オピニオン・記事

ダンディズム~男が憧れる男、女が憧れる男

粋、男らしさ、そして生きざままで

更新日 : 2018年11月20日 (火)

第4章 こだわりのなかに垣間見えるダンディズム

「男らしさ」とはかくあるべし

澁川雅俊: 概して男性は、自分なりの理想の「男らしさ」を胸に抱き、その実現に向かって努力するものです。とはいえ、その要件は人によって実にさまざまです。

数々の文学賞を受賞してきた作家・伊集院静は、一方で‘無頼派’などと評されています。その由縁は、野球やボクシング、ゴルフなどを愛し、麻雀・競馬・競輪といったギャンブル好きであることに加え、かつて世の男たちを虜にしたある女優との恋愛、結婚が羨望されていたからでしょう。

この作家は小説以外にも優れたエッセイを多数著しており、「男の美眺」との副題が付けられた連作『大人の流儀』〔講談社〕では、自らの生きざまの底流にあるダンディズムが語られています。その一節には、「人はしばしば日常性を脱ぎ去り、孤独になって己を見つめようとする。見つめる先に何を期待するのだろうか。自分にしかできない生き方であろう」とあります。

石原慎太郎の『男の粋な生き方』〔幻冬舎〕の帯には、こう書かれています。「タフであれ、優しくあれ、何ももらわぬ勝者であれ。仕事、女、金、スポーツ、教養、生死……。文壇と政界の第一線に立ち、常に時代と格闘し続けた著者が豊かな経験と知識、感性から紡ぎだす究極のダンディズム」。この本ではとりわけ、若者に向けて人生を切り拓いていく覚悟のあり方を語っています。


一方、社会派ミステリー作家の森村誠一が『男の気くばり』〔ベストセラーズ〕で語るダンディズムは、さりげない気くばりと自分自身の内面から湧き出てくる人としての優しさ、そして、そのための普段の目くばりを重視しています。


元レーサーで自動車評論家の著者が『ダンディー・トーク〈1~2〉』〔徳大寺有恒/草思社〕で語るのは、クルマへの強烈なこだわりです。そこからさらに、生き方、スタイル、恋愛、経済批評まで、縦横にダンディズムの間口を広げています。快楽主義者を気取っていますが、考え方の根底には独特のストイシズムと美学が見え隠れするエッセイです。


ダンディズムを上品な男と捉え、その条件を具体的に挙げている本もあります。『男の品格を磨く事典』〔川北義則/PHP研究所〕は、「粋心・振舞い、自制心を養え」「女と綺麗に、上手く付き合う」「いまを生きる幸福感をうまく演出せよ」「忍辱力、辛抱力を養え」「常に思考せよ」「丁寧な心遣いを忘れるな」など、100以上もの条件を細かく上げています。


イタリア発の『モテる大人になるための50の秘密指令』〔P・バッカラリオ、E・ハウレギ、A・フェッラーリ/太郎次郎社エディタス〕は、児童書の体を取りながらも、ダンディな男になるためのミッションと達成のためのアドバイスが示されています。例えば、「人生二度なし。小さな自分で一生を終わるな!」「失敗にいじけるな! 失敗した時の態度で『器』がわかる」「決して逃げるな! カチ・マケは別だ」「女にモテる男になれ! 女を読めない男に楽しい人生はやってこない」「男の作法を身につけろ!」「運を変えられる男になれ! 運・不運に一喜一憂しない」などなど。


ファッションへの強烈な愛

澁川雅俊: はたして、ダンディズムの心根はどこにあるのでしょうか? 例えば、あるものに強烈なこだわりを持ち、愛情を傾けることも、ダンディズムの1つのあり方と言えそうです。

『紳士服を嗜む』〔飯野高広/朝日新聞出版〕の中で著者は、紳士服を「ジャケット、スラックス・パンツ、ベストが同じ色柄の同じ素材で作られ、ひと揃いに組み合わされた服」と定義しています。その上で、体に合ったスーツを着こなす。目的に合ったスーツを着こなす。嗜好を生かしたスーツを着こなす。自分の心身に合った一着を選ぶことは大切ですが、実行はなかなか難しいもの。本書はその悩みに対して的確に応えてくれています。冒頭に紹介した『JAPANESE DANDY』と併せて読めば、ダンディな人のこだわりがより鮮明になるでしょう。


紳士服に関するものでは、NHK「地球イチバン」から生まれた『WHAT IS SAPEUR? 貧しくも世界一エレガントなコンゴの男たち』〔影嶋裕一/祥伝社〕なる本があります。帯には「ファッションとは厳しい日常に差し込む一筋の光である」と記されています。SAPEURとは、SAPE(サップ/Society for the Advancement of people of Elegance」を楽しむ人たちを指すことば。植民地、独立、内戦を経て、貧困にあえぐ暮らしがあるなかで、一流ブランドのカラフルな紳士服に身を包み、街を練り歩く男たち。彼らが示す美学やダンディズムの背景には、平和というキーワードが見え隠れしています。


こだわりの対象は、他にもたくさんあります。『俺のダンディズム名品図鑑~男の格を上げる“いいモノ”入門』〔世界文化社〕では、腕時計、万年筆、靴、手帳、眼鏡、鞄、財布、傘、シャツ、ネクタイ、スーツ、下着に至るまで、最高級品はもとより、価格的に中間程度の推奨品が紹介されています。例えば、高額なスーツを夏・冬と合着の3着揃えに、さらに、下着や靴まで季節やスーツに合わせたものを揃えるとなると、合計で100万円はくだりません。ダンディになるには、お金がかかるようです。


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