記事・レポート
中田英寿×栗林隆×南條史生「伝統が開く日本の未来」
アートって、こういうことだったのか!
更新日 : 2012年05月10日
(木)
第3章 境界へのこだわり、挑戦、困難
栗林隆: (上から2番目の写真)ベースができたら世界地図を上から貼って、トレースして写していきました。地図はデータで売られているものを使いたかったんですけど、これがまた高いんですよ。どうしようか悩んでいたら、うちのアシスタントが「栗林さん、これでやりましょう!」ってビーチボールを持ってきて、「ええっ!?」みたいな感じだったんですけど、知り合いを巻き込んで、徹夜で拡大コピーを200枚ぐらいしてもらいました。コピーは全部「反転」です。だから左右も上下も逆で、例えば日本なら北海道が上で、九州が下(※こうすることで、地球の内側から見たときに通常の形に見える)。
トレースした上にスタイロフォームをくっつけて立体的にしていくと、こうなります(上から3番目の写真)。これはゴールじゃないですからね。この上に和紙がきて、それを破かないようにして、最後に中の木を南極の穴から抜かなければいけないんです。
中田英寿: スタイロフォームというのは、発砲スチロールみたいなもの?
栗林隆: そういう感じです。建築で防音材とか断熱材として使われるやつですね。
南條史生: 山の高さは、相当誇張しているよね?
栗林隆: 内側から覗いたときに、大陸の部分が凹むわけですが、凹みが浅いと大陸と海のギャップが見えないんです。この作品で一番大事なのは、大陸と海の境界の部分なので、エッジをはっきりさせるために陸の部分はすごく強調しました。
実は工芸家の藤森さん(上から4番目の写真)も、型を初めて見たとき「ちょっと大きくないですか?」って。まさかこんな形で来るとは思っていなかったみたいです。しばらく「うーん、どうしよう……」という感じで眺めていましたが、僕は型を渡して「じゃあ藤森さん、後はよろしくお願いします」って。
中田英寿: 丸投げしたんだね(笑)。藤森さんは、スタイロフォームの表面に和紙をペタペタ貼っていくわけですか?
栗林隆: そうです。そのとき、陸と海の部分で和紙の厚さを変えて、内側から覗いたときに、光の透け具合で形がよくわかるようにするんです。
和紙が貼られた後、中の木は藤森さんのアイディアで、リフトで吊って、穴からアシスタントが入って抜きました(上から5番目の写真)。でも「スイカ状にくり抜くという話は何だったんだ?」というぐらい、結局全部壊さないとダメでした。実は「もし失敗して和紙が破けても、型はもう1回使えるな」なんて思っていたんですけど、全然無理。だから一発勝負になったんですけど、丸い形がよかったのか、和紙は厚いところでも3mmぐらいしかないのに意外と強度があって、グシャッとなることはなかったです。
中田英寿: 出来上がった作品に頭を突っ込んで中を観ると、このボコボコは本当にしっかりしていて、外から照明を当てるとさらにわかりやすくて「よくここまで再現したな」って、びっくりしました。(上から6番目の写真)
栗林隆: 陸と海のエッジが効いて、世界地図がバシッと出ました。特に日本とイタリアの部分は、かなり精密につくったんですよ。日本は僕らが住んでいる場所として、イタリアは「中田君が、きっとこだわるだろうな」と思って。でも全然反応してくれなかった(笑)。
中田英寿: 日本とエベレストしか観ていなかったです(笑)。
栗林隆: 照明は、どこにどう当てればちゃんとわかってもらえるか、すごく難しかったです(最後の写真)。ただ僕としては、地球に頭を突っ込んで「これは何だろう、わからないな」と思って頭を抜くときに、一瞬何かが見えればいいかなと。それはオーストラリアかもしれないし、南アメリカかもしれないけど、残像に残る地球みたいなものが見えればいいと。これが思った以上に、すごくいい感じで見えたのでよかったです。
トレースした上にスタイロフォームをくっつけて立体的にしていくと、こうなります(上から3番目の写真)。これはゴールじゃないですからね。この上に和紙がきて、それを破かないようにして、最後に中の木を南極の穴から抜かなければいけないんです。
中田英寿: スタイロフォームというのは、発砲スチロールみたいなもの?
栗林隆: そういう感じです。建築で防音材とか断熱材として使われるやつですね。
南條史生: 山の高さは、相当誇張しているよね?
