薬局については、その400年余の歩みを同社社長が開陳しています。
『タケダ、シオノギ、タナベ 21世紀へのサバイバル戦略』〔加来耕三/二見書房〕には、“道修町御三家”にルーツを持つ大手製薬3社の挑戦が綴られています。大阪・船場にある道修町は江戸時代、国内外の薬が集まる「薬のまち」として栄えた場所。1678年にこの地で創業し、「たなべや薬」を販売した田邉屋(現・田辺三菱製薬)の伝統と改革も詳しく語られています。
該当講座
【アペリティフ・ブックトーク 第44回】
業魂を繋ぐ~日本の老舗、名店 (19:15~20:45)
ライブラリーフェロー・澁川雅俊が、さまざまな本を取り上げ、世界を読み解く「アペリティフ・ブックトーク」。
44回目となる今回は、様々な業種における“老舗”をテーマに、古くより続く事業を今に継ぐ仕組み・その展開を、関連書籍と共に紐解きます。
業魂を繋ぐ~日本の老舗、名店 インデックス
-
第1章 日本は世界一の「老舗大国」
2018年06月13日 (水)
-
第2章 老舗菓子屋が刻んできた革新の歴史
2018年06月13日 (水)
-
第3章 老舗の甘み・辛みは相半ば
2018年06月13日 (水)
-
第4章 心とからだの健康に貢献する老舗
2018年06月13日 (水)
-
第5章 老舗の老舗たる由縁を語る本
2018年06月13日 (水)
注目の記事
-
11月26日 (火) 更新
本から「いま」が見えてくる新刊10選 ~2024年11月~
毎日出版されるたくさんの本を眺めていると、世の中の”いま”が見えてくる。新刊書籍の中から、今知っておきたいテーマを扱った10冊の本を紹介しま....
-
11月26日 (火) 更新
メタバースは私たちの「学び」に何をもたらす?<イベントレポート>
メタバースだからこそ得られる創造的な学びとは?N高、S高を展開する角川ドワンゴ学園の佐藤将大さんと、『メタバース進化論』を出版されたバーチャ....
-
11月20日 (水) 更新
aiaiのなんか気になる社会のこと
「aiaiのなんか気になる社会のこと」は、「社会課題」よりもっと手前の「ちょっと気になる社会のこと」に目を向けながら、一市民としての視点や選....
現在募集中のイベント
-
開催日 : 01月30日 (木) 19:00~20:30
note × academyhills
メディアプラットフォームnoteとのコラボイベント第2回。映画『ビリギャル』の主人公のモデルで教育家として活動する小林さやかさんと、元陸上選....
小林さやかと為末大が語る『人間の学び・成長のプロセスとマインドセット』