記事・レポート

テクノロジーとアートの融合が拓くクリエーションの未来

真鍋大度×徳井直生が語るメディアアートとスタートアップ

更新日 : 2014年09月22日 (月)

第10章 スタートアップを取り巻く環境


 
アイデアを形にするハードルは低くなっている

真鍋大度: スタートアップについて、最近のシリコンバレーでトレンドになっているものはありますか?

徳井直生: 個人的にすごく面白いと感じているのが、「Angel List」(https://angel.co/)です。ユニークなプロダクトとビジョンをもつスタートアップと、世界中の投資家を結びつけるサービスです。ユーザー登録することで、twitterのように必要な情報をフォローすることができます。

スタートアップ側の登録ページでは、創業者やメンバーの経歴、プロダクト情報やその成長具合などが表示されます。投資家側の登録ページでは、主な投資先や関心の高い分野などが表示されます。また、銀行のシステムともリンクしており、投資家がサイト内のボタンをクリックすれば、すぐに投資を行うこともでき、僕たちもここを活用して資金を集めています。さらに、採用情報のページもあるため、芽が出そうなスタートアップを見つけて応募することもできます。

こうしたサイトを見ていると、最近はB to CのサービスではなくB to B、この場合なら、開発者のためのツールを提供するサービスが増えているように感じます。シリコンバレーでよく言われるのが、「19世紀のゴールドラッシュのときに最も儲けたのは、金を掘る人ではなく、金を掘るツルハシをつくる人だ」と。同じように、現在のシリコンバレーでは、たとえばApp Store向けのアプリをつくるたくさんの人に頻繁に使われるツールをつくり、利益を得る、といった流れがあると思います。

真鍋大度: ツールは増えているようですが、デバイスは少ないのでしょうか?

徳井直生: デバイスでも面白いものが出てきています。たとえば、「TapTap」(http://www.taptap.me/)。クラウドファンディングのKickstarterで取り上げられ、メディアアート的なアイデアが実際の製品になりかけている例です。これは、基本的に恋人同士で使う「腕輪」です。手首にはめた腕輪をトントンと軽く叩くと、Bluetoothとスマホを介して信号が送信され、離れた場所にいる相手の腕輪が振動する。従来のメールや電話とはまったく違う形のコミュニケーションです。おそらく、恋人同士で使えば、秘密のやりとりのようになり、楽しいだろうなと思います。

真鍋大度: アイデアとしては、MITメディアラボ副所長の石井裕さんが1998年に発表した「inTouch」に似ていますね。

徳井直生: 10年以上前にinTouchやTapTapのようなアイデアが浮かんでも、ビジネスとして実現するためには、技術やコストの面でかなり高いハードルがありました。しかし、現在はAngel ListやKickstarterのようなプラットホームがあり、オープンツールもたくさんある。さらに、SNSやYouTubeなどを使えば、世界中の人々のなかから共同制作者を見つけ出すこともできます。そのように考えていくと、アイデアをビジネスとしていく際に乗り越えるべきハードルは、非常に低くなっていると思います。

該当講座


NO PHOTO
SWITCH presents メディアアートとスタートアップ

音楽、アート、映像といったエンタテインメントの世界を、さまざまな分野のテクノロジーを導入して変化させるディレクションで注目されるRhizomatiks真鍋大度とメディアアートを軸に米シリコンバレーにあるシードアクセラレーター500 Startupsでアプリの開発を行うなどスタートアップ業界にも進出するQosmo徳井直生。
2人の対話から、近未来へのネクストステップが見えてくるはず。