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戸田奈津子氏が語る「映画の魅力を表現する字幕翻訳」

~1秒4文字、10文字×2行の世界~

更新日 : 2010年05月26日 (水)

第9章 アシスタントは、いません

戸田奈津子氏

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戸田奈津子: 1本の映画はひとりでやっています。「いっぱいアシスタントがいるんですよね?」と聞かれますが、そんな人はおりません。一語一語、全部ひとりでやっています。しかも1本を1週間でやらされるのです。すごいハードワークでしょう?(笑)1週間から、長くてせいぜい10日です。

もちろん、忙しいからアシスタントは欲しいです。でも、この仕事は分業ができません。なぜかというと、1つのドラマでキャラクターを通して芝居をしていくわけですから、ちょっとした言葉づかいが翻訳者によって違うと、そのキャラクターが分解してしまうからです。

例えば、英語で一人称は「I」、二人称は「You」、どんな人でもこの2つしかありません。ところが日本語だと男の「I」と女の「I」は違うし、「You」も相手が誰かで言い方が違います。

翻訳者Aが、「この男のキャラクターには“俺”という主語を使わせよう」と思っても、翻訳者Bは「“僕”だな」と思ったりする。ある人物が、1本の映画の中で「俺」と言ったり「僕」と言ったりしたら、そのキャラクターは崩壊します。「俺」と言う男と、「僕」と言う男では、キャラクターのイメージが違うじゃないですか。混ざってはドラマになりません。

そういうことがいろいろあるので、ひとりでやるしかないのです。それに、そもそも1週間ですから、人の訳に手を入れてる時間もありません。自分でやったほうが時間も早く、統一したものができます。

そろそろ時間がなくなってまいりました。本当はスターのお話もしたかったのですが、時間切れになりました。字幕の基本的なことはお話しできましたので、ここでお開きにさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。(終)

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~1秒4文字、10字×2行の世界~
戸田奈津子 (映画字幕翻訳者)

戸田 奈津子(映画字幕翻訳者)
10月の六本木ヒルズクラブランチョンセミナーでは映画字幕翻訳者の戸田奈津子氏をお迎えします。「字幕翻訳者になりたい」と、夢を叶えるために、ゼロから出発し、門のない世界に挑み続け、字幕翻訳者として活躍するまでに20年間の歳月を振り返り、映画に魅せられたご自身の人生と、1秒4文字、10字×2行という厳しい文字制限の中から生まれる字幕翻訳の世界についてお話いただきます。


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