記事・レポート
安藤忠雄「希望は、自分の心のなかに」
東日本大震災 復興チャリティセミナー
更新日 : 2011年10月07日
(金)
第1章 ある日、目が覚めたら企業がいなくなっていた
阪神・淡路大震災、東日本大震災の復興に深く関わってきた建築家・安藤忠雄。
今回の震災では復興構想会議の議長代理を務め、5月には震災遺児の育英資金を立ち上げた。そのなかで何を思い、何を考えたのか。安藤が考える被災地復興、日本復権の鍵は何か。「こんなときこそ安藤忠雄の話が聞きたい」と集まった人々に、一段とパワーアップした安藤が熱く語ったこととは……。そのエッセンスをレポートする。
(文中敬称略/文・フリーライター 太田三津子)
「ある日、目が覚めたら
企業がいなくなっていた。
国が具体的なビジョンを示さなければ、
そうなります」
安藤忠雄は復興構想会議については多くを語らない。自由に発想し、自ら行動することを旨とする安藤の提案は極めて大胆だが、常に具体的であり、現実に即したものだ。この会議がそれとはかなり肌合いが違う場であったことは想像に難くない。安藤は復興構想会議にこだわらず、今、日本が成すべきこと、我々が成すべきことを語った。
第一に、国は将来の具体的なビジョンを表明すべきだと言う。「誰もが一番知りたいのは、この先日本がどうなるのかということだ。国が具体的なビジョンを示さなければ、企業も海外に出て行かざるを得ない」。
安藤は、元気な企業が次々に日本を離れていくのを目の当たりにしている。安藤の事務所にも海外から「日本村をつくってくれ」という話がくる。日本企業を誘致するためだ。「日本企業から税金をとらなくても、雇用が増える分で十分にペイする」という海外諸国に対し、法人税の引き下げさえも見送った日本。「これでは目が覚めたら日本から企業がいなくなっていた、ということになりかねない。それがあまり報道されないのが不思議だ」。
エネルギー問題もしかり。国が具体的なビジョンを示さなければ、企業の海外シフトは加速する。「たとえば、原子力発電の割合は2030年までに15%にします、減少分は省エネルギー(7.5%)と自然エネルギー(7.5%)でカバーして震災前のエネルギーを確保します、といったビジョンを示せば、苦しくても日本に留まる企業も出てくる」。
被災地の復興は、海岸線から100mくらいを国有化して進めるべきだと言う。20分の1の勾配であれば、海岸線から100m内陸に入ると5m、200mなら10m標高が高くなる。つまり、その分だけ防潮堤を低く抑えられる。「もし、海岸線に高さ10mの防潮堤を壁のように築いたら凄まじい景観になる。それが心に残るふるさとの景色といえるだろうか、ふるさとに愛情を抱く子どもたちが育つだろうか」と問いかける。
「被災地の復興はまず港から」、「木造でも地震に強い建築物はできる。地元の間伐材を使って小学校や中学校を建設すればいい」とも言う。間伐材を利用すれば、森を守ることができる。間伐材を使った集成材を中国の大理石の廃材と交換すれば、復興に大理石がふんだんに使える。このように、流通、産業、風景まで重ね合わせたダイナミックな復興ビジョンが必要と語る。
肝心の国が動かないならば、「我々ひとりひとりが声を挙げなければいけない。しかし、政局の混迷を批判はしても政治に参加しようとはしない。自ら考えて行動する人が少ない。それが日本の最大の問題だ」。
企業がいなくなっていた。
国が具体的なビジョンを示さなければ、
そうなります」
安藤忠雄は復興構想会議については多くを語らない。自由に発想し、自ら行動することを旨とする安藤の提案は極めて大胆だが、常に具体的であり、現実に即したものだ。この会議がそれとはかなり肌合いが違う場であったことは想像に難くない。安藤は復興構想会議にこだわらず、今、日本が成すべきこと、我々が成すべきことを語った。
第一に、国は将来の具体的なビジョンを表明すべきだと言う。「誰もが一番知りたいのは、この先日本がどうなるのかということだ。国が具体的なビジョンを示さなければ、企業も海外に出て行かざるを得ない」。
安藤は、元気な企業が次々に日本を離れていくのを目の当たりにしている。安藤の事務所にも海外から「日本村をつくってくれ」という話がくる。日本企業を誘致するためだ。「日本企業から税金をとらなくても、雇用が増える分で十分にペイする」という海外諸国に対し、法人税の引き下げさえも見送った日本。「これでは目が覚めたら日本から企業がいなくなっていた、ということになりかねない。それがあまり報道されないのが不思議だ」。
エネルギー問題もしかり。国が具体的なビジョンを示さなければ、企業の海外シフトは加速する。「たとえば、原子力発電の割合は2030年までに15%にします、減少分は省エネルギー(7.5%)と自然エネルギー(7.5%)でカバーして震災前のエネルギーを確保します、といったビジョンを示せば、苦しくても日本に留まる企業も出てくる」。
被災地の復興は、海岸線から100mくらいを国有化して進めるべきだと言う。20分の1の勾配であれば、海岸線から100m内陸に入ると5m、200mなら10m標高が高くなる。つまり、その分だけ防潮堤を低く抑えられる。「もし、海岸線に高さ10mの防潮堤を壁のように築いたら凄まじい景観になる。それが心に残るふるさとの景色といえるだろうか、ふるさとに愛情を抱く子どもたちが育つだろうか」と問いかける。
「被災地の復興はまず港から」、「木造でも地震に強い建築物はできる。地元の間伐材を使って小学校や中学校を建設すればいい」とも言う。間伐材を利用すれば、森を守ることができる。間伐材を使った集成材を中国の大理石の廃材と交換すれば、復興に大理石がふんだんに使える。このように、流通、産業、風景まで重ね合わせたダイナミックな復興ビジョンが必要と語る。
肝心の国が動かないならば、「我々ひとりひとりが声を挙げなければいけない。しかし、政局の混迷を批判はしても政治に参加しようとはしない。自ら考えて行動する人が少ない。それが日本の最大の問題だ」。
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第1章 ある日、目が覚めたら企業がいなくなっていた
2011年10月07日 (金)
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2011年10月11日 (火)
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該当講座
3月11日の震災以降、「東日本大震災復興構想会議」の議長代理就任をはじめ、震災遺児を支える「桃・柿育英会 東日本大震災遺児育英資金」を立ち上げるなど、被災者支援に尽力されている建築家・安藤忠雄氏。本セミナーでは、安藤氏が思う“日本再生”のために必要なリーダーシップ、組織について、また各復興プロジェクトの現状について、お話いただきます。
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