記事・レポート
時代とともに生きる老舗「虎屋」が進化し続ける理由
~虎屋17代当主・黒川光博氏が語る伝統と革新の企業哲学~
BIZセミナーキャリア・人文化経営戦略
更新日 : 2011年12月19日
(月)
第4章 見えないところも手を抜かない
黒川光博: 毎年、歌会始の御題や、干支に因んだ菓子をつくるにあたり、社員から案を募集しているのですが、せっかくいい図案やおもしろいものが上がってきても、これまでは「それだと数がなかなかつくれないから」とあきらめることがありました。それを今、こういう姿勢を改めなければいけないと思っているところです。
虎屋の存在意義は、これは経営理念でもあるのですが「おいしい和菓子を喜んで召し上がって頂く」ということです。そのためには、どなたも見ていらっしゃらない場面でも、菓子づくりに愚直に取り組まなければいけないと思っております。
虎屋の存在意義は、これは経営理念でもあるのですが「おいしい和菓子を喜んで召し上がって頂く」ということです。そのためには、どなたも見ていらっしゃらない場面でも、菓子づくりに愚直に取り組まなければいけないと思っております。
例えば菖蒲饅(あやめまん)という、表面に菖蒲の絵を配した饅頭があります。菖蒲の花の部分は焼き印を押すのですが、葉っぱの部分は、下から上に向かって筆で描いています。上から描いても見た目には違いはないかもしれませんし、職人にとっては上から描いたほうが楽かもしれません。けれど葉っぱは下から上に向かって勢いよく伸びているのですから、たとえ絵であっても下から上に描く。そういうことが我々にとっては大切だといつも言っています。
当然、味見をします。しかしその味見であっても、お客さまが召し上がるような状況を実際につくって、座って、漆の器で楊枝を使って菓子を1つ食べてみることが大切だと私は思っています。こうして食べることによって、お客さまがお感じになる大きさや甘さ、硬さといったことがいろいろわかるわけです。
漆の器で食べるのは、手間がかかることかもしれません。下から上に筆を運ぶこともそうです。しかし、たとえ手間がかかることであっても怠らずやる。手間をかけながら、いかに早く正しくきれいにつくり上げるか。そういうことを究めながら質を徹底的に追及していくことが、虎屋という会社の存在意義だと思うのです。
こうしたことは、私一人が大きな声で言っていても、なかなか会社の中には浸透しません。これを浸透させるために、なるべく多くの時間を割いて、社員といろいろな形で直接話をしています。
時代とともに生きる老舗「虎屋」が進化し続ける理由 インデックス
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第1章 創業は室町時代。先人はいかにして危機を乗り越えてきたのか
2011年12月13日 (火)
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第2章 「トラヤカフェ」挑戦の舞台裏~保守にならず、今を生きる~
2011年12月15日 (木)
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第3章 新たな挑戦で、和菓子の人気を再認識
2011年12月16日 (金)
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第4章 見えないところも手を抜かない
2011年12月19日 (月)
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第5章 大切なのは「今、オープン、スピード感」
2011年12月20日 (火)
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