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世界初! 人工クモ糸繊維の量産基盤技術確立までの物語

スパイバー・関山和秀:「QMONOS」開発秘話と、クモの糸で変わる未来

日本元気塾経営戦略キャリア・人
更新日 : 2013年12月12日 (木)

第10章 オープン・イノベーションで重要なのは、マネジメントとグローバル展開

写真左:米倉誠一郎 (日本元気塾塾長/一橋大学イノベーション研究センター教授)写真右:関山和秀(スパイバー株式会社 代表取締役社長)
写真左:米倉誠一郎 (日本元気塾塾長/一橋大学イノベーション研究センター教授)写真右:関山和秀(スパイバー株式会社 代表取締役社長)

 
日本の、世界の会社となるために

米倉誠一郎:  2015年までにグローバル供給を開始し、並行して製品開発を進めていくと言われていました。

関山和秀:  そうですね。生産性や機能性についてはノウハウが蓄積できたので、今後追求していきたいのは、それらをどのように使いこなすか、です。遺伝子やアミノ酸を自在に改変しながら、用途や製品に適した形にタンパク質をカスタマイズし、提供していくことが中心となります。

米倉誠一郎:  会社としての今後目指す方向性はどうでしょう? たとえば、前方統合を進めて、原料の供給から製品開発までを一貫して行うのか。あるいは、あくまでも知財開発に重きを置き、製品開発は企業に任せるのか。

関山和秀:  基本として、私たちが最も情熱を傾けられることは、イノベーションを起こすこと、つまり新しい技術を生み出すことです。それだけはぶれずに、今後も確実に行いたいと思っています。したがって、知財開発についてはスピードを重視しながら、戦略をもって進めていきます。

米倉誠一郎:  オープン・イノベーションを進めていく上では、マネジメント体制が大切になると思います。たとえばグーグルも、エリック・シュミットという経営スキルに長けた人物を招聘しましたが、そのあたりの体制づくりについてはどのように考えていますか?

関山和秀:  経営については、最初の出資を受ける前、IT系ベンチャーを起こした方に代表取締役として入っていただきました。技術面に関しても、発酵技術の専門家に入っていただきました。必要に応じて必要な体制を整えてきたので、今後も同様の形で進めていこうと考えています。

米倉誠一郎:  老婆心ながら申し上げると、マネジメント体制は本当に重要です。この段階まで来たのなら、もはや君たちだけの会社ではない。日本の、世界の会社だから。マネジメントとグローバル展開、この2つは絶対に大切にしてください。特にオープン・イノベーションの世界では、最初から世界のマーケットに視野を置く。いまの70億人、未来の90億人という世界を見て、戦略を練っていく。そのためにもぜひ、強固なマネジメント体制を構築してほしいと思います。

関山さんのお話から強く感じたことは、日本の得意分野を存分に活かしていることです。発酵技術、分析・解析技術、繊維に関する技術、そして現場主義。戦後、日本企業がコアコンピタンスとしてきた“ワイガヤ”の文化が、スパイバーにはいまも息づいています。

関山和秀:  私や共同創業者である菅原は、とにかく「人類の……」という枕言葉が大好きで、「人類のために仕事をしている」と考えることが大きなモチベーションとなっています。また、研究を行っていると、「いままで人類が乗り越えられなかった壁を、いまこの瞬間乗り越えることができた!」といったことが次々と起こります。大変なこともたくさんありますが、何物にも代え難い喜びがあるからこそ、続けられているのだと思います。

米倉誠一郎:  なるほど。この10年を振り返っても、たくさんのバイオベンチャーが生まれ、消えていきました。自分たちの強みを見いだせないままに戦っていくことは、やはり難しい。自分は何が得意なのか、何に対して情熱を傾けられるのか。いま一度そのあたりを見つめ直すことが、イノベーションを起こすきっかけとなり、日本の未来を輝かせていくカギになると思います。その先陣として登場したスパイバーが世界を席巻する日は、すぐそこまで来ているのでしょう。(了)

<気づきポイント>

●タンパク質由来の超高性能素材が、ものづくりの概念を一変させる。
●競争力の源泉は、常識にとらわれない発想と、ベンチャーならではのスピード。
●日本の得意な技術を活かし、あくなき情熱を傾けることで、イノベーションは訪れる。


該当講座

奇跡の新素材「クモの糸」を語る 

~無限の組合せがものづくりの概念を変える~

奇跡の新素材「クモの糸」を語る 
関山和秀 (Spiber株式会社 取締役兼代表執行役)
米倉誠一郎 (日本元気塾塾長/一橋大学イノベーション研究センター教授)

関山和秀(スパイバー㈱代表取締役社長)×米倉誠一郎(日本元気塾塾長/一橋大学イノベーション研究センター教授)
脱石油の超高性能バイオ素材として注目される「クモの糸」。米軍も開発に取り組むも、断念したと言われる、夢の繊維の量産化技術の開発に、世界で初めて成功した、スパイバー株式会社の関山和秀氏をゲストに迎えます。この分野の市場規模は、数千億円~1兆円と推測されます。今、世界をリードする「スパイバー」の最新の開発状況、今後の展開を伺います。


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