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「ガッツリ」にがっくり~すてきな日本語!?~

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更新日 : 2011年08月05日 (金)

第6章 日本語むかしむかし

六本木ライブラリー ブックトーク 紹介書籍

澁川雅俊: ここで少し視点をかえ、日本語の成り立ちについて見てみましょう。

日本語の歴史について『日本語の歴史』(山口仲美)は、奈良時代から明治時代以降にわたり、それぞれの時代の発展を特徴づけて解説しています。またこの著者は、現代日本語の成り立ちにおける話しコトバと書きコトバのせめぎあいについても解き明かしています。一般人の日常生活では話すことと書くことの違いを意識することはあまりありません。しかし現代フランスの思想家デリダが取り上げて以来、書くという言語活動の重要性がとりわけ意識されるようになっています。

日本語がどこから伝わったかについては昔からいろいろと推測されていますが『日本語の教室』(大野晋)は、南インドのタミル語がその起源ではないかとしています。また最近出された『日本語の正体』(金容雲)で著者は、4世紀頃の古代の日朝交渉史にさかのぼり、韓国語との比較のうえで、「倭の大王は百済語で話す」そして「百済語が日本語で、百済語を投げ出したのが韓国語だった。」などと主張しています。

しかし、日本語の起源、あるいは系統については韓国語も学問的にはその一つではあっても、さまざまな仮説があって明らかではないというのが通説のようです。

以下に何点かの、日本語の成り立ちにかかわる類書があるので紹介します。『原始日本語のおもかげ』(木村紀子)は、仏教と共に中国から漢字が伝わって日本語がはじめて古事記や万葉集に書かれる前の、音声だけの太古の日本語探しをしています。確かに文字を持たなかった太古の日本人はどんなコトバをどのように発音して使っていたのでしょうか、興味がわきますね。

一方『漢字を飼い慣らす』(犬飼隆)は、文字として書かれる日本語の成り立ちについて考察しています。漢字が渡来した時代の識者たちが日本語の話しコトバに合わせて書きコトバの日本語を作ったことや、漢字を簡略化したり、崩したりして片仮名や平仮名を作り出したことは漢字の日本語化です。さらに著者は本文で、古代日本に『文字を「書く」という動詞は、日本語には文字がなかったのだから、固有語には存在しなかった。「かく」という動詞は、「表面をかく(他動詞)」「汗をかく(自動詞)」のような意味用法でもともと存在していた。紙の表面を筆で「かく」動作を漢字という型にはめて「書く」にした』と述べ、漢字によって<鋳直し>された(変えられた)日本語もあることを指摘しています。これもおもしろいですね。

さらに、日本語を読むための漢字辞典『新潮日本語漢字辞典』を企画、執筆、編纂した著者による『漢字は日本語である』(小駒勝美)も漢字の日本語化を日本人の優れた言語能力として称えています。

おそらくこれも日本語の成り立ちというカテゴリーに収められるべきものでしょうが、ちょっと盲点を突いたような本があります。『ん-日本語最後の謎に挑む』(山口謠司)は、五十音には含まれていない、母音でも子音でもなく、清音でも濁音でもない、単語としての意味を持たず、決して語頭には現れず、かつては存在しなかったといわれている、「ん」とは一体何なのか、それはいつ誕生し、どんな影響を日本語に与えてきたのかを追求しています。

ところで外国人作家でありながら、日本語で小説を書き、数々の文学賞を受賞しているリービ英雄は最近、『我的日本語』(リービ英雄)を出しました。彼は「書くということ、小説、文学を創作するということは、言葉の歴史を意識しながら行うものだ、…(中略)…現代を書きつつも、その言葉の歴史を意識する。そこに日本語による、もうひとつのWorldの可能性があると、ぼくは思う」と書き、記紀や万葉集はじめ日本の古典や近代文学を通じて自得した経験的、つまり「言葉の歴史を意識」することを創作の妙としています。

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