記事・レポート

テクノロジーとアートの融合が拓くクリエーションの未来

真鍋大度×徳井直生が語るメディアアートとスタートアップ

更新日 : 2014年08月29日 (金)

第2章 面白そうだから一度やってみよう

真鍋大度氏(メディア・アーティスト)

 
真鍋大度のプロジェクト紹介 〜創作活動編〜

真鍋大度: 僕の活動は、クライアントの依頼で行うコミッションワークと、自主的な創作活動に大別でき、双方を行き来しながら様々なプロジェクトを進めています。後者はアンカーズ・ラボで行いますが、「これは面白そうだから一度やってみよう」と、あれこれ考えるよりもまずは手を動かし、新しいアイデアのプロトタイピングを行うものです。多くはYouTubeにアップしていますので、少しご紹介します。

copy my face to my friend's -test 0(unsuccessful...)
http://www.youtube.com/watch?v=VtRVvBSbonk
「自分の顔の動きを他人の顔にコピーしたい」と思い、はじめたプロジェクトです。僕の顔には筋肉が動く際に発する微弱電流を検知する筋電位センサーの電極をつけ、両脇にいる友人の顔には低周波装置の電極がついています。たとえば、僕が右頬を動かすと、彼らの右頬につけた電極から電気が流れ、僕の動きと同時に顔の表情が変わります。

electric stimulus to body + myoelectric sensor test1( Daito Manabe + Masaki Teruoka)
http://www.youtube.com/watch?v=oh8YYONrLIc
その後、同じ機材を使い、ソフトウェアだけ改良したものです。僕の指には筋電位センサーの電極がついていますが、ここではタッチセンサーとして使っています。僕の指が友人の体に触れると、指ごとに異なる音が鳴ります。友人の顔には低周波装置の電極がついているため、僕が触れるたびに表情も変化します。

head track + motor control test for an installation at YCAM
http://www.youtube.com/watch?v=CH6jWR7QG1I
これはトラッキングという、カメラで物体の位置を検出する技術を使ったプロジェクトです。「人間の動きに合わせてフィジカルなものを動かしてみたい」と思い、はじめたものです。立っている人の頭上にはワイヤーで吊されたボールがあり、真下にいる人の頭の位置を検出し、その動きに合わせて上下左右にボールが追尾します。後日このアイデアをもとに、Perfumeの振付・演出をされているMIKIKOさんに、コンテンポラリーダンスをつくっていただきました。

elevenplay dance performance for SonarSound Tokyo Festival 2013
http://www.youtube.com/watch?v=zBm3mJiJzh8
プロジェクションマッピングと言えば、建物に投影するケースが多いと思います。このプロジェクトでは、動いている人や物にプロジェクションしてみました。人の横に四角い箱がありますが、箱には次々に異なる色が投影され、動いている人間には様々な模様が投影されます。技術的なことを説明するのは難しいのですが、人と箱の検出を区別するため、箱の表面に再帰性反射材(※編注)を貼りつけています。

こうした試作段階のアイデアは、オリジナルの作品まで発展するだけでなく、YouTubeを通してシェアすることにより、新たなコラボレーションを生み出すきっかけにもなっています。自分が面白いと思う映像をアップすることで、「面白い!」と感じてくれる人と瞬時につながることができる。YouTubeの登場は、僕の創作活動にとり、非常に大きな転機となりました。


※編注
再帰性反射材
光で照らされると、光源の方向に光が戻ってくる素材。一般的には交通標識などで使われているが、AR(Augmented Reality)やVR(Virtual Reality)などの分野では、物体の動きを検出するマーカーとして活用される。

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SWITCH presents メディアアートとスタートアップ

音楽、アート、映像といったエンタテインメントの世界を、さまざまな分野のテクノロジーを導入して変化させるディレクションで注目されるRhizomatiks真鍋大度とメディアアートを軸に米シリコンバレーにあるシードアクセラレーター500 Startupsでアプリの開発を行うなどスタートアップ業界にも進出するQosmo徳井直生。
2人の対話から、近未来へのネクストステップが見えてくるはず。