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のんびりいこうよ!

あなたはのんびり派、それともモーレツ派?

更新日 : 2010年06月25日 (金)

第3章 「よく学びよく遊べ」

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●閑と、その閑を持て余さない生き方

澁川雅俊: 勝間の“独立自尊”を世俗的な意味での方法論、とりわけ現代日本女性の自律を促すハウツウであると、簡単に切って捨ててしまうのはけして妥当でないでしょう。なぜならば、現にそれが多くの人たちから賛同を得ているからです。そこで私は、勝間でも香山でもないもうひとつ別の側面から、幸せで、豊かな生活について考える本を探してみました。

人に幸せだとか、豊かだとかを感じさせる要件について、私は、20世紀初頭の英国外相であったエドワード・グレイの幸福の条件(『小泉信三全集第14巻』、文藝春秋社、p.85)をいつも引用しています。それは、すなわち「一は、吾々の行動を導く何等かの道徳的基準、二は、よき家族と友、三は、己の存在を有意義ならしめる何等かの仕事、四は、或る程度の閑(レィジュア)とその閑の或る使い方」というものです。これら4つの条件一つひとつの実装が、必ずしも容易でないうえに、それらが完全に備わった時に人は幸せを感じるとグレイは言っているのです。

私はここで「のんびりいこうよ!」というテーマに即して、「或る程度のレィジュアの時間とその過ごし方」に着目し、それに関する本を探してみました。

ここで言われている<閑>ですが、引用文では<レィジュア>(leisure)とわざわざ補われているので、日本生産性本部の『レジャー白書』の最新版(09年版)をちょっと覗いてみました。それに現代日本人の閑の使い方が実態的にとらえられています。

「平成20年のわが国のレジャーは、一言でいえば「年前半は好調、後半急速に低迷」。(中略)活性化してきているのは、家まわりの“日常型レジャー”である。」余暇活動の参加人口を見ると「“巣篭もり消費”が話題になる中、平成20年は単価が安く、家庭や近場で繰り返し参加して楽しめるような日常型レジャーの伸びが顕著であった。「パソコン」の420万人増をはじめ、「ビデオの鑑賞(レンタル含む)」、「音楽鑑賞(CD、レコード、テープ、FMなど)」「テレビゲーム(家庭での)」「園芸、庭いじり」等が大幅増。また近年のランニングブームを反映し、「ジョギング、マラソン」も活発だった。」

しかしグレイは、それらとは別の「閑とその使い方」を念頭に置いていたのではないでしょうか。グレイがそのことについて詳しく論じている本に辿り着けなかったので類推する以外にないのですが、例えばそれは、『働くことの意味』(橘木俊詔編著、ミネルヴァ書房)で論じられているように、働くこととの関連でとらえられる概念なのではないでしょうか。ことばとしては、「レジャー」でもいいし、「リクリエーション」もしくは「余暇」などとも言われているのですが、それを産業とかビジネスと結びつけてしまうと、どうしても生産性などという勝間的発想に繋がってしまいます。

ここでいう「閑」は、仕事や家事や義務的な人付き合いなどに費やされる時間以外の時間(閑、暇、または隙)のことで、その時間の使い方については、個々のさまざまな欲求が基になり、さまざまな行為・行動になって現れるはずなので、それを観光、行楽、映画鑑賞、音楽鑑賞、園芸などステレオタイプに当てはめてしまってはいけないでしょう。

●「粋に、遊べ」

人生のあり方を表現する慣用句に「よく学びよく遊べ」というのがありますが、グレイの第4の条件を、この「よく遊べ」の観点からとらえてみるとどうなるでしょうか。

ここにも『人生「仕事だけ」は、つまらない。「遊びだけ」は、もっとつまらない。仕事が男の「懐を深く」し、遊びが「時流を読む」を養う。』などとその帯評に記されている『大人の流儀—男を磨け、粋に遊べ』(川北義則著、PHP研究所)があり、ぶれず、振りまわされないその人ならではの生き方、あるいは生き様をするにはどうすればよいかが論じられています。そしてこの本では、粋な遊びは豊かさをもたらすと言っています。

それでは「粋」とはなんでしょうか? それは意味のうえでは、「野暮」の反意語でもあるのですが、その根元的な究明を試みた本に『「いき」の構造 他二篇〔改訂版〕』(九鬼周造著、岩波文庫)があります。この論文は1930年に発表されました。

この本は、例えば『いきの構造を読む』(安田武・多田道太郎共著、朝日選書)はじめ、日本文化、あるいは国民性を追究する時の古典として、これまでにたびたび出版されてきました。

「粋」であることは、とりわけ日本男子の憧れであったらしく、近年になっても『江戸に学ぶ「おとな」の粋』(神崎宣武著、角川ソフィア文庫)、『日本人なら身につけたい江戸の「粋」』〔植月真澄著、KAWADE夢新書〕『江戸「粋」の系譜』(奥野卓司著、アスキー新書)などが、江戸時代に培われた日本人独自の美意識を紹介しています。

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