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「したたかな生命~進化・生存のカギを握るロバストネスとは何か~」

更新日 : 2009年07月03日 (金)

第19章 二酸化炭素も怖いが、メタンの方が影響は大きい

竹内薫さん

北野宏明: 今現在、我々が直面している温暖化は二酸化炭素濃度が上がるからだと言っているけれど、本当はメタンの話もしなくちゃいけないわけですね。

北野宏明: しなくちゃいけない。永久凍土が溶け始めると、メタンがドンと出てきますから、これが始まるともう手がつけられない。二酸化炭素も怖いですが、メタンの方がインパクトは大きいのです。

あと、メタンハイドレートもあります。海の温度が変わってメタンハイドレートがバブリングして溶け始めるとメタンプルームという気泡の柱になって大気中にどんどん出始める。こうなると全く話にならないです。それが始まると、これはもう終わりですね。

メタンプルームというのは普通でもある程度は起きています。バミューダトライアングルがありますが、あそこで船が沈んだのはメタンプルームに引っかかったという話があるんです。あそこもメタンハイドレートがありますから、メタンがバブリングしてバーッと上がってきますよね。

竹内薫: 海底から出てくるのですか?

北野宏明: 海底から出てきます、大陸棚にありますから。メタンが日本はすごく豊富で、メタンを採掘してガスにしてエネルギーにするという話がありますが、それが実用化すると、日本は多分かなり大きなエネルギー大国になりますよ。

竹内薫: それは、地下にあるわけですね。

北野宏明: 地下というか大陸棚の多分表面だと思います。

竹内薫: そこを掘っていくと出てくる。

北野宏明: そこを掘っていくと出てくるのですが、それを採掘するのは、あまり簡単ではないのですが、今は技術がありますから採掘できます。そのメタンハイドレートというのを僕は実際に見たことがあるのですが、ブルーの炎なんです。ブルーの炎の下は氷ですから、触ると下は冷たいんです。すごく不思議。手に持つと冷たいんだけれど、上はブルーの炎なんです。

竹内薫: 面白いですね。でも、それが地球を滅ぼす。

北野宏明: 滅ぼすというか、それを採掘すればいいんだけれど、それがメタンになって出てきちゃうと大変です。バミューダトライアングルはそれが出てくると言われますね。僕はその話が昔結構好きだったんですが、船乗りが「海の周りが白くなった」と言う。白くなったというのはガスですよね。それでなぜ沈むかというと、下からバブルが出てきているんですね。ということは空気の上に船が浮いているわけだから、ボーンと落ちるわけですよ。だって、もはや水の上じゃないんだから。

竹内薫: 大量のメタンガスがドバッと上がってきてしまったと。

北野宏明: それでストンと落ちていくわけです。周りが白くなって舵も効かなくなってスーッと落ちて、それでメタンの方に行ってしまえば、水が上からボーンときますから。それは一瞬にして行方不明になります。

バミューダトライアングルのメカニズムは多分それでしょう。メタンガスが空気中に行けば、昔のプロペラ機などはひとたまりもないでしょう。全部かどうか分かりませんが、それが多分メカニズムだと思います。まあ、2、3名は宇宙人に捕捉されているかもしれませんが(笑)。
(その20に続く、全23回)

※この原稿は、2008年7月3日に開催したRoppongi BIZセミナー「したたかな生命~進化・生存のカギを握るロバストネスとは何か~」を元に作成したものです。

※本セミナーで取り上げている病気や疾患などの説明および対処方法は、「ロバストネス」の観点からの仮説です。実際の治療効果は一切検証されていません。講師およびアカデミーヒルズは、いかなる治療法も推奨しておりませんし、本セミナーの内容および解釈に基づき生じる不都合や損害に対して、一切責任を負いません。病気や疾患などの治療については、信頼できる医師の診断と指示を必ず仰いでください。

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該当講座

したたかな生命
進化・生存のカギを握るロバストネスとは何か
北野宏明 (ソニーコンピュータサイエンス研究所 代表取締役社長  )
竹内薫 (作家・サイエンスライター・理学博士)

大腸菌、癌細胞、ジャンボジェット機、吉野家、ルイ・ヴィトン、一見するとばらばらなこれらのものには共通点があります。それが「ロバストネス」。「頑健性」と訳されることの多い言葉ですが、その意味するところはもっとしなやかでダイナミックなものです。システム生物学から生まれたこの基本原理は取り巻く環境の幅広い....


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