オピニオン・記事

テクノロジーとアートの融合が拓くクリエーションの未来

真鍋大度×徳井直生が語るメディアアートとスタートアップ

更新日 : 2014年09月25日 (木)

第11章 数十年先に使われるようなアイデアを、いま実現する


 
エンジニアに求められる感覚とは?

徳井直生: ビジネスではなく、メディアアートの面からTapTapを見た場合、「すでに10年前に出ていたアイデアだよね」とも言えます。

真鍋大度: 限られた環境のなかで制作された昔のメディアアートは、まさにアイデアの宝庫だと思います。たとえば、Artificial Reality(人工現実)という、後のバーチャル・リアリティやインタラクティブ・アートにつながる概念を打ち出したマイロン・クルーガー(※編注)の作品に「Videoplace」(http://www.youtube.com/watch?v=dqZyZrN3Pl0)があります。2つの部屋に置かれたビデオカメラで人間の動きをリアルタイムに画像解析し、各々の部屋に設置されたスクリーンに相手のシルエットが投影され、体の輪郭に沿ってエフェクトがかけられるなど、非常にユニークな作品です。

驚かされるのは、この作品が1974年に制作されたこと。そして、このアイデアは現代の様々なプロダクトにも活かされています。そうしたことを踏まえれば、現代のメディアアーティストは、マイロン・クルーガーのように数十年先に使われるようなアイデアを、いま実現しなければならないと思います。

いま、僕が1つ考えているのは、ビッグデータの活用です。東京都現代美術館で行われた「うさぎスマッシュ展」で発表した作品は、金融市場のリアルタイムな動向を視覚化したものです。現在の技術では短時間で処理することができない膨大なデータが、5年後、10年後には一瞬で処理できるようになるかもしれない。だからこそ、いまのうちにアイデアとしても、作品としても切り拓いておかなければならないと感じています。

徳井直生: エンジニアにも同じことが言えるかもしれません。日本とシリコンバレーのエンジニアを比較すると、スキルセットはほとんど変わりません。むしろ、日本のエンジニアのほうが細かい部分にまで気が回ります。しかし、なかなかシリコンバレーに勝てないのはなぜなのか。その理由は「いままでにないものをつくり出そう!」というマインドの差だと思います。

人々に受けるかどうか、売れるかどうか以前に、自分の奥底から湧き出す純粋な欲求に突き動かされて制作するものがアートだとしたら、現在の日本にはそうした感覚をもつエンジニアが少ない。そのようなエンジニアが増え、さらに多様な分野の人とコラボレーションしていけば、日本のビジネス、特にスタートアップからは面白いものが生まれてくると思います。

真鍋大度: たしかに日本の場合は、異なるコミュニティの人と一緒に仕事する機会が少ない。徳井君は色々なコミュニティを頻繁に行き来していると感じます。

徳井直生: 僕自身、普段から意識しています。

真鍋大度: シリコンバレーの人々もそのような感じなのでしょうか?

徳井直生: 実は最近、「シリコンバレーはあまり面白くない」と言う人が増えています。世界中の技術者が集まるようになったため、「先端技術であるかどうか」にこだわる傾向が強くなっているからです。しかし、現在のスタートアップを眺めてみると、技術とアート・デザインを自在に融合しながら物事を考えられる人が成功しているように思います。

むしろいまは、ニューヨークのほうが面白いかもしれません。街には、世界中から集められた様々な時代のアートやデザインがあふれており、日常的に触れることができます。そのため、最近ではKickstarter、Tumblr、Facebookなども巨大なオフィスを構えています。同じような視点で捉えれば、東京には大きな可能性が眠っていると感じます。日本のアートの中心とも言える六本木で講演しているぐらいですから、僕ら自身が率先して取り組んでいかなければならない立場になっているのかもしれませんね(笑)。

真鍋大度: 何をやればいいのか、これから一緒に考えていきましょう。(了)

※編注
マイロン・クルーガー
米国のメディアアーティスト。1960年代末から、コンピュータと音響・映像技術を駆使した斬新な作品を数多く制作。1973年に、音響や映像を通じて人工的な現実感をつくり出すArtificial Realityという概念を発表した、メディアアート、インタラクティブ・アートの先駆者。

気づきポイント

●アイデアが浮かんだら、とにかくトライ&エラーで形にする。
●分野の垣根を越えたコラボレーションの繰り返しは、ブレークスルーにつながる。
●技術とアート・デザインを自在に融合できる人が、いままでにないビジネスモデルを生み出せる。

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SWITCH presents メディアアートとスタートアップ

音楽、アート、映像といったエンタテインメントの世界を、さまざまな分野のテクノロジーを導入して変化させるディレクションで注目されるRhizomatiks真鍋大度とメディアアートを軸に米シリコンバレーにあるシードアクセラレーター500 Startupsでアプリの開発を行うなどスタートアップ業界にも進出するQosmo徳井直生。
2人の対話から、近未来へのネクストステップが見えてくるはず。



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