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世界初! 人工クモ糸繊維の量産基盤技術確立までの物語

スパイバー・関山和秀:「QMONOS」開発秘話と、クモの糸で変わる未来

日本元気塾経営戦略キャリア・人
更新日 : 2013年12月09日 (月)

第8章 タンパク質で世界のものづくりを変える

関山和秀(スパイバー株式会社 代表取締役社長)
 
可能性は「20のn乗」

関山和秀:  タンパク質は、ユニークかつ不思議、大きな可能性を秘めた物質です。20種類のアミノ酸が数十〜数千個、直鎖状に結合した分子構造をもち、それらの組み合わせを変えるだけで、髪の毛や筋肉、ホルモン、酵素、絹糸やクモの糸が作られています。組み合わせのパターンは「20のn乗」であり、ほぼ無限のバリエーションが生み出せるのです。

また、アミノ酸自体も実に多彩な特性をもっています。疎水性の高いもの、親水性の高いもの、プラス電荷をもつもの、マイナス電荷をもつものなどがあります。どのアミノ酸を、どの順番で、どこに入れれば、目指す特性をもったタンパク質になるのか。私たちは合成クモ糸繊維の研究を通して、20種類のアミノ酸を、まるでおもちゃのブロックのように自由に組み合わせながら、様々な特性をもつタンパク質を作り出しているのです。

単純な構造だけではなく、複雑な高次構造まで意図した通りに作り出せることが、タンパク質の最大の特長です。サステイナブルな原料であるタンパク質を使いこなし、超高性能素材を自由にカスタマイズできるようになれば、ものづくりの概念は大きく変わっていきます。それは、間違いなく人類にとっての大きな一歩となるはずです。

「QMONOS」で一大産業を創出する

関山和秀:  石油由来の原料と膨大なエネルギーを投じて大量にものを生産し、大量に消費する時代は、もはや終わりに近づいています。今後はコアなニーズにあった材料を、持続可能な方法で必要量だけを作る方向へとシフトしていくでしょう。私たちが目指しているのは、「QMONOS」という材料を足がかりに、従来は未開拓だったタンパク質を素材として使いこなす分野を切り拓き、一大産業を創出していくこと。そして、この分野において、日本がイニシアティブをとっていくことです。

5億4千万年前、地球上で一大イベントが起こりました。「カンブリア爆発」です。古生代カンブリア紀初頭、ものすごい数の生物が一気に出現し、今日見られる生物の門(※編注)は出そろったと言われています。地球史を大きく変えた生物多様性のビッグバンが起きたわけです。そして、カンブリア爆発の数億年前、遺伝子レベルでの多様性はすでに生じていたと言われています。

私たちはいま、試行錯誤しながら未知の遺伝子を作り出し、膨大な数のデータを蓄えています。まさに、カンブリア爆発が起きる前と同じ状態なのです。近い将来、タンパク質を自在に操る新たな技術を開発し、世界のものづくりにビッグバンを起こそうとしているのです。

(※編注)

生物学における分類の一階級。上から、界・門・綱・目・科・属・種。


該当講座

奇跡の新素材「クモの糸」を語る 

~無限の組合せがものづくりの概念を変える~

奇跡の新素材「クモの糸」を語る 
関山和秀 (Spiber株式会社 取締役兼代表執行役)
米倉誠一郎 (日本元気塾塾長/法政大学イノベーション・マネジメント研究科教授/ 一橋大学イノベーション研究センター名誉教授)

関山和秀(スパイバー㈱代表取締役社長)×米倉誠一郎(日本元気塾塾長/一橋大学イノベーション研究センター教授)
脱石油の超高性能バイオ素材として注目される「クモの糸」。米軍も開発に取り組むも、断念したと言われる、夢の繊維の量産化技術の開発に、世界で初めて成功した、スパイバー株式会社の関山和秀氏をゲストに迎えます。この分野の市場規模は、数千億円~1兆円と推測されます。今、世界をリードする「スパイバー」の最新の開発状況、今後の展開を伺います。


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