記事・レポート

『暮しの手帖』の暮らしと仕事

編集長・松浦弥太郎が「文章術」を初公開!

更新日 : 2013年05月27日 (月)

第4章 文章のバランスと「心地よく食べられる量」

松浦弥太郎(『暮しの手帖』編集長/文筆家/書店店主)

 
「はじめ」「真中」「おわり」を意識する

松浦弥太郎: 紙芝居をつくっただけでは、なかなかいい文章は書くことができません。淡々としていて面白くないからです。そこで、「はじめ」と「真中」と「おわり」を常に意識して書いてみてください。そうするとバランスが取れるのです。始めが一言でもいいし、真ん中が短くても、終わりが長くてもいい。「はじめ」と「真中」と「おわり」を意識してバランスを取ってみると、1枚目の紙芝居をつくると、実はそのたった1枚のなかにも物語ができてくるもの。次のページをめくらなくても、まぁまぁ面白いものができあがっているはずです。

はじめに「男性の魅力」とは何だろう、という話をしました。「頭が悪くて行動力のない人」は2番目で、「頭が悪くて行動力のある人」が4番目でしたね。この差はバランスです。分かりづらい文章は、バランスが悪かったり、真中やおわりが抜け落ちています。あるべきものがないので、何が書いてあるのかが分からないのです。たとえ140文字のつぶやきであっても、必ずこれを意識してみてください。

ちょっと物足りないくらいシンプルに書く

松浦弥太郎: もうひとつ。できるだけ簡潔にするべきです。長くなれば長くなるほど、文章は複雑化していってしまう。Facebookやブログでも、長い文章はなかなか読んでもらえません。お茶わん1杯のご飯を盛るにしても、人それぞれの「丁度よさ」があるのです。だから、皆が心地よく食べられる量だけ書く。シンプルに書くのが一番で、少し物足りないくらいの方が残さなくていいわけです。

このように、いつも読み手のことを考えることが大切なのです。手紙を書くのも、Facebookに書くときも、仕事で企画書を書くときも、まったく同じです。さらに言えば、プレゼンテーションで話をするときだって同じなのです。他人に何かを伝えるためには、相手の気持ちになれないとダメなのですね。なかには「面白くない」とか「嫌だな」と思う人がいるかもしれない。読む人の気持ちにいろいろと考えを巡らせてみてください。