栗林隆: 内側から覗いたときに、大陸の部分が凹むわけですが、凹みが浅いと大陸と海のギャップが見えないんです。この作品で一番大事なのは、大陸と海の境界の部分なので、エッジをはっきりさせるために陸の部分はすごく強調しました。
実は工芸家の藤森さん(上から4番目の写真)も、型を初めて見たとき「ちょっと大きくないですか?」って。まさかこんな形で来るとは思っていなかったみたいです。しばらく「うーん、どうしよう……」という感じで眺めていましたが、僕は型を渡して「じゃあ藤森さん、後はよろしくお願いします」って。
中田英寿: 丸投げしたんだね(笑)。藤森さんは、スタイロフォームの表面に和紙をペタペタ貼っていくわけですか?
栗林隆: そうです。そのとき、陸と海の部分で和紙の厚さを変えて、内側から覗いたときに、光の透け具合で形がよくわかるようにするんです。
和紙が貼られた後、中の木は藤森さんのアイディアで、リフトで吊って、穴からアシスタントが入って抜きました(上から5番目の写真)。でも「スイカ状にくり抜くという話は何だったんだ?」というぐらい、結局全部壊さないとダメでした。実は「もし失敗して和紙が破けても、型はもう1回使えるな」なんて思っていたんですけど、全然無理。だから一発勝負になったんですけど、丸い形がよかったのか、和紙は厚いところでも3mmぐらいしかないのに意外と強度があって、グシャッとなることはなかったです。
中田英寿: 出来上がった作品に頭を突っ込んで中を観ると、このボコボコは本当にしっかりしていて、外から照明を当てるとさらにわかりやすくて「よくここまで再現したな」って、びっくりしました。(上から6番目の写真)
栗林隆: 陸と海のエッジが効いて、世界地図がバシッと出ました。特に日本とイタリアの部分は、かなり精密につくったんですよ。日本は僕らが住んでいる場所として、イタリアは「中田君が、きっとこだわるだろうな」と思って。でも全然反応してくれなかった(笑)。
中田英寿: 日本とエベレストしか観ていなかったです(笑)。
栗林隆: 照明は、どこにどう当てればちゃんとわかってもらえるか、すごく難しかったです(最後の写真)。ただ僕としては、地球に頭を突っ込んで「これは何だろう、わからないな」と思って頭を抜くときに、一瞬何かが見えればいいかなと。それはオーストラリアかもしれないし、南アメリカかもしれないけど、残像に残る地球みたいなものが見えればいいと。これが思った以上に、すごくいい感じで見えたのでよかったです。
六本木アートカレッジ「伝統が開く日本の未来」
「なにかできること、ひとつ。」をテーマに様々な活動を続ける「TAKE ACTION」を通して、積極的に新しい価値発信を続ける中田氏。そのプロジェクトのひとつとして始まった「REVALUE NIPPON PROJECT」は日本の伝統・文化をより多くの人に知ってもらうきっかけをつくり、新たな価値を見出すことにより、伝統文化の継承・発展を促すことを目的として、気鋭の工芸作家とアーティストやクリエイターのコラボレーションで作品を作っています。今回、「REVALUE NIPPON PROJECT」2011年メンバーとして参加しているアーティスト栗林隆氏、森美術館館長南條史生氏、そして中田氏が、現在進行形のプロジェクトについて、さらに世界を知る三人から、これからの日本がつないでいくべき伝統・文化、そして新しい価値創造について語ります。
中田英寿×栗林隆×南條史生「伝統が開く日本の未来」 インデックス
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第1章 伝統工芸に新たな価値を加えてプロデュース
2012年05月07日 (月)
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第2章 和紙の地球《Erde(エルデ)》誕生秘話
2012年05月08日 (火)
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第3章 境界へのこだわり、挑戦、困難
2012年05月10日 (木)
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第4章 “新しさ”のない伝統工芸は“伝統”として生き残れない
2012年05月11日 (金)
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第5章 一番大事なのは「自分が楽しめるかどうか」
2012年05月14日 (月)
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第6章 自分の作品を目の前でオークションにかけられる気持ちは…
2012年05月15日 (火)
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第7章 重厚長大産業からソフト産業へ ~日本の新たなブランド力~
2012年05月17日 (木)
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第8章 1つひとつ丁寧に&信じることをやり続ける
2012年05月18日 (金)
